経済コラムマガジン 平成9年2月10日より
経済コラムマガジン




14/9/29(814号)
メディアはねつ造だらけ

  • 誤報ではなくねつ造

    今週は予定を変更して、新聞などのメディアの世論操作と消費税増税を取上げる。朝日新聞の従軍慰安婦と故吉田東電福島第一原発所長の調書に関する過った報道が大きな問題になっている。これらは「誤報」と糾弾されている。しかし筆者は、これらは決して「誤報」ではなくて記事の「ねつ造」と見ている。

    「誤報」は、うっかり事実を取り違えたり、記事の裏付けが不十分な時に起るものである。しかし朝日のケースは、明らかに記事を「ねつ造」している。記者(あるいは朝日全体)の予見に沿って、入手した材料から意図した記事を仕上げている。つまり書上げた記事の内容が事実と違っていても構わないと、執筆者達は割切っているのである。


    記事を新聞に載せるかどうかは上司(デスク)がチェックして判断する。通常は、この段階で取材に問題があるなら最悪のケースではボツになる。しかしどうも朝日の場合は、このデスクと一体となって「ねつ造」記事を仕上げていた可能性がある。

    ところで週刊誌の場合、記者と実際にこれを文章にする者(ライター)は異なる。記者は、取材して集めた材料をライターに渡せば仕事は終わりである。ライターは、これから面白おかしく読者に受ける文章を仕上げる。したがって実際の週刊誌の記事は、現実とちょっと違っていたり時には大袈裟な表現になる。ただ週刊誌の場合は、そういうことも有りうると読者の方も承知している。

    しかし朝日は信用があると見なされてきた新聞である。その朝日新聞が、社全体、あるいは特定の部署が一体となって記事のねつ造を行っていた疑いがある。だから一大事なのである。


    記事のねつ造ということになれば、当然、それには目的があるはずである。吉田所長の調書の場合は明白である。朝日の「反原発」勢力への肩入れと筆者は見る。吉田調書もその筋から入手したという話がある。この記事では吉田所長の命令に反して原発作業員が逃げたということになっているが、驚くことに執筆した記者は現地での裏付け取材を一切行っていないという(事実はどうでも良いということである)。

    政府が吉田調書を公開すると知り、朝日は慌てて誤報(実態はねつ造)を認めるはめになったのである(まさか政府が公開するとは思わなかったのであろう)。ところが従軍慰安婦の方は、狙いがはっきりしない。これには「日本を貶(おとし)める」という昔からの朝日の体質から来ているという説がある。しかし筆者はもっと根が深いと感じる。

    ひょっとすると朝日に関して、次は靖国神社問題が持上がることも有ると筆者は思っている。中国と韓国は、今日、靖国神社問題を日本への外交カードとして使っている。しかし少なくとも以前の中国は、靖国神社の存在さえ知らなかったし興味もなかったという話である。それにもかかわらず中国政府に、国内問題であったはずの靖国問題をふれ回って焚き付けたのが朝日新聞の関係者という話が昔から言われている。それが事実なら従軍慰安婦問題と似た構図である。


    筆者は、新聞など日本のメディアのねつ造体質は、朝日に止まらないと考える。これをよく表したのがここ数年の消費税増税にまつわる一連の報道である。消費税増税法案は民主党の菅首相が言い始め、野田首相が仕上げ、三党合意(民主・自民・公明)によって国会を通過した。

    消費税増税に関して、一番奇妙なことは増税に国民の多数が賛成しているという話がずっと言われ続けてきたことである。この根拠とされているのが日本の主なメディアのアンケート調査の結果である。もちろん新聞社などが自主的に実施する調査なので、これに対する第三者機関のチェックはない。どこまでこの種のアンケートが信用できるかは、アンケートを実施している新聞社への信頼の度合ということになる。

    しかしもし国民の多くが本当に増税に賛成していたなら、それを実現した民主党が国勢選挙で次々と壊滅的な大敗を喫するはずがない。特に参議院選では、唐突に消費税増税を打出した菅首相の時と合せ2回連続の大敗である。日本のメディアは、民主党の大敗の原因として「党内の抗争」や「東日本大震災へのまずい対応」など適当に他の事柄を挙げている。しかし筆者は、何と言っても第一の敗因は消費税と見ている。


  • 賛成と反対の大逆転

    先月8月16日に消費税に関して衝撃的な世論調査の結果が時事通信社から示された。来年10月の10%への増税に「反対75%、賛成23%」という結果である。筆者は、この数字を見た時、最初、賛成と反対が逆ではないかと思ったほどであった。つまりようやく本当らしい数字が出てきたのである。ちなみに消費税に軽減税率導入は「賛成81%、反対9%」であった。これも納得の行く数字である。

