経済コラムマガジン 平成9年2月10日より
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14/11/3(819号)
財務省とマスコミの関係

  • 増税賛成者の事情

    今週は、日経新聞に掲載された奇妙な記事から始める。まず10月28日のスクランブルという囲み記事に、27件の欧州投資家を訪問したSMBC日興証券の阪上亮太氏が「海外勢が日本経済を不安視している」という話が紹介されていた。この背景には消費税の再増税があり、阪上氏は「実に8〜9割が先送りの容認派だった」と述べている。これは筆者にとっても納得の行く話である。

    ところがこの翌日10月29日の日経新聞に、これと正反対の日経新聞社の市場関係者100人(正確には103)に対する緊急アンケート調査の結果が掲載されていた。来年10月の10%への再増税について「予定通り実施すべき」との回答が実に78%もあった。市場関係者とは、エコノミスト19人、債券(ストラテジストや投資家)15人、為替(銀行や証券会社の担当者)16人、株式(ファンドマネジャーやストラテジストなど)53人である。驚くことにエコノミスト19人中の18人までが再増税を実施すべきと答えている(最低は株式関係者の53人中37人が賛成・・70%賛成)。


    もちろん海外勢と日本国内勢の違いがある。しかし同一のテーマ(再増税)に対する考えがこれだけ正反対ということは異常である。たしかに海外勢についての話は、阪上亮太氏の個人的な感触と切捨てる者がいるかもしれない(もちろん海外勢が日本経済について無知ということは有り得ない)。しかし米スノー財務長官らの日本の再増税への牽制発言などを考えると、それは(阪上氏がデタラメを言っていることは)ないと筆者は判断する。

    したがって海外勢(阪上氏の話)と日本国内勢(日経のアンケート結果)のどちらかが嘘ということになる。もちろん筆者は阪上氏の感触や話の方が真相に近いと思っている。つまり筆者の見方では日経のアンケート結果は、ねつ造、または調査対象になった市場関係者に圧力が掛かっているか、あるいはさる筋から操作されていると見る他はない。もちろん日本の市場関係者のほとんどが「完全なバカ」ということもある(笑)。


    筆者は、日本の市場関係者が日経のアンケートにこのような極端な回答をしていること事態に興味がある。市場関係者が、再増税を推進することで何らかの利益を得る(既に得ている)という考えをどうしても排除できない(彼等は完全なバカではない)。そしてこの利益が問題である。例えば市場関係者が、増税に賛成することによって何らかの市場に関する情報をさる筋から得ているといったことが考えられる(筆者はないと思うが・・)。しかしもし仮にそのようなことがあるのならば、由々しき事態である。

    日経のアンケート調査結果の記事は、明らかに再増税を促すためのものと筆者は考える。14/9/29(第814号)「メディアはねつ造だらけ」」などで述べたように、日本のメディア(マスコミ)は世論を動かすためねつ造だってやりかねない。今回の再増税騒動が落着き、改めて日本のメディア(マスコミ)の在り方が問題になることが有り得ると考える(朝日新聞は既になっている)。その意味でも10月29日の日経のアンケート結果は面白い。もちろん筆者はこの記事を切抜いて保存している。


    消費税再増税を巡る主な利害関係者は、財務当局の他、消費者、納税事業者、政治家、そしてマスコミなどである。この他に財界と労働組合があり、この両者が再増税に賛成している理由が全く分らない。財界は、法人税減税を条件にして消費税増税に賛同しているという話があるが、筆者はこれを信じていない(もっと深刻な理由があると想っている・・このことは大手マスコミについても言える)。そもそも法人税を下げ、公務員の給料を上げ、消費税を増税するといった話が世間で通用するはずがない。

    全く意味不明なのは労働組合の再増税賛成である。組合員は組合費を給料から天引きされた上で、消費税まで上げられるのである。一般の組合員はたまったものではなく、今こそ労組幹部を引きずり降ろすべきであろう。労組幹部は再増税で何らかの利益が得られるとしか考えられない。公明党幹部が再増税に賛同していることが不思議と本誌でも述べてきたが、公明党の支援団体でも増税に反対する動きが活発になってきたという。当たり前と言えば当たり前の話である。


