経済コラムマガジン 平成9年2月10日より
経済コラムマガジン




16/3/7(882号)
「政界」がおかしい

  • 「政界」が主導せざるを得ない政策

    日本において経済や金融の環境にとてつもなく大きな変化があったにもかかわらず、一向に国の経済政策が変る気配がない(最後に述べるように兆しみたいなものは出てきたが)。具体的に環境の変化とは、既に黒田日銀が300兆円もの国債を買入れたことや長期金利がマイナスになったことなどである。このような重大な変化が起っているのに、これに対して何をすべきなのか日本中が思考停止に陥っている。本誌は、この原因を探るべく「マスコミ界」「政界」「官界」と順番に取上げ分析している。先週の「マスコミ界」に続き今週は「政界」である。


    日本の長期的政策の大きな根幹は、今後の高齢化社会を見据えた社会保障制度の構築である。今後、巨額の社会保障費が必要になって来ることははっきりしている。これまでの歴代内閣の規定路線ではこれを消費税増税で賄うということになっていた。国民も消費税増税は非常に嫌であるが(消費税増税を決めた内閣は必ず倒れた)、漠然とこれを受入れる他はないのではと諦めている。

    将来の社会保障費を賄うためには消費税率を25〜30%まで上げる必要があると御用学者は試算している。しかし消費税を5%から8%まで上げただけで日本経済はコケたのである。つまり消費税率を25〜30%まで上げるなんて不可能である。

    ましてや軽減税率の導入が決まったことを考えると、25〜30%ではなく必要な消費税率は35〜40%ということになる。しかしそのようなことは完全に不可能である。ところが消費税増税論者は、この絶対に不可能な政策をあたかも常識であり、可能なごとく言って引かない。彼等は本当に浮き世離れした存在である。


    消費税増税が無理と分かった今日、将来の社会保障費の財源を他に求める必要がある。これに対して筆者は16/2/22(第880号)「緊縮財政からの脱却」で、「国債の日銀買入れといった実質的なシニョリッジ」と「取り敢えず償還期限の長い国債の大量発行」で財源を賄うことを提案した。特に後者は、今日のような超低金利の時代には誰でも考えそうなことである。民間ではさっそく40年という超長期の社債を発行する会社が出ている(JR西日本・・年利1.575%)。

    ところが政府関係者からは今のところ全くそのような声が起らない。筆者にとって無気味に感じるような沈黙が続いている。このようなことに発想が及ばないのか、あるいは他の人々の動きを窺っているのかそれすら分らない。


    本誌で何度か言及した通り、日本において大きな政策の転換には一定の法則がある。まず最初に動くのは「マスコミ界」である。「政界」と「官界」はこれに追随して動く。反対に「政界」や「官界」が最初に動くことはまずない。「官界」が最初に動くとだいたい失敗している。

    しかし「シニョリッジ」や「国債の大量発行」ということになると大事(おおごと)である。しかしいつもなら最初に動くはずの「マスコミ界」は、こと消費税や財政が関係すると何となく躊躇する傾向がある。どうも「マスコミ界」は「官界」、中でも財務当局からマークされることを避けているように筆者には感じられる。


    もちろん消費税増税が規定路線の「官界」が最初に動くはずはない。したがって今回の大変革に限っては、どうしても「政界」が主導する必要があると筆者は思っている。おそらく「政界」が動けば、「官界」はこれに渋々付いて来ると考えられる。財務当局は消費税増税路線に限界を感じていると思われるし、混乱必至の軽減税率導入が決まり財務官僚もやる気を失っていると筆者は見ている。また消費税の延滞も大きくなっている。いまだに「消費税」「消費税」と無邪気なことを言っているのは、無能な御用学者(財政学者など)だけである。

    もちろん筆者が示した提案が最良ではないかもしれない。しかし筆者の提案がいくらかヒントとなる政策が導入されれば良いと現段階では思っている。


  • 「環境の日」から政界は大転換できるか

    ところがこのような大きな変革をリードすべき「政界」がおかしい。自民党からは若手議員が立続けに議員辞職に追込まれるような不祥事を起こしている。いずれも「公募」で立候補者に選ばれた国会議員である。

    民主党がおかしいのは今に始まったことではない。民主党が政権を取れたのは、民主党に実力があったからではなく、「反自民」という風が吹いていたからである。当時は民主党に一度政権を任してみようという雰囲気があった。しかし「風」が止んだ今日、民主党に期待する声はない。


    今日、当選する民主党の国会議員は、官公労などの労働組合をバックにする者ばかりが目立つようになった。民主党に合流しようとしている「維新」も組合の選挙協力を期待しているのであろう。しかし民主党の中で労働組合の力が強くなると、党の行動が左翼的になりますます現実から離れる。安保法制国会での民主党の行動は「左翼」そのものだった(「戦争法案」「徴兵制」などのばかげた主張を繰返していた)。


    民主党の若手議員の予算委員会での与党への質問が異常である。最近驚いたのは、丸川環境大臣に対する「環境の日」を知っているかという質問である(一般の国民でこれを知っているいる者はまずいない)。丸川大臣が日にちを間違えると、この議員は猛攻撃に出ていた。

    どうも丸川大臣は閣僚の中でも攻撃しやすいと標的にされているようである。政治評論家によれば、内閣の弱いところへの攻撃を続けることが野党にとって戦術上の常套手段という。しかし一般国民は政治評論家ではないので、そんな事に全く興味がない。だから大臣が何人失脚しても民主党の支持率は全く上がらない。

