経済コラムマガジン 平成9年2月10日より
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16/4/25(889号)
日本は消費税の重税国家

  • 財政に関する認識の変化

    「日本の財政は最悪」という大嘘で日本人はずっとマインドコントロールされて来た。むしろこれに異を唱える筆者達の方が白い眼で見られたものである。また「税と社会保障の一体改革」という美名の元で消費税増税が画策されて来たが、根底にはこの「日本の財政は最悪」という大嘘がある。

    しかしようやく政治家の中でもこの話が嘘と気付く者が増えて来た。消費税再増税の延期を唱えたり、熊本震災復興に財政出動が必要という声を出すことに何のためらいもなくなっている。数年前までの雰囲気は様変わりした。

    日本の政治家には「日本の財政は最悪」という話を盲目的に信じる財政再建至上主義の者と、頭から財政再建派や財務官僚の言っていることを信用しない者がいる。ただこの両者の間で何となく「日本の財政は最悪」と言った嘘話に軽くマインドコントロールされて来た中間層の政治家が多数いる。程度に差はあるが、この中間層のマインドコントロールが解け始めたと筆者は見ている。


    マインドコントロールが解けるきっかけは、やはり日本経済の現実の動きであった。「日本の財政は最悪」と唱えていた財政再建派の言っていたことの全てが外れていることに、ようやく多くの政治家は気付いたのである。彼等が脅しで国の借金が増えると「金利が急上昇」「円が暴落」「物価が急騰」すると言って来たが、これらは全く起っていない。反対に金利は急上昇するどころかマイナスになり、円は暴落するどころか円高が心配され、物価は上昇せず日銀の物価目標がなかなか達成されない。

    財政再建派はこれらに対して苦しい言い訳をしているが、段々と誰も耳を貸さなくなっている。しかし前述したように個々の政治家によってはマインドコントロールの解け方に程度の差がある。稲田政調会長などはいまだに「1%ずつの消費税増税」を唱えている。もう一つ解っていないようである。


    ここに来て政治家などの日本の財政に関する認識が変ってきたが、これには「マイナス金利」の影響が大きかったと筆者は思っている。ほとんどの日本人は金利がマイナスになるなんてとても想定していなかった。また万が一にも金利がマイナスになれば、人々は貯蓄を止め金を使いだし、為替も円安になると思っていた。しかしこれらの両方が起らなかった。これによって財政政策を実施せずとも金融緩和で対処できると主張していた者達の望みが断たれた。

    今日、もう財政出動しかないという流れが形成されつつある。それにしても随分と回り道をしたものである。この原因についてはそのうち本誌でも取上げるかもしれない。筆者は、反ケインズ主義に傾いた日本の経済学界や偏向したマスコミ、中でも経済誌や日経新聞などの経済を専門とするメディアの影響が大きかったと考える。

    また学校で真面目に経済学を学び、教科書の記述が絶対に正しいと思い込んでいる学校秀才ほどマインドコントロールに掛ったと筆者は思っている。彼等は現実を見ないし見たがらない。現実が教科書と異なると現実の方が間違っていると判断する。したがって日本には構造改革が必要と簡単に言う。このような経済学者、エコノミスト、そして官僚がうじゃうじゃいるのである。


    徹底して忌避されてきた財政出動がようやく動き出すと信じたい。ただ全ての政治家がマインドコントロールから醒めた訳ではないので、財政出動の財源で揉めそうである。日銀が国債を買い続けているので心配はないと言っても16/4/4(第886号)「財政問題が解決済みということの理解」で述べたように、どれだけの政治家がこのことを理解できるのか注目したい。


  • 標準税率の表は「今から嘘をつくぞ」の合図

    「日本の財政は最悪」という大嘘の一つの根拠にされているのが14/12/1(第823号)「「今から嘘をつくぞ」の決まり文句」で述べたように、「国の債務(借金)は1,000兆円を超えている」という嘘である。「国の債務(借金)は1,000兆円を超えている」というセリフが出れば、「今から嘘をつくぞ」という合図である。実際、日本政府は一方で巨額の金融資産を保有している。また日銀が国債を300兆円以上買っているのだから、実質的な純債務は100〜300兆円となる。

    同じ形で消費税増税を押し進めて来たのが、日本の消費税率が欧米に比べると異常に低いというもう一つの大嘘である。テレビなどに出演する嘘つきコメンテータ達は、各国の消費税率(付加価値税率)の表(フリップ)を持出し日本の税率が極めて低いと解説する。そしてこの嘘話にほとんどの日本国民はマインドコントロールされて来たのである。


    たしかに標準税率だけで比べると日本の消費税率は低い。しかし欧州各国の付加価値税は軽減税率を昔から適用している。特に食料品などの基礎的消費項目の軽減税率は極端に低い。英国のような食料品などの付加価値税率がゼロの国もいくつかある。

