経済コラムマガジン 平成9年2月10日より
経済コラムマガジン


来週は夏休みにつき休刊、次回号は8月26日を予定

13/8/10(765号)
消費税増税は絶対に避ける道

  • とにかく名目GDPの増大が必須
    日本の財政の債務累積問題の解決に、これまで筆者は「政府紙幣の発行」「永久債(コンソル債)の発行とその日銀買入れ」「日銀による日本国債の徹底的な買上げ」といった政策を提示してきた。さらに黒田日銀の異次元の金融緩和政策を見て、日銀の購入した日本国債と政府の債務との相殺、つまり国債の消却を新たに加えた。

    第一の「政府紙幣の発行」は単純で分かりやすい。政府は巨額な政府紙幣を発行し、これを日銀の口座、つまり国庫に入金すれば良い。これによって必要に応じ(政府の支出全般)日銀券を引き出せる(もちろんこの口座からの振込みも可能)。一方で、政府は紙幣発行益(または貨幣鋳造益)を計上することになる。

    ただ09/2/9(第557号)「政府紙幣(貨幣)論の急な盛上がり」で述べたように、現実的には巨額紙幣発行のためには法改正(「通貨の単位および貨幣の発行等に関する法律」)が必要になる。ただこの政府紙幣の発行に対して、財政再建論者から物凄い反対が出ることは確実である。「日本の財政は危機的(もちろん大嘘・・金利の動きを見れば一目瞭然)」と言ってきた彼等にとって、この政府紙幣発行は最大の「天敵」であろう。


    その点第二の「永久債(コンソル債)の発行とその日銀買入れ」の方が抵抗は小さいと考えられる。いまでも超長期の国債を発行しているのだから、この国債の償還期限をさらに延せば良い。究極の形が永久債ということになる。また一歩譲って、100年、200年といった超長期でもかまわない。

    100年債は他の国で発行されているし、永久債は戦前の英国でも発行されていた。超長期の国債なら毎年の償還を気にする必要はない。ましてや日銀が買うとなれば、市場での消化なんて問題はない。


    第三の「日本国債の買上げ」は昔からやっていたことである。そして「日銀による日本国債の徹底的な買上げ」は、黒田日銀による異次元の金融緩和によってさらにやり易くなった。財政再建論者は、この「日銀による日本国債の徹底的な買上げ」を一番警戒している。彼等はこれに対して「財政ファイナンス(財政赤字の補填)」とみなされると、日本国債が投売りされるといった根拠のない警告を発している。ところが日本はこの「財政ファイナンス」をずっとやってきたのだから(日銀は立場上これを否定しているが)、これも実にばかばかしい話である(先週号の「財政再建論者は「カマトト」)。

    しかし筆者が列挙した政策を必ずしも実行される必要はない。このような説明によって日本の財政への正しい理解が進むことが大事である。もし日本の財政が正しく理解されれば、「日本の財政が危機」といったまやかしに騙される者はいなくなるはずである。


    筆者の一番言いたいことは、まず安倍政権が目指すべきは、とにかくデフレ経済からの脱却策を講じることである。そしてこれに沿った財政・金融政策に全力で取組むことである。たしかに日本の財政が問題とされているが、金利の動きを見れば分かるように、所詮、これはバーチャルなものであり、解決策も上記に示したようにいくつもある。


    とにかく名目のGDPを大幅に伸ばすことが最重要である。10/3/8(第606号)「税収と名目GDPの関係」で述べたように、デフレの進行によって名目GDPは縮小してきた。縦軸に税収、横軸に名目GDPのグラフを描けば、税収と名目GDPの関係は放物線で示される。

    現状の均衡点はグラフの左側に寄っている。これによって今日、多少名目GDPが増えても税収はあまり伸びない。名目GDPが税収に対する弾性値が小さい水準にあるからである。これを弾性値が大きい右側へ移動、つまりとにかく名目GDPを大幅に伸ばす必要がある。

    これには金融政策と財政政策が考えられる。しかし金融政策だけでは弱く、どうしても財政政策を伴う必要がある。今は、たとえ国債の発行を増やしても名目GDPを増大させることが必須と考える。反対に消費税増税なんてとんでもない話である。万が一でも増税が実施されれば、また日本経済はジリ貧街道に戻ることになる。