    これに慌てて追随したのか日経は「反対63%、賛成30%」、毎日は「反対63%、賛成25%」というアンケート結果を出してきた。読売と朝日はもう一つはっきりとしていないが、朝日は一応「反対68%」ということが分かっている。筆者は、消費税増税に関する世論は、民主党が増税を検討している段階からこれに近かったと思っている。今年の4月に増税が実施されたことが影響して反対が急に増えたとは考えにくい。


    どう見ても増税前の日本のメディアの世論調査の結果が極めて異常だったと考える他はない。想定する結果に導くための操作が行われていたと疑われてもしょうがないのである。例えば「財政再建や社会保障制度を維持するために消費税を上げることに貴方は賛成ですか反対ですか」といった質問をすれば、当然、賛成が増える。

    また「増税に反対」と答えると、「では社会保障制度を維持する財源はどこから手当てしますか」といった質問が際限なく続くと予想される場合がある。アンケートの対象となった者は、面倒(一般の人々はあれこれとプライベートのことを聞かれることを嫌う)だから「賛成」と回答しアンケートをさっさと切上げたいと思うのが普通である。さらに人々には調査主体の主張を理解した上で、相手が喜びそうな回答を行う傾向がある。消費税増税を推進している日経の調査なら、どうしても「賛成」が増えるといった具合である。

    そしてこの程度の世論調査での操作テクニックは、アンケート調査のプロである日本のメディアは、当然、熟知している。つまりアンケート結果なんて、メディアがその気になればかなり操作できると筆者は考える。しかし操作された結果による世論の分析なら、記事の「ねつ造」と少しも違わない。


    ところがここに来て、消費税に関し日本のメディア(主に新聞)は大きく方向転換を余儀無くされていると筆者は見ている。一つの理由として日本経済の急激な落込みが挙げられる。増税前、日本経済への影響は軽微という間抜けな議論が横行していた。ところが4〜6月の成長率が年率マイナス7.1%と大きく沈んだ。さすがに経済音痴の日本のメディアもこれには驚いたであろう。

    もう一つの理由として、やはり朝日の誤報(はっきり言うがこれはねつ造)騒動が影響していると筆者は思っている。朝日の読者も、今回はさすがに「ばかにするな」と怒ったと見られ発行部数もかなり減っている(今頃になって怒るのも変ではあるが)。同様の事が、世論調査をねつ造してまで消費税増税ムードを煽ってきた日本のメディアに対しても起ると気付いても不思議ではないのである。そもそも消費税増税に賛成する変態体質の者が世の中にそんなにいるわけはないであろう。


    では何故、日本の新聞が消費税増税に入れ込んだのか、これが謎である。少なくとも竹下内閣で消費税を導入する時には、日本の新聞はこぞって反対の論陣を張っていた。例えば「その前に無駄な財政支出をもっと削れ」とか「消費税は逆進性が強い」と言って強く反発していた。ところが急に新聞は、増税のキャンペーンを始めたのである。

    一つ考えられることは、新聞への軽減税率の適用である。これについては本誌で何度も指摘してきたが、新聞社と当局との間に軽減税率適用での密約があるのではないかという疑いである。つまり新聞の増税キャンペーンが軽減税率適用の条件となっているという話である。しかしその程度のことでこのような奇妙なキャンペーンを続けてきたとは考えられない。これも根はもっと深いところにあると筆者は思っている。



来週は今週の続きである。



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14/9/1(第810号)「ハシゴを外されそうな日本」」
14/8/25(第809号)「ハシゴを外された話」」
14/8/4(第808号)「トマ・ピケティの「21世紀の資本論」」
14/7/28(第807号)「三教授のサマーズ論の解説」
14/7/21(第806号)「一家に一台が需要の天井」
14/7/14(第805号)「ポンコツ経済理論の信奉者達」
14/7/7(第804号)「経済成長の三つのパターン」
14/6/30(第803号)「サマーズとトマ・ピケティ」
14/6/23(第802号)「奇妙な話ばかり」
14/6/16(第801号)「石油は人々をおかしくさせる」
14/6/9(第800号)「ベトナム沖の一大事」
14/6/2(第799号)「金利低下の背景」
14/5/26(第798号)「政策目標の変更」
14/5/19(第797号)「「美味しんぼ」騒動」
14/5/12(第796号)「使えない経済指標」
14/4/28(第795号)「推理小説のような中国経済の実態」
14/4/21(第794号)「中国1〜3月期のGDP成長率」
14/4/14(第793号)「日本のマスコミの問題体質」
14/4/7(第792号)「ウクライナとロシアの関係」
14/3/31(第791号)「怪しくなったアベノミクスの行方」
14/3/24(第790号)「中国のバブル生成の過程」
14/3/17(第789号)「バブル経済崩壊の序章」
14/3/10(第788号)「中国経済にまつわる奇妙な話」
14/3/3(第787号)「中国経済に変調(その2)」
14/2/24(第786号)「中国経済に変調」
14/2/17(第785号)「経済戦略会議から15年」
14/2/10(第784号)「理論と現実の狭間・・金利編」
14/2/3(第783号)「経済理論と現実の狭間」
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