    つまり実際の消費税(付加価値税)の国民負担の重さを比較するには、各消費項目毎の消費額を適用税率で加重平均して算出した数字を使う必要がある(いわゆる実効税率)。したがって英国などで食料品だけ消費する生活を送れば消費税(付加価値税)はゼロである。実際、以前の消費税率5%の時でも、英国に住んでいた人は日本の消費税の負担が重く感じると言っていた。


    ところで欧州各国との比較するために異なる適用税率を使って加重平均値を算出するのは手間の掛る作業になる。しかし各国の税収全体に占める消費税額(付加価値税額)の割合は知ることができる。むしろこちらの方が実態を反映しやすいと筆者は感じる。またこれは検索サーバを使えば簡単に見つけることができる。例えば「各国税収割合、消費税」で検索すれば出てくる。

    消費税・付加価値税の国税に占める割合の主な国の比較が次の表である。
    消費税・付加価値税の国税に占める割合(%)
    国  名標準税率国税に占める割合
    フランス19.647.1
    ドイツ19.033.7
    イタリア20.027.5
    英  国17.523.7
    スウェーデン25.022.1
    日本(増税前)4.0(5.0)20.7(24.6)
    日本(増税後)6.4(8.0)29.5(34.3)


    まずこの表の見方を説明する。日本については消費税の増税前(5%)と増税後(8%)の両方を表示した。また日本が消費税の2割を地方消費税と認識しているため5%時代でも、国税は4%ということになっている。しかし国民の感覚からはやはり消費税は5%であり、それに対応する数字を( )内に表示した。したがって以下の解説は( )内の数字を使う。さらに増税後(8%)の数字は筆者が推計したものである。そして英国などがリーマンショック後付加価値税の標準税率を少し上げたが、この表では反映していない。

    表を見て分るように増税前(5%)でも、日本の消費税の国税に占める割合24.6%は欧州各国と遜色がなく、むしろ英国やスウェーデンより大きかった。8%への増税後の今日、日本は国税に占める割合が34.3%と既にドイツを抜く消費税の重税国家になっていることを示している。これも軽減税率を適用していないことが主に影響している。この他にも徴税方法や徴税実態の違いなどが考えられるが、御用学者化した財政学者などはこれらに関しても事実を一切明かさない。


    このように日本の消費税の国税に占める割合が既に極めて大きくなっているのに、国民はこの事実を全く知らされていない。政治家もこのことをどれだけ認識しているのか不明である。それにもかかわらず10%への増税を議論しているのだから、日本の政治家達は異常である。これも日本全体が日本の消費税率は欧米に比べて極めて低いという完全に間違った情報でマインドコントロールされて来たからである。

    各国の消費税率(付加価値税率)の標準税率を示す表(フリップ)を掲げ、「日本消費税率はまだまだ低い」と解説する者がよくテレビに登場する。このような学者やエコノミストは、このような重大な事実を知らない大バカ者か、知っている大嘘つきである(おそらく大バカ者で大嘘つき)。つまり標準税率を示す表(フリップ)を持出したら「今から嘘をつくぞ」の合図と思えば良い。



来週は「日本の財政は最悪」を前提にした不毛な予算の分捕り合いを取上げる。




16/4/18(第888号)「財政問題に対する考えが大きく変る前夜」
16/4/11(第887号)「民進党が消費税増税を推進する背景」
16/4/4(第886号)「財政問題が解決済みということの理解」
16/3/28(第885号)「終わっている日本の経済学者」
16/3/21(第884号)「国際金融経済分析会合の影響」
16/3/14(第883号)「信用を完全に失った財務省」
16/3/7(第882号)「「政界」がおかしい」
16/2/29(第881号)「一向に醸成されない「空気」」
16/2/22(第880号)「緊縮財政からの脱却」
16/2/15(第879号)「超低金利の今こそ国債発行を」
16/2/8(第878号)「日銀の「マイナス金利」政策の実態」
16/2/1(第877号)「CTAヘッジファンドの話」
16/1/25(第876号)「今後の原油価格の動きは「売り投機筋」に聞いてくれ」
16/1/18(第875号)「日本の経済論壇は新興宗教の世界」
16/1/11(第874号)「日本のデフレギャップは資産(財産)」
15/12/21(第873号)「敬虔なクリスチャンの感覚が日本を沈没させる」
15/12/14(第872号)「「名目GDP600兆円」達成のシナリオ」
15/12/7(第871号)「日本の経済学界の惨状」
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15/11/23(第869号)「今度こそは盛上がるかシニョリッジ」
15/11/16(第868号)「小黒教授の文章(論文)への反論」
15/11/9(第867号)「小黒一正教授の文章(論文)」
15/11/2(第866号)「シニョリッジ政策は現在進行中」
15/10/26(第865号)「避けられる物事の根本や本質」
15/10/19(第864号)「安保法案騒動に対する感想」
15/10/12(第863号)「安保法制改正の必要性」
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15/9/21(第860号)「数年後、中国はIMFの管理下に?」
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15/8/31(第858号)「唐突な人民元の切下」
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