    どうも自民党の女性閣僚がターゲットになっているようである。これは松島大臣の「うちわ」から始まっている。しかし筆者達は「実に下らない」「いい加減にしてくれ」と思っている。「政界」は自分達の価値と存在をディスカウトすることばかりに熱中しているのである。まさに「世も末」である。


    消費税増税に頼らない巨額の社会保障費の捻出となれば政策の大変革である。しかも前段で説明したように、これを「政界」が主導せざるを得ない。ところがこの「政界」が話をしているようなていたらくである。

    マイナス金利や株価・原油価格の暴落、そして為替の円高への転換といった大きな環境の変化があっても、国会では「うちわ」や「環境の日」程度のことばかりが問題にされているのである。今の日本の国会議員は「正気」かと疑いたくなるほどである。しかし「政策の大変革」はこの政治家達にやってもらう他はないのである。

    本誌で何度か指摘したことがあるが、今日、日本においては大きな事は官僚が決め、どうでも良い小さな事を国会議員が問題にする傾向がある。以前国会で騒動になった国会議員の国民年金保険料の未納問題なんかはその典型である。したがって「環境の日」から「シニョリッジ」や「国債の大量発行」に政界が大転換できるか、正直に言って筆者も自信はない。


    たしかに追加の補正予算という声が出ているように、一頃に比べ雰囲気が少し変ってきた。これまで「財政出動」は絶対のタブーであった。14年度も15年度も、本当は「第二次補正予算を」という声が出てもおかしくなかったのに、誰も言い出そうとはしなかった。今回は多少雰囲気が違ってきたようで、来年度の予算成立の前から第二次補正予算の話が自民党の中から出ている。

    しかし筆者が提案しているのはあくまでも「シニョリッジ」や「国債の大量発行」による財政政策の大転換である。決してチマチマした補正予算の成立に止まるものではない。ただ少しは「空気」が変ったのか、財政に関して金縛りに会っていた「政界」もようやく動き出したように筆者は感じる。これもマイナス金利の効果であろうか。



来週は「官界」を取上げる。




16/2/29(第881号)「一向に醸成されない「空気」」
16/2/22(第880号)「緊縮財政からの脱却」
16/2/15(第879号)「超低金利の今こそ国債発行を」
16/2/8(第878号)「日銀の「マイナス金利」政策の実態」
16/2/1(第877号)「CTAヘッジファンドの話」
16/1/25(第876号)「今後の原油価格の動きは「売り投機筋」に聞いてくれ」
16/1/18(第875号)「日本の経済論壇は新興宗教の世界」
16/1/11(第874号)「日本のデフレギャップは資産(財産)」
15/12/21(第873号)「敬虔なクリスチャンの感覚が日本を沈没させる」
15/12/14(第872号)「「名目GDP600兆円」達成のシナリオ」
15/12/7(第871号)「日本の経済学界の惨状」
15/11/30(第870号)「堂々と新規の国債発行を」
15/11/23(第869号)「今度こそは盛上がるかシニョリッジ」
15/11/16(第868号)「小黒教授の文章(論文)への反論」
15/11/9(第867号)「小黒一正教授の文章(論文)」
15/11/2(第866号)「シニョリッジ政策は現在進行中」
15/10/26(第865号)「避けられる物事の根本や本質」
15/10/19(第864号)「安保法案騒動に対する感想」
15/10/12(第863号)「安保法制改正の必要性」
15/10/5(第862号)「フォルクスワーゲンの排ガス不正問題」
15/9/28(第861号)「今回の安保騒動」
15/9/21(第860号)「数年後、中国はIMFの管理下に?」
15/9/7(第859号)「中国の為替戦略の行き詰り」
15/8/31(第858号)「唐突な人民元の切下」
15/8/24(第857号)「改めてメガ・フロートを提案」
15/8/10(第856号)「鰯の頭も信心から」
15/8/3(第855号)「個別的自衛権だけなら国連からは脱退」
15/7/27(第854号)「時代に取残された人々」
15/7/20(第853号)「宮沢俊義という変節漢」
15/7/13(第852号)「「緊縮財政路線」はジリ貧路線」
15/7/6(第851号)「議論のすり替えとデマ」
15/6/29(第850号)「安倍政権に対する提言」
15/6/22(第849号)「憲法は不要」
15/6/15(第848号)「22才のベアテが作った日本国憲法条文」
15/6/8(第847号)「中国は外貨不足?」
15/6/1(第846号)「中国は資金繰り難?」
15/5/25(第845号)「今こそ郵貯と財投をアジアに広めろ」
15/5/18(第844号)「AIIBの資金力は「ゴミ」程度」
15/5/11(第843号)「中国との付合い方」
15/4/27(第842号)「中国はマイナス成長?」
15/4/20(第841号)「ドイツ軍の敗走開始の話」
15/4/13(第840号)「反・脱原発派の陥落は近い?」
15/4/6(第839号)「「エコ」の横暴と呪縛」
15/3/30(第838号)「原油の高値時代の後始末」
15/3/23(第837号)「ドバイショック再現の可能性」
15/3/16(第836号)「価格暴落でも供給増」
15/3/9(第835号)「原油価格は二番底に向かう?」
15/3/2(第834号)「実態がない地政学的リスク」
15/2/23(第833号)「米大手金融機関の「情報発信力」」
15/2/16(第832号)「「今が潮時」とうまく撤退」
15/2/9(第831号)「代替資源(非在来型資源)のインパクト」
15/2/2(第830号)「原油価格の動きに変調」
15/1/26(第829号)「低調になった経済論議」
15/1/19(第828号)「「どんぶり勘定」の経済運営」
15/1/12(第827号)「IMFの借金取りモデルの導入」


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