  • 今回は財務当局が前面に

    今週「日本の財政は最悪で財政破綻の寸前」という虚言・妄言について話をするつもりでいたが、これは延期する。もっとも増税論議は理屈や理論を越えていて、12月に安倍総理が総合的に政治判断をする。

    一般の国民、つまり有権者の圧倒的多数は本音では増税に反対している。ところが増税に賛成している国民が多いといった過った世論調査の結果を日経などの大手マスコミが流してきた。これがねつ造情報だったことが、8月の時事通信の世論調査の公表で明らかになったと筆者は見ている。一般の国民の多くもこれまで日本のマスコミ報道の影響を受け、消費税増税は将来的には必要と素朴に思い込まされてきた(将来の増税はしょうがないかもしれないが、今日、上げることには反対というのが平均的な考え)。一方、増税反対論は、内容をほとんどマスコミが伝えないので無責任な発言と感じている。


    このようにマスコミの作った増税ムードに人々はある程度乗せられてきた面がある。政治家もマスコミの世論調査のインチキ結果に翻弄されてきた。国民の多くが消費税増税に賛成しているという不思議な世論調査の結果を目の当たりにして、昨年は増税を見過ごしてしまった。

    竹下内閣の消費税導入時の混乱(当時の野党をマスコミが煽った)に懲り、消費税増税に関して財務当局のマスコミ対策は巧妙になった。政府の累積債務が500兆円を越えた段階で、マスコミを巻込み財政再建キャンペーンが展開された。日経新聞はこの先頭に立っていた(「2020年からの警鐘」という特集を組み、財政破綻で日本はこんな惨めな国になるといういい加減な近未来図を延々と示し続けていた)。

    このムードの中、橋本政権で緊縮財政と消費税の5%への引上げが実施された。ところがこれが大失敗で、経済は大きく落込み、増税したにもかかわらず税収は逆に減った。むしろ金融機関の不良債権問題が深刻化し、地価や株価がさらに下落した(後に外資が日本の資産を安く買い叩いた)。筆者は、日経新聞の「2020年からの警鐘」の取材班がそのまま社内に残り(出世している)、今日の増税キャンペーンを主導していると見ている。


    財務当局とマスコミの関係は微妙である。この一端を本誌は05/2/28(第379号)「マスコミの暴走」で取上げた。ここでは文芸春秋の1998年7月号に掲載された山家悠紀夫氏(当時、第一勧銀総合研究所取締役専務理事)の「『日本の財政赤字は危機的』は大ウソ」という文章を紹介した。当時、バブル崩壊からようやく薄日が射してきた日本経済を、橋本政権が逆噴射的な緊縮財政によって、一転、奈落の底に落とした頃である。

    山家氏はこの文章の最後で「ある大蔵省OBが非公式の席で現在の惨状を『今回は薬が効きすぎた』と述べた」ことを紹介している。大蔵省が財政改革推進のために赤字を強調したが(累積債務が500兆円など)、意外にもマスコミの積極的な賛同を得ることになり、国民にあまりにも直戴に浸透してしまったという意味らしい。つまり大蔵省がマスコミを使って財政改革のムード作りを図ったが、バカなマスコミが行き過ぎたためとんでもないことになったと筆者は解釈している。たしかに日経新聞の特集「2020年からの警鐘」なんかはその典型であろう。


    今回の消費税増税騒動もマスコミが暴走しているとも受け取れる。しかし筆者は、今回は財務当局が前面に出て主導していると見ている。日銀なども巻込んでいるところなどを見ると、10%を実現するためにはどんな手段でも使うという決意であろう。

    財務当局が総理の周囲に「再増税が実現しない場合には、社会保障や福祉関連の予算を減額する」と凄んでいるという話が出ている。とうとう官僚が政治家を脅し始めたのである。一体、日本では誰が予算を決めるのかという話になる。もし税収予想で予算が決まるのなら、政治家はいらないという話になる。もっとも予算委員会では「うちわ」の話ばかりなので、政治家が軽んじられているという見方もできるが。

