経済コラムマガジン 平成9年2月10日より
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13/11/18(774号)
ここ一ヶ月の出来事

  • テイーパーティから食品偽装まで
    パソコンの不具合によって4週間ほど本誌を休んだ。パソコンの修理を終え、今週から発信を再開する。


    ここ数カ月、本誌は消費税増税に異を唱えてきた。しかし増税は実施されることが決まり、新たな角度から経済にまつわる事柄を取上げることにする。ただ問題の消費税についても引き続き触れるつもりである。


    一ヶ月近く沈黙を続けていたことが、世の中の流れみたいなものを客観的に見ることに役立ったような気がする。そこで今週は、ここ一ヶ月の間に起って世間の注目を集めた事柄を取上げこれらにコメントを行う。例えば直近で0.6%程度まで下がった長期金利の動きなんかもその一つである。

    まず日銀の異次元の金融緩和が始まって長期金利の動きが不安定になった時、13/6/17(第758号)「長期金利上昇で騒いでいる人々」で取上げたように大騒ぎしていた人々がいた。しかし筆者の予想通り、今日、いつものように彼等は卑怯にも黙りこくっている。このように日本は愚かな経済学者やマスコミ人で溢れていることを認識する必要がある。また彼等と同種のいい加減な人々が今日も別の虚言・妄言を吐き続けている。

    マクロ経済にとって金利が低いことは都合の良い面が多いことは認められる。しかし今日のような異常な金利の下がり方は、金を借りてまで投資を行おうという者がいないことを意味する。つまりアベノミクスでデフレ克服が近いという声はあるが、それが難しいことを金利の動きは示している。たしかに今日のような乏しい財政政策と金融緩和の組合せでは、デフレ克服は不可能と筆者は考える。


    米国で、テイーパーティの評判が落ちている。彼等は共和党の保守派と分類されている。しかしこのような見方では、本質が見えなくなる。テイーパーティは狂信的な「小さな政府主義者」であり「構造改革派」である。日本において、橋本政権の財政構造改革や小泉政権の構造改革に共鳴していた人々と同じである。

    米国では、今日、所得の格差が極端に開いた。また米国も今後は確実に高齢化が進む。つまり所得の再分配とより大きな政府が必要になることが目に見えている。ところがこのような流れに逆行する主張を行っているのがテイーパーティである。政府の適切な大きさは、その時代の経済の状況で決まると筆者は考える。民間の活動レベルが高い時には、政府は余計なことをする必要はない。しかし反対に民間経済が低迷している時や所得の再分配が必要な場合は、より大きな政府が必要になると筆者は考える。


    面白いことに、メディアに登場する日本のエコノミストや経済評論家が、皆、米国財政問題でのテイーパーティの行動を批難している。しかし「テイーパーティの主張は、昨日までおたく達の言っていたことと同じ」と筆者は指摘したい。そもそも中央政府の債務残高や国債発行に枠を設定することがばかげているのである。

    ただ筆者は、もし不公正が伴うようならその所得の再分配政策には反対である。また意味のない規制は緩和ではなく撤廃すべきと思っている。しかしこれらが実現しても、今日の日本で最大の問題になっているデフレを克服することは出来ない。つまりアベノミクスの第三の矢に「規制改革」なるものが含まれていることがおかしいのである。


    食品偽装問題の波紋が広がっている。しかしこれは水面下でずっと囁かれていたことである。そんなに車海老が採れるはずがないのに、どこでも車海老が出されているなど不思議に思っている人も少なからずいたであろう。

    食品偽装問題は色々なことを考えさせてくれる。世間でセレブと言われてきた人々が、ずっと偽装された高級食品を買い続け、偽装メニューの高級レストランで食事をし満足していたのである。どうもこの日本版セレブは店鋪やレストランの名前だけを頼りに消費行動をしてきたようである。日本では本物のセレブはほんの一握りなのであろう。

    食品偽装問題を通して、日本人の「感性」というものを考えさせられる。この重要な日本人の感性というものが鈍ってきて、そのうち物の善し悪しの判断ができなくなるのではないかと危惧される。今日のように100円ショツプが流行り、安価な中国製品が大量に流通するようでは、日本人の感性もおかしくなると筆者は思っている。また経済学の世界でも偽装経済学者や偽装財政学者で溢れている。