  • 財政再建派に焦り?
    デフレ脱却を目指す安倍政権にとって、消費税増税は考えられない選択である。もし需要が供給を大幅に上回り、これによる物価上昇が問題になり、物価を抑えるために消費に税を課すというのなら解る。しかし状況は全く逆である。

    また日本の国債を買う者がいなくて、金利が暴騰しているということもない。それどころか長期金利は、0.7%台(8月9日0.755%)と歴史的な低水準にある。ましてや日銀が国債を買うと言っているのだから、経済活動に支障のあるような金利上昇は考えられない。


    このように今日、消費税を上げる必要性は全くない。ところがどうしても消費税増税に執着している勢力があり、またこれに協力する人々がいて、一生懸命増税ムードを煽っている。筆者が憤るのは、その人々の話のほとんどがいい加減であり、嘘ということである。

    例えば先週号の池上彰氏の話や13/6/24(第759号)「アベノミクスを牽制する人々」で取上げた北坂真一同志社大学教授の「金利安定へ歳出削減を」などである。先日のテレビ東京系モーニングサテライトでは、エコノミストらしい女性コメンテータが「もし日本が消費税増税に失敗したなら、円高に見舞われる」と明らかに疑わしい話をしていた。通説では、消費税増税がなくなれば日本国債の信認がなくなり、国債が売られ資金が日本から逃げ出し円安になるというものである。実際、民主党政権が消費税増税案の成立に動いていた時、為替は円高で推移していた。

    たしかに短期的には市場参加者の中のボス的存在の胸三寸で円相場は決まると思われる。国債の信認が問題と言えば円安になろうし、消費税増税がなくなって日本は景気が良くなると思えば資金が海外から流入し円高になる。筆者は、今の段階では、為替市場について断定的なことはなかなか言えないと思っている。ただ日本が景気が良くなるという観測で資金の流入が増え円高となる場合は、ある程度しょうがないと考える。為替介入を躊躇せざるを得ない今日、これに対抗するには日銀の一段の金融緩和しかないと思っている。


    マスコミの世論調査の結果も疑わしいものばかりであった。野田政権の増税法案の成立過程において、どのマスコミの世論調査でも消費税増税に賛成する者が過半数を越えていた。率直に、筆者はこれが信じられなかった。たしかに質問方法を工夫すれば、賛成者を増やすよう操作することができる。しかし過半数を越える賛成者までは考えられないことである。ただほとんどのマスコミが「日本の財政は危機的とか消費税増税は既定路線」と言ってきたことが、世論調査に影響していたとも考えられる。

    ところが大半の有権者が望んでいたとされる消費税増税を成し遂げたのに、衆議院選挙で野田民主党は大敗(ボロ負け)したのである。消費税に関する世論調査が操作されていたと見る他はないであろう。やはり有権者は、消費税増税に強い拒否感を持っていると認識する必要がある。


    最近、TBSの世論調査で消費税増税に反対する者が58%という結果が出ていた。やっと本当らしい数字が出てくるようになったと思った。しかし筆者は、これでも反対が少ないと感じている。おそらく昨年の各マスコミが公表していた過半数の増税賛成という数字が、いまだに影響しているのであろう(多くの国民と政治家はこれに騙されている)。筆者の感触では、7割の人々は増税に反対である。

    高く推移していた安倍内閣の支持率も、参議院選直後から下がり気味である。今後の最大のテーマが消費税増税ということならばこれも納得できる。実際、今回の選挙で消費税増税を止める政治勢力がなくなったのである。しかしこの状況で、来年4月からスケジュール通り消費税を上げたならば、次の国政選挙から自民党はとんだ苦戦を強いられることになる。


    最近のマスコミによる世論操作は「増税が見送られれば日本国債の価格は暴落する」などと酷すぎる。またIMFが消費税増税を促すようなコメントを盛んに行っている。別に日本はIMFから金を借りているわけではなく、またこれだけ巨額の外貨準備を貯えているのだから将来借入れることも考えられない。IMFの言動はまことに奇妙である。

