経済コラムマガジン 平成9年2月10日より
経済コラムマガジン




17/8/28(952号)
日本のテレビ局をBPOに告発

    デマを平気で流す日本のテレビ

    あれだけ騒がれた加計問題であるが、最近ではマスコミもほとんど取上げなくなり人々も関心を失ったようだ(ただ今度は校舎の設計でワインセラーの設置が予定されていることが問題になっているが・・筆者もワインセラーはやめた方が良いと思う)。本誌は、日本のマスコミ、特に影響力が大きいテレビのこの問題の扱い方に問題があると強く批判してきた。またこれについては来週になるが、加計問題を取上げるマスコミの行動の裏に変な動きを感じる。

    どうも加計問題のテレビの取上げ方が異常と感じたのは筆者だけではないようである。「日本平和学研究所(小川榮太郎理事長)」が、7月10日の第一回目の参考人招致(国会閉会中審査)の各参考人の発言をテレビがどれだけ放送したか調査し、この結果を公表している(ネットで公開している)。調査対象はNHKと民放キー局の30番組である。

    前川前文科省事務次官の発言の放送時間が2時間33分46秒であった。これに対し、前川発言の内容を全面的に否定する加戸守行前愛媛県知事の発言の放送時間はたったの6分1秒と日本平和学研究所は報告している。前川発言の実に25分の1しか放送されなかったのである。また国家戦略特区ワーキンググループでの決定の正統性を訴えていた原英史委員の発言に到っては、何と2分35秒しかテレビでは放送されなかった。つまり前川氏の言い分だけを一方的に、日本のテレビ局は放送したことになる。日本平和学研究所というものが思想的にいくら右側に傾いている団体としても、この調査結果は筆者が感じたものと同じである。


    この調査結果を受け、「視聴者の会」の上念司事務局長は、日本のテレビ局が政治的公平性を著しく欠くとしてBPO(放送倫理・番組向上機構)に告発することを検討すると言う。このような動きが出ることは当然であり、もちろん筆者も是非とも告発すべきと思っている。

    新聞や雑誌の記事がどれだけ偏向していても構わないし許される。しかし電波を独占的に割当てられているテレビやラジオは事情が異なる。法律で政治的公平性を保つことが求められている。意見が対立する政治的問題については、なるべく両者の言い分を公平に扱う義務がある。

    ところが政治的公平性を保つべき日本のテレビは、加計問題に関し上記のように反対意見や異論を全て抹殺するといった方法で偏向した放送をしている。また新聞や雑誌が偏向していると言っても直接的な影響力は限られているが、テレビはこれらの偏向した記事をそのまま大きく拡散することで極めて大きな影響力を社会に与える


    問題は国会閉会中審査の参考人質議のテレビ放送だけではない。テレビの放送内容が異常だったのは加計学園の問題が浮上した当初からである。前川前事務次官は「正義感に燃えた硬骨漢」、これに対する安倍総理や官邸は「行政を歪め獣医学部新設を強行した」という構図を勝手に決め、この前提でテレビは加計問題を扱ってきた。これに反する事実(例えば加戸守行前愛媛県知事の証言など)が出ても、一切報道しないという徹底ぶりである。

    加計問題の本質は、規制を撤廃したい勢力と何としても規制を守りたい側との戦いである。このためかデマや非論理的な話が飛び交っている。規制を守りたい側はかなりいい加減なことを言っているが、日本のマスコミはこれらのデマまがいの話を検証しないまま放送している。


    例えば日本のペットの数は減り続けていて、将来、獣医師は余るという話が通説になっている(どうも獣医師会側が流したデマのようだ)。しかし減っているのは「飼い犬」であり「飼い猫」は横ばいないしむしろ増えている。また「飼い犬」は数年前まで(08年がピーク)まで増え続けていた。ところが「飼い犬」が増え続けていた時代であっても、頑として獣医学部の新設は認めなかったのである。

    またペットの数と獣医師の需要が必ずしも相関するわけではない。昔のように拾ってきた野良犬や野良猫をペットにしていた時代は、ペットを病院に連れて行くといった習慣や発想はほとんどなかった。しかし今日はペットショップで高額なペットを買う時代になり、飼い主はなるべく長生きさせるため動物病院に連れて行くケースは増えているはずである(統計があるはずだが見かけない)。実際のところ犬も猫も平均寿命はかなり延びている。また学生は獣医師が有望な職種と見ているからこそ、獣医学部の受験倍率は他の学部に比べ異常に高い(15〜20倍)。