    筆者は、大蔵省から財務省に変ったことが大きく影響していると考える。大蔵官僚はもう少しバランス感覚があった。一方、今日の財務官僚は、片勘定にしか目が届かなく視野が狭い(財政の経済への影響や金利の動向なんてほとんど考えていない)。消費税の税率引上げで税収が多少増えても(うまく行っての話)、1,000兆円の借金を考えれば何の足しにもならない。極端な話、1,000兆円も1,100兆円も変わりはない。また長期金利はとうとう0.45%まで下がった。つまり財政破綻なんて有り得ない。むしろ金利低下を危ぶむ声さえある。それならもっと国債を発行し、財政支出に充てれば良いのである。



来週も消費税の再増税を取上げる。



14/10/27(第818号)「増税派の素顔」」
14/10/20(第817号)「消費税増税と八代亜紀」」
14/10/13(第816号)「増税なんて必要ない」」
14/10/6(第815号)「日経新聞のねつ造解説」」
14/9/29(第814号)「メディアはねつ造だらけ」」
14/9/22(第813号)「人手不足は本当か」」
14/9/15(第812号)「経済学とニヒリズム」」
14/9/8(第811号)「サミュエルソンは新古典派?」」
14/9/1(第810号)「ハシゴを外されそうな日本」」
14/8/25(第809号)「ハシゴを外された話」」
14/8/4(第808号)「トマ・ピケティの「21世紀の資本論」」
14/7/28(第807号)「三教授のサマーズ論の解説」
14/7/21(第806号)「一家に一台が需要の天井」
14/7/14(第805号)「ポンコツ経済理論の信奉者達」
14/7/7(第804号)「経済成長の三つのパターン」
14/6/30(第803号)「サマーズとトマ・ピケティ」
14/6/23(第802号)「奇妙な話ばかり」
14/6/16(第801号)「石油は人々をおかしくさせる」
14/6/9(第800号)「ベトナム沖の一大事」
14/6/2(第799号)「金利低下の背景」
14/5/26(第798号)「政策目標の変更」
14/5/19(第797号)「「美味しんぼ」騒動」
14/5/12(第796号)「使えない経済指標」
14/4/28(第795号)「推理小説のような中国経済の実態」
14/4/21(第794号)「中国1〜3月期のGDP成長率」
14/4/14(第793号)「日本のマスコミの問題体質」
14/4/7(第792号)「ウクライナとロシアの関係」
14/3/31(第791号)「怪しくなったアベノミクスの行方」
14/3/24(第790号)「中国のバブル生成の過程」
14/3/17(第789号)「バブル経済崩壊の序章」
14/3/10(第788号)「中国経済にまつわる奇妙な話」
14/3/3(第787号)「中国経済に変調(その2)」
14/2/24(第786号)「中国経済に変調」
14/2/17(第785号)「経済戦略会議から15年」
14/2/10(第784号)「理論と現実の狭間・・金利編」
14/2/3(第783号)「経済理論と現実の狭間」
14/1/27(第782号)「なつかしい経済理論の復活」
14/1/20(第781号)「窮地に立つリフレ派」
14/1/13(第780号)「新春のトピックス」
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13/10/7(第772号)「消費税増税、次の焦点」
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13/9/16(第769号)「利払い額のGDP比率の推移」
13/9/9(第768号)「利払い額で見る財政の健全性」
13/9/2(第767号)「消費税増税は雲行きが怪しくなった?」
13/8/26(第766号)「財政が危機という怪しい話」
13/8/10(第765号)「消費税増税は絶対に避ける道」
13/8/5(第764号)「消費税増税を促す包囲網」
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13/1/28(第741号)「意志を持った「やじろべい」」
13/1/21(第740号)「金融政策に対する提言」
13/1/14(第739号)「年頭にあたり」


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