経済コラムマガジン 平成9年2月10日より
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17/2/27(928号)
トランプ大統領のパリ協定離脱宣言

    パリ協定の空中分解

    トランプ大統領の不支持率が大きいことが話題になっている。これを根拠にトランプ氏は歴代で最も人気のない大統領とマスコミは決めつけている。しかし一方で支持率がなかなか下がらないのも事実である。

    つまりトランプ政権はかなり固い支持層に支えられていると思われる。これも先週号で述べたように、トランプ大統領の荒っぽい発言の中のいくつかが人々の「本音」を代弁し、それが共感を得ているからと筆者は見ている。

    これまであまり確実とは言えない話がいつの間にか世間の「常識」となっている。この「常識」に反する考えは「異端」「非常識」と排斥されてきた。しかしこの常識がおかしいと人々が本音では思っていることがある。それを初めて言ってくれた大統領が、政治キャリアのないトランプ氏であった。今週は地球温暖化問題をテーマにこれについて述べる。


    トランプ大統領は、人間が排出した二酸化炭素による地球温暖化という今日の常識に懐疑的である。したがってパイプラインの建設や原油開発などにゴーサインを出した。また米環境保護局(EPA)の長官に懐疑派の人物を充てた。他の閣僚にも何人かの懐疑派がいるようだ。筆者は懐疑派が米国では決して例外的な存在ではなかったとしみじみ感じる。一般の米国民の中にも本音ではこの話が「怪しい」と思っている者はかなり多いと思われる。


    筆者もずっと懐疑派であった。このことは15/10/26(第865号)「避けられる物事の根本や本質」08/5/26(第528号)「地球の寒冷化」などで昔から何回も説明してきた。たしかに地球温暖化の原因が「『人間』が排出した二酸化炭素」ということが常識になっている。

    この怪しい常識を定着させたのはIPCC(地球の温暖化については専門家で構成する気候変動に関する政府間パネル)の報告書である。しかし地球科学分野は世界に40以上の科学者のグループがあり、地球気候の変動については夫々の異なる見解がある。ところがその中の一つの科学者グループが地球温暖化の原因を「『人間』が排出した二酸化炭素」と言出した。そしてこのグループのメンバーがIPCCの中心となっている。


    「『人間』が排出した二酸化炭素」説は仮説に過ぎない。また温暖化の原因が仮に二酸化炭素だとしても、『人間』が排出した二酸化炭素なのかどうか科学的な判定が下っているのかは不明である。とにかく地球科学分野では、いまだに地球気候の変動に関して諸説が飛び交っているのが現状である。

    ところが科学的な結論が出ていないのに出たことにして、奇妙なことに政治や経済の世界は二酸化炭素説を前提に動いている。京都議定書やパリ協定は、この怪しい常識を基に発行された。これによって批准国は二酸化炭素排出削減に取組むことになった。また排出権取引といった実に怪しい取引が生まれた。


    ところがトランプという常識に捕われない大統領が登場し、パリ協定からの離脱を宣言した。米国は温暖化ガスを世界の16%程度排出している化石燃料の大消費国である。この米国が抜ければパリ協定は空中分解する。そもそもデータが全く信用できない中国(世界の29%という最大排出国・・この29%も信用できない)が参加していることで、パリ協定なんて頭から意味がないと筆者は思っていた。

    二酸化炭素説をリードしこの怪しい常識を広めてきたはずのマスコミは、不思議なことにパリ協定離脱宣言に関し大きな声を上げていない。せいぜいこれはイヴァンカ夫妻の助言の影響と出来事を矮小化している程度である。ひょつとすると大多数のマスコミ関係者も二酸化炭素説を薄々怪しいと思っていたとも受取られる。

    筆者は、とにかく地球温暖化がどのようなペースで進んでいるのか、またその本当の原因は何かということを科学的に究明することが先と訴えたい。そもそも温暖化が良いことなのか悪いことなのかも意見が別れるところである。北海道に別荘を買った人なんかは温暖化を案外喜んでいるかもしれない。


    大手メディアの信頼度の低下

    地球温暖化の騒動だけでなくこと環境問題については、冷静な議論が軽んじられる。往々にして極端な議論にマスコミが飛びつきこれを拡散し、それが世間の常識となりがちである。これに疑問を挟む者は、むしろ非常識と見なされるのである。

    ところが環境に関しては、特定の政治的イデオロギーや経済的な利益を企む者の利害が深く関わっているケースが目立つ。環境問題に真面目に取組んでいる人々がいることは筆者も認めるが、環境を声高に叫んでいる者の中には怪しい人々もいるのである。筆者は活動的な反捕鯨団体などはその一つと思っている。


    ただし地球温暖化に関しては、「『人間』が排出した二酸化炭素」説に賛同する者だけでなく、これに反対する懐疑派にも政治的・経済的利害を持つ者がいる。例えば懐疑派のトランプ政権の閣僚には石炭産出地に選挙地盤を持つ者がいる。このような状況なのだから本当の科学的判断が重要になる。

    したがって筆者は、繰返すが地球温暖化にまつわる本当の原因を科学的に究明することを最優先すべきと考える。科学的な分析結果によっては「『人間』が排出した二酸化炭素」説がデタラメということが判明する可能性がある。反対にこの説が真実なら、パリ協定よりもっと厳しい排出基準が必要になる。筆者は地球温暖化問題は科学的に入り口に立っているに過ぎないと考える。


    二酸化炭素説を懐疑的に見るのは、IPCC関係者を除く科学者や政治家だけではない。一般国民の間にも懐疑派が増えていると筆者は見る。今日の環境に関する常識では、トランプ大統領の地球温暖化説への攻撃はまさに暴論である。ところが多数の米国民がそのトランプ氏に投票したのである。