    日本はIMFの大口出資国であり、窓口は財務省である。昔からIMF幹部の日本への発言が、財務省が作ったシナリオ通りであることは有名な話である。今回の声明も、数カ月前から打合わせてきたものと見られる。ただ15%まで上げるべきとまでコメントしたことは余計なことであった。また消費税増税が国際公約と言った唐突なセリフが頻繁に聞かれるが、これも稚拙な嘘と見ている(誰かのアドバイスによって野田前首相が勝手に自分から言い出したのだろう)。


    最近の消費税増税を推進している人々の発言がこのように常軌を逸している。この背景に消費税増税がスンナリ行かないという事情が発生し、財政再建派に焦りが生じているのではと感じられる。これまで増税が止められる可能性が10%だったのが、20〜30%ぐらいまで上がっていることも有り得る。

    増税すべきか否かの判断は、選挙で選ばれた政治家が行うべきである。しかしここ20年、その時の雰囲気で選挙結果が大きくブレ続け、政権政党と政治家がコロコロ変わった。政治家が官僚から軽んじられるのも無理はない。ただ緊迫を続ける国際情勢を考えれば、政治の力が低下し続けることは、日本の国益にも大きなマイナスである。しっかりした政治基盤を作るためには、余計な消費税増税なんて絶対に避ける道である。