  • 24億円横領事件と年金問題の本質
    もう一つ話題になっていることを上げれば、年金基金24億円横領事件の犯人がタイで拘束され日本に送還されたことであろう。年金基金については12/3/5(第699号)「投資顧問AIJの事件」で取上げた。筆者は年金について主に二つの提案を行ってきた。一つが13/4/29(第754号)「国民一律の年金」で述べた、定額年金制度の導入である。

    これは前政権の民主党が打出した数少ない意味のある政策である。政権交代したばかりなので、自民党は面子を重んじ民主党の政策の全てを否定している。しかしいずれこの「国民一律の年金」だけは導入せざるを得ないと考える。

    筆者のもう一つの提案は、リスク資産による年金の運用を止めることである。これについては13/4/22(第753号)「日銀のリスク資産購入」で述べた通りである(運用による予定利率に近い利回りの国債を発行し、リスク資産から乗換えさせる)。本当に今回の事件をきっかけとして、年金の運用を考え直すべきと改めて筆者は主張したい。


    マスコミのこの年金基金24億円横領事件に関する報道の仕方がおかしい。もっともずっと日本のマスコミの年金に関する報道は本質を意識的に反らしてきたと感じられる。まず年金問題の大きなテーマは、今後、どれだけ国費を投入するかである。このままの年金制度では、将来、支給額のカットと保険料の大幅な引上げが避けられない。

    人々は減額が予想される年金支給に備えるため消費を抑えざるを得ない(生保の個人年金などによって)。また保険料の引上げも消費を冷え込ませる。政府は100年安心年金と言ってきたが、誰もそれを信じていない。


    もし新たに国費を投入するのなら、国民一律の年金の導入ということになる。厚生年金などの公的年金についても支給額の減額は避けられないが、この国民一律の年金でカバーする他はないのである。今日の支給水準を維持するために、非現実的な想定を前提にしているのが現行の年金制度である。

    非現実的な想定の一つが有り得ない運用益の確保であり、それを具体化するための手法がリスク資産による運用である。したがって「投資顧問AIJの事件」のような事はいつ起っても不思議はない(厚生年金も株式の運用を大きくしようとしている)。実際、24億円横領事件の年金基金も投資顧問AIJの事件で多額の損失を出している。リスク資産による運用を止めない限り、間違いなく今回のような事件はどれだけでも起る。たまたま株価が高く円安の現在、公的年金を含めリスク資産による年金運用を止めるチャンスである。


    マスコミはこのような年金の本質的な問題を避けようとしている。今回の24億円横領事件でも、犯人の行動を面白おかしく取上げるだけである。年金の運用で手数料を稼いでいる業界に遠慮しているのか、リスク資産による運用の問題点について全く触れない。

    これまでも年金問題について、マスコミは本質をわざと避け、スキャンダルを扱うような騒ぎ方をしてきた。政治家の年金未納問題などが典型例である。また年金記録問題も同じである。しかしこれらの問題がなかったとしても、年金財政や年金支給額にほとんど影響はなかったはずである。


    みのもんた氏がやり玉に上がっているが、本人はまたキャスター的な仕事に未練があるようである。連日、「社保庁が」「社保庁が」と言っていたことなどが世の中に影響を与え、社保庁改革が行われたと本人は思い込んでいるのであろう。しかし社保庁が変わっても年金問題に何の変化もない。

    年金改革はもはや社保庁の問題ではない。社保庁(現在年金機構)のさらに上の厚生労働省をもはるかに越えた問題と認識すべきである。つまり日本政府全体の問題である。むしろ「社保庁だ」「厚生労働省だ」と言っているから年金改革が一向に進まないのである。それどころかみのもんた氏のようなマスコミ人が年金問題を社保庁の問題に矮小化した結果、年金改革が10年も20年も遅れたと筆者は本当に思っている。みのもんた氏に関してはあまり悪いことは言いたくはないが、みのもんた氏に代表される日本のマスコミ人が世の中を混乱させているのである。