    だいたい産業革命以降、地球温暖化が始まったという話が眉唾物である。それが本当なら二酸化炭素の排出量は限り無くゼロにしなければ温暖化は止まらないと言うことになる。たった30%程度の削減で解決するなんて誰が考えてもおかしい。人々もパリ協定などの環境協定の嘘くささに気付き始めたのである。


    近年の特筆すべきことは、米大手メディアの信頼度が著しく低下していることである。特に共和党支持者の大手メディア離れは激しい。メディアの報道を信頼する者は30%程度まで下がっている。また民主党支持者でも信頼度は50%まで落ちている。大手メディアがリードしてきた地球温暖化阻止キャンペーンも曲り角に来ていると筆者は見ている。

    この原因の一つとして大手メディアの取材能力の低下が指摘できると筆者は考える(もっとも取材能力なんて昔からなかった可能性もある)。例えば地球温暖化についても原因をどこまで調査したのか不明である。またこれ以外でも本当に大手メディアは取材をしたのかと疑問に思われるケースが目立つ。特に日本に関する記事は酷いものがある。ニューヨーク・タイムズなどは日本の左翼偏向思想の持ち主と見なされる者の解説記事を平気で載せている。おそらく大手メディアの信頼度はこの先も下がり続けると筆者は思っている。

    インターネットの普及も大手メディアの存在を脅かしている。たしかにインターネットの情報は玉石混交である。しかし決して全てが嘘とか間違いということではない。人々もインターネットの情報への接し方を段々と分かって来ている。むしろこれからは大手メディアに代わりインターネットが情報社会をリードする時代になる可能性が高い。以前から予想されていたことであるが、大手メディア苦難の時代が始まったと言える。



来週は、移民と経済成長の関係を取上げる。



17/2/20(第927号)「トランプ現象の研究」
17/2/13(第926号)「為替管理ルールの話」
17/2/6(第925号)「日米主脳会議への対策はアラスカ原油輸入」
17/1/30(第924号)「そんなに変ではないトランプ大統領」
17/1/16(第923号)「今年の展望と昨年暮れの出来事」
16/12/26(第922号)「ヘリコプターマネーに関するQ&A集(まとめ)」
16/12/19(第921号)「ヘリコプターマネーに関するQ&A集(モラルハザード他」
16/12/12(第920号)「ヘリコプターマネーに関するQ&A集(日銀の独立性他」
16/12/5(第919号)「ヘリコプターマネーに関するQ&A集(物価上昇編(2))」
16/11/28(第918号)「ヘリコプターマネーに関するQ&A集(物価上昇編(1))」
16/11/21(第917号)「ヘリコプターマネーに関するQ&A集(基本編)」
16/11/14(第916号)「トランプ大統領誕生は良かった?」
16/11/7(第915号)「Q&A集作成のための準備」
16/10/31(第914号)「中央銀行に対する観念論者の誤解」
16/10/24(第913号)「落日の構造改革派」
16/10/17(第912号)「ヘリコプター・マネー政策への障害や雑音」
16/10/10(第911号)「事実上のヘリコプター・マネー政策」
16/10/3(第910号)「財政均衡主義の呪縛からの覚醒」
16/9/26(第909号)「日本経済こそが「ニューノーマル」」
16/9/19(第908号)「プライマリーバランスの回復は危険」
16/9/12(第907号)「労働分配率と内部留保」
16/9/5(第906号)「経済学者の討論の仕方」
16/8/29(第905号)「吉川教授と竹中教授の討論」
16/8/22(第904号)「芥川賞受賞作「コンビニ人間」」
16/8/8(第903号)「新経済対策への評価」
16/8/1(第902号)「大きな車はゆっくり回る」
16/7/25(第901号)「アベノミクス下における注入と漏出」
16/7/18(第900号)「経済循環における注入と漏出」
16/7/13(第899号)「16年参議員選の結果」
16/7/4(第898号)「奇異な話二題」
16/6/27(第897号)「ヘリコプター・マネーと国民所得」
16/6/20(第896号)「ヘリコプター・マネーと物価上昇」
16/6/13(第895号)「ヘリコプター・マネーと消費増税の比較」
16/6/6(第894号)「消費増税問題の決着」
16/5/30(第893号)「安倍政権の次のハードル」
16/5/23(第892号)「アベノミクス停滞の理由」
16/5/16(第891号)「ヘリコプターマネーは日本の救世主か」
16/5/2(第890号)「毎年1,000件もの新製品」
16/4/25(第889号)「日本は消費税の重税国家」
16/4/18(第888号)「財政問題に対する考えが大きく変る前夜」
16/4/11(第887号)「民進党が消費税増税を推進する背景」
16/4/4(第886号)「財政問題が解決済みということの理解」
16/3/28(第885号)「終わっている日本の経済学者」
16/3/21(第884号)「国際金融経済分析会合の影響」
16/3/14(第883号)「信用を完全に失った財務省」
16/3/7(第882号)「「政界」がおかしい」
16/2/29(第881号)「一向に醸成されない「空気」」
16/2/22(第880号)「緊縮財政からの脱却」
16/2/15(第879号)「超低金利の今こそ国債発行を」
16/2/8(第878号)「日銀の「マイナス金利」政策の実態」
16/2/1(第877号)「CTAヘッジファンドの話」
16/1/25(第876号)「今後の原油価格の動きは「売り投機筋」に聞いてくれ」
16/1/18(第875号)「日本の経済論壇は新興宗教の世界」
16/1/11(第874号)「日本のデフレギャップは資産(財産)」


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