    異常な文科省の告示

    まず文科省が卒業生の就職を考慮して大学の学部の新設を認めるかどうかを決めること自体がおかしい。高校生が将来の就職を考え学部を選ぶのは当然である。もし受験生が集らないようなら、大学や学部が潰れることはしょうがない。逆に受験倍率が非常に高い獣医学部の新設を認めないことは極めて異常である。

    このように卒業生の進路が有望かどうかを判断するのは受験生であり文科省ではない。そもそも卒業生の就職を考えて学部の新設を決めるといった発想自体が異常である。だいたい文学部(特に哲学科など)や芸術学部などの卒業生の需要なんて誰にも分らない。実際のところ、いつも問題になる獣医学部・歯学部・医学部(特殊な3学部)を除けば、学部の新設はほぼ自由になっている。


    ところが獣医学部・歯学部・医学部の3学部は、文科省の告示で新設の申請さえ受付けないことになっている。告示とは法律ではなく役所が勝手に決める内規みたいなものである。加計学園は10年以上申請を続けていたが、この異常な告示によって全て門前払いされて来たのである。学部新設の許認可権を持つ文科省なのに、審査もせず全て撥ね付けて来たのである。

    この悪質な文科省の告示がずっと問題になっていた。この告示は、当然、圧力団体(獣医師会、歯科医師会、医師会)の意向を組んだものである。もちろん圧力団体の下で働いているロビイストや議員連盟の政治家の働き掛けも背景にある。つまり今日の特殊な3学部の新設に関わる行政は完全に歪んでいるのである。しかしさすがに圧力団体もこれはちょっと酷過ぎると感じ、今回、医学部と獣医学部ついては1校だけ新設を認めたのである。

    そこに飛出したのが前川前事務次官の「行政が歪められた」発言である(説明したように真実は全く逆)。これに対する麻生副総理(獣医師問題議員連盟会長)の最初の発言が印象的であった。「前川は今頃何を言っているのか、もう決まった話(加計学園の獣医学部新設)じゃないか」「前川をそそのかしているのは麻生ではないかと噂されとんだ迷惑である」と言っていた。


    加計学園問題を巡って民進党が妙なことになっている。今回の国会閉会中審査において、民進党の代表として獣医学部新設に反対する立場で詰問していたのが玉木衆議院議員(民主党獣医師議員連盟の事務局長)と桜井充参議院議員である。玉木議員は獣医師会から政治献金を受けているバリバリの族議員であるが、桜井議員の方も歯科医療議員連盟の会長でありりっぱな族議員である。文科省の告示を死守する立場で両氏は同じ穴のムジナと言える。それにしてもこのような議員を党の代表として質問させる民進党の神経を疑う。

    ところが加計学園の獣医学部新設を昔から推進してきたのは民主党・民進党であった。10月22日に衆議院愛媛三区で補選が行われる。この補選で民進党の立候補者として白石洋一氏(落選中)が名乗りを上げている。白石氏は17/7/24(第948号)「加計問題と日本のマスコミ」(ここで白石氏と村上誠一郎議員と同じ小選挙区のライバルと記したのは筆者の間違い。白石氏は三区であり村上氏は二区)で述べたように、民主党議員時代、加計学園の獣医学部新設に奔走していた。

    三区は今治市がある二区の隣であるが、住民は加計学園の獣医学部は地元の問題と捉えている。推進してきたはずの民進党が一転して獣医学部新設に反対するようになり、地元では「民進党は裏切り者」と思われている。また愛媛県では獣医師連盟の会費の支払を拒否する獣医師が出ているという。ここに獣医学部新設に奔走していた白石氏が民進党から出馬するのだから事態は複雑になった。