来週は、夏休みにつき休刊である。次回号は8月26日を予定している。



13/8/5(第764号)「消費税増税を促す包囲網」
13/7/26(第763号)「参議院選の結果を考える」
13/7/15(第762号)「アベノミクスの評価他2件」
13/7/8(第761号)「デフレに興味のない大新聞」
13/7/1(第760号)「日経新聞の論説の特徴」
13/6/24(第759号)「アベノミクスを牽制する人々」
13/6/17(第758号)「長期金利上昇で騒いでいる人々」
13/6/10(第757号)「雲行きが怪しいデフレ脱却」
13/6/3(第756号)「財政再建論者のサークル」
13/5/27(第755号)「財政の2010年問題」
13/4/29(第754号)「国民一律の年金」
13/4/22(第753号)「日銀のリスク資産購入」
13/4/15(第752号)「異次元の金融政策」
13/4/8(第751号)「久しぶりの「朝まで生テレビ」」
13/4/1(第750号)「不穏な中国と日本の安全保障」
13/3/25(第749号)「TPPの基本は友好」
13/3/18(第748号)「日本の雪崩的輸出の歴史」
13/3/11(第747号)「TPP交渉と日本警戒論」
13/3/4(第746号)「TPPの実態」
13/2/25(第745号)「有り得る軍事的衝突」
13/2/18(第744号)「群盲象をなでる」
13/2/11(第743号)「まず印紙税の廃止」
13/2/4(第742号)「「構造改革」と「規制緩和」の本当の姿」
13/1/28(第741号)「意志を持った「やじろべい」」
13/1/21(第740号)「金融政策に対する提言」
13/1/14(第739号)「年頭にあたり」
12/12/31(第738号)「中央銀行の働きの変化」
12/12/24(第737号)「日銀とFRBの違い」
12/12/17(第736号)「師走の総選挙の感想」
12/12/10(第735号)「建設国債引受け発言の波紋」
12/12/3(第734号)「先進国だからデフレ」
12/11/26(第733号)「総選挙の行方」
12/11/19(第732号)「残る経済成長路線」
12/11/12(第731号)「先進国における経済成長」
12/11/5(第730号)「投資と経済成長」
12/10/29(第729号)「プラスアルファーの議論」
12/10/22(第728号)「アラン・ブラインダー教授の文章」
12/10/15(第727号)「バランスを欠いた報道」
12/10/8(第726号)「中国からの撤退も視野に」
12/10/1(第725号)「中国の反日暴動に対する感想」
12/9/24(第724号)「本誌の中国問題ダイジェスト」
12/9/17(第723号)「技術流出と日本の伝承文化」
12/9/10(第722号)「技術流出の現状」
12/9/3(第721号)「知的所有権の話」
12/8/27(第720号)「最近の出来事」
12/8/6(第719号)「御用学者の話」
12/7/30(第718号)「増税マニア達は現実離れ」
12/7/23(第717号)「吉川洋東大教授の文章」
12/7/16(第716号)「消費税増税が待ち遠しい?」
12/7/9(第715号)「消費税は「鬼門」」
12/7/2(第714号)「増税騒動の感想」
12/6/25(第713号)「今日の諸情勢の変化」
12/6/18(第712号)「世界中「展望がない」」
12/6/11(第711号)「schole(スコレー、暇)の話」
12/6/4(第710号)「ギリシャ化の話」
12/5/21(第709号)「単式簿記の世界」
12/5/14(第708号)「文春と朝日の関係」
12/4/30(第707号)「続・増税論議と文芸春秋」
12/4/23(第706号)「増税論議と文芸春秋」
12/4/16(第705号)「増税論議と政界」
12/4/9(第704号)「増税派の人々」
12/4/2(第703号)「松下政経塾政治家と増税」
12/3/26(第702号)「英国の永久債発行」
12/3/19(第701号)「過去の号の修正」
12/3/12(第700号)「本誌700号に寄せて」
12/3/5(第699号)「投資顧問AIJの事件」
12/2/27(第698号)「橋下維新政党へのコメント」
12/2/20(第697号)「地方自治体と通貨」
12/2/13(第696号)「デフレ経済下での増税」
12/1/30(第695号)「無税国家への道」
12/1/23(第694号)「世界的な金利低下」
12/1/16(第693号)「過剰貯蓄による災い」
12/1/9(第692号)「バーチャルな話」
11/12/19(第691号)「シミュレーションモデルの話」
11/12/12(第690号)「財政破綻のすすめ」
11/12/5(第689号)「「騒ぎ屋」の時代」
11/11/28(第688号)「技術進歩の恩恵」
11/11/21(第687号)「避けられる根本問題」
11/11/14(第686号)「物事の本質」
11/11/7(第685号)「組織の異端児的存在」
11/10/31(第684号)「組織の研究」
11/10/24(第683号)「気乗りしないTPPの話」
11/10/17(第682号)「解決策はユーロ離脱か」
11/10/10(第681号)「ポール・クルーグマン教授の変心」
11/10/3(第680号)「現実論者VS観念論者」
11/9/26(第679号)「世界的な「日本化」」
11/9/12(第678号)「欧州発のリーマンショック」
11/9/5(第677号)「野田政権の成立」
11/8/29(第676号)「円相場の今後の動き」
11/8/22(第675号)「欧米経済の変調」
11/8/15(第674号)「脱・反原発派の人々」
11/8/8(第673号)「食品安全委員会の問題」
11/8/1(第672号)「タウンミーティングの報告」
11/7/25(第671号)「意味の解らない暫定基準値」
11/7/18(第670号)「政府が明らかにすべきこと」
11/7/11(第669号)「放射線防護の専門家」
11/7/4(第668号)「ダイオキシンとプルトニウム」
11/6/27(第667号)「付加価値を生まない発電」
11/6/20(第666号)「付加価値と発電」
11/6/13(第665号)「ポスト原発はやはり原発」
11/6/6(第664号)「菅政権に対する不信任案騒動」
11/5/30(第663号)「ニューニューサンシャイン計画」
11/5/23(第662号)「原発と電力会社の経営」
11/5/16(第661号)「原発推進派と反・脱原発派」
11/5/2(第660号)「菅政権の迷走」
11/4/25(第659号)「放射線は身体に良い?」
11/4/18(第658号)「山を越えたか?」
11/4/11(第657号)「原子力の専門家」
11/4/4(第656号)「本当に重大な事は何か」
11/3/28(第655号)「電力不足で表沙汰になった事実」
11/3/21(第654号)「東日本巨大地震」
11/3/7(第653号)「日本が貿易立国という誤解」
11/2/28(第652号)「日本は本当に貿易立国?」
11/2/21(第651号)「関税以外の貿易障壁」
11/2/14(第650号)「TPPに関する推理」
11/2/7(第649号)「菅首相の消費税増税」
11/1/31(第648号)「モラルハザードの話」
11/1/24(第647号)「問題は分配ではない」
11/1/17(第646号)「永久債の日銀引受け」
11/1/10(第645号)「日本の経済成長シナリオ」
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