来週は、世の中を混乱させることを商売にしている日本のマスコミ界を取上げる。



13/10/14(第773号)「虚言・妄言の判断基準」
13/10/7(第772号)「消費税増税、次の焦点」
13/9/30(第771号)「消費税にまつわる諸問題」
13/9/23(第770号)「「声なき声」が届くか」
13/9/16(第769号)「利払い額のGDP比率の推移」
13/9/9(第768号)「利払い額で見る財政の健全性」
13/9/2(第767号)「消費税増税は雲行きが怪しくなった?」
13/8/26(第766号)「財政が危機という怪しい話」
13/8/10(第765号)「消費税増税は絶対に避ける道」
13/8/5(第764号)「消費税増税を促す包囲網」
13/7/26(第763号)「参議院選の結果を考える」
13/7/15(第762号)「アベノミクスの評価他2件」
13/7/8(第761号)「デフレに興味のない大新聞」
13/7/1(第760号)「日経新聞の論説の特徴」
13/6/24(第759号)「アベノミクスを牽制する人々」
13/6/17(第758号)「長期金利上昇で騒いでいる人々」
13/6/10(第757号)「雲行きが怪しいデフレ脱却」
13/6/3(第756号)「財政再建論者のサークル」
13/5/27(第755号)「財政の2010年問題」
13/4/29(第754号)「国民一律の年金」
13/4/22(第753号)「日銀のリスク資産購入」
13/4/15(第752号)「異次元の金融政策」
13/4/8(第751号)「久しぶりの「朝まで生テレビ」」
13/4/1(第750号)「不穏な中国と日本の安全保障」
13/3/25(第749号)「TPPの基本は友好」
13/3/18(第748号)「日本の雪崩的輸出の歴史」
13/3/11(第747号)「TPP交渉と日本警戒論」
13/3/4(第746号)「TPPの実態」
13/2/25(第745号)「有り得る軍事的衝突」
13/2/18(第744号)「群盲象をなでる」
13/2/11(第743号)「まず印紙税の廃止」
13/2/4(第742号)「「構造改革」と「規制緩和」の本当の姿」
13/1/28(第741号)「意志を持った「やじろべい」」
13/1/21(第740号)「金融政策に対する提言」
13/1/14(第739号)「年頭にあたり」
12/12/31(第738号)「中央銀行の働きの変化」
12/12/24(第737号)「日銀とFRBの違い」
12/12/17(第736号)「師走の総選挙の感想」
12/12/10(第735号)「建設国債引受け発言の波紋」
12/12/3(第734号)「先進国だからデフレ」
12/11/26(第733号)「総選挙の行方」
12/11/19(第732号)「残る経済成長路線」
12/11/12(第731号)「先進国における経済成長」
12/11/5(第730号)「投資と経済成長」
12/10/29(第729号)「プラスアルファーの議論」
12/10/22(第728号)「アラン・ブラインダー教授の文章」
12/10/15(第727号)「バランスを欠いた報道」
12/10/8(第726号)「中国からの撤退も視野に」
12/10/1(第725号)「中国の反日暴動に対する感想」
12/9/24(第724号)「本誌の中国問題ダイジェスト」
12/9/17(第723号)「技術流出と日本の伝承文化」
12/9/10(第722号)「技術流出の現状」
12/9/3(第721号)「知的所有権の話」
12/8/27(第720号)「最近の出来事」
12/8/6(第719号)「御用学者の話」
12/7/30(第718号)「増税マニア達は現実離れ」
12/7/23(第717号)「吉川洋東大教授の文章」
12/7/16(第716号)「消費税増税が待ち遠しい?」
12/7/9(第715号)「消費税は「鬼門」」
12/7/2(第714号)「増税騒動の感想」
12/6/25(第713号)「今日の諸情勢の変化」
12/6/18(第712号)「世界中「展望がない」」
12/6/11(第711号)「schole(スコレー、暇)の話」
12/6/4(第710号)「ギリシャ化の話」
12/5/21(第709号)「単式簿記の世界」
12/5/14(第708号)「文春と朝日の関係」
12/4/30(第707号)「続・増税論議と文芸春秋」
12/4/23(第706号)「増税論議と文芸春秋」
12/4/16(第705号)「増税論議と政界」
12/4/9(第704号)「増税派の人々」
12/4/2(第703号)「松下政経塾政治家と増税」
12/3/26(第702号)「英国の永久債発行」
12/3/19(第701号)「過去の号の修正」
12/3/12(第700号)「本誌700号に寄せて」
12/3/5(第699号)「投資顧問AIJの事件」
12/2/27(第698号)「橋下維新政党へのコメント」
12/2/20(第697号)「地方自治体と通貨」
12/2/13(第696号)「デフレ経済下での増税」
12/1/30(第695号)「無税国家への道」
12/1/23(第694号)「世界的な金利低下」
12/1/16(第693号)「過剰貯蓄による災い」
12/1/9(第692号)「バーチャルな話」


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