加計問題に関わる報道を見ても分るように、日本のマスコミの異常さが目立つようになった。来週は、筆者が考えるその裏側について述べる。



17/8/14(第951号)「日本の構造改革派の変遷」
17/8/7(第950号)「今回の内閣改造について」
17/7/31(第949号)「加計問題の教訓」
17/7/24(第948号)「加計問題と日本のマスコミ」
17/7/17(第947号)「消化不良の参考人招致の質議」
17/7/10(第946号)「前川前事務次官の参考人招致」
17/7/3(第945号)「官邸への報復」
17/6/26(第944号)「加計学園の獣医学部新設騒動」
17/6/19(第943号)「小池都知事の不安煽り政治」
17/6/12(第942号)「米国のパリ協定離脱」
17/6/5(第941号)「テロ等準備罪(共謀罪)の話」
17/5/29(第940号)「安倍総理の憲法改正の提案」
17/5/22(第939号)「半島有事への日本の備え」
17/5/15(第938号)「朝鮮半島の非核化」
17/5/1(第937号)「予備自衛官の大幅増員を」
17/4/24(第936号)「理解されないシムズ理論の本質」
17/4/17(第935号)「シムズ理論と「バカの壁」」
17/4/10(第934号)「経済再生政策提言フォーラムとシムズ理論」
17/4/3(第933号)「シムズ理論の裏」
17/3/27(第932号)「シムズ理論とシムズ教授」
17/3/20(第931号)「シムズ理論とアベノミクス」
17/3/13(第930号)「アメリカの分断を考える」
17/3/6(第929号)「移民と経済成長」
17/2/27(第928号)「トランプ大統領のパリ協定離脱宣言」
17/2/20(第927号)「トランプ現象の研究」
17/2/13(第926号)「為替管理ルールの話」
17/2/6(第925号)「日米主脳会議への対策はアラスカ原油輸入」
17/1/30(第924号)「そんなに変ではないトランプ大統領」
17/1/16(第923号)「今年の展望と昨年暮れの出来事」
16/12/26(第922号)「ヘリコプターマネーに関するQ&A集(まとめ)」
16/12/19(第921号)「ヘリコプターマネーに関するQ&A集(モラルハザード他」
16/12/12(第920号)「ヘリコプターマネーに関するQ&A集(日銀の独立性他」
16/12/5(第919号)「ヘリコプターマネーに関するQ&A集(物価上昇編(2))」
16/11/28(第918号)「ヘリコプターマネーに関するQ&A集(物価上昇編(1))」
16/11/21(第917号)「ヘリコプターマネーに関するQ&A集(基本編)」
16/11/14(第916号)「トランプ大統領誕生は良かった?」
16/11/7(第915号)「Q&A集作成のための準備」
16/10/31(第914号)「中央銀行に対する観念論者の誤解」
16/10/24(第913号)「落日の構造改革派」
16/10/17(第912号)「ヘリコプター・マネー政策への障害や雑音」
16/10/10(第911号)「事実上のヘリコプター・マネー政策」
16/10/3(第910号)「財政均衡主義の呪縛からの覚醒」
16/9/26(第909号)「日本経済こそが「ニューノーマル」」
16/9/19(第908号)「プライマリーバランスの回復は危険」
16/9/12(第907号)「労働分配率と内部留保」
16/9/5(第906号)「経済学者の討論の仕方」
16/8/29(第905号)「吉川教授と竹中教授の討論」
16/8/22(第904号)「芥川賞受賞作「コンビニ人間」」
16/8/8(第903号)「新経済対策への評価」
16/8/1(第902号)「大きな車はゆっくり回る」
16/7/25(第901号)「アベノミクス下における注入と漏出」
16/7/18(第900号)「経済循環における注入と漏出」
16/7/13(第899号)「16年参議員選の結果」
16/7/4(第898号)「奇異な話二題」
16/6/27(第897号)「ヘリコプター・マネーと国民所得」
16/6/20(第896号)「ヘリコプター・マネーと物価上昇」
16/6/13(第895号)「ヘリコプター・マネーと消費増税の比較」
16/6/6(第894号)「消費増税問題の決着」
16/5/30(第893号)「安倍政権の次のハードル」
16/5/23(第892号)「アベノミクス停滞の理由」
16/5/16(第891号)「ヘリコプターマネーは日本の救世主か」
16/5/2(第890号)「毎年1,000件もの新製品」
16/4/25(第889号)「日本は消費税の重税国家」
16/4/18(第888号)「財政問題に対する考えが大きく変る前夜」
16/4/11(第887号)「民進党が消費税増税を推進する背景」
16/4/4(第886号)「財政問題が解決済みということの理解」
16/3/28(第885号)「終わっている日本の経済学者」
16/3/21(第884号)「国際金融経済分析会合の影響」
16/3/14(第883号)「信用を完全に失った財務省」
16/3/7(第882号)「「政界」がおかしい」
16/2/29(第881号)「一向に醸成されない「空気」」
16/2/22(第880号)「緊縮財政からの脱却」
16/2/15(第879号)「超低金利の今こそ国債発行を」
16/2/8(第878号)「日銀の「マイナス金利」政策の実態」
16/2/1(第877号)「CTAヘッジファンドの話」
16/1/25(第876号)「今後の原油価格の動きは「売り投機筋」に聞いてくれ」
16/1/18(第875号)「日本の経済論壇は新興宗教の世界」
16/1/11(第874号)「日本のデフレギャップは資産(財産)」


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