経済コラムマガジン 平成9年2月10日より
経済コラムマガジン




13/7/15(762号)
アベノミクスの評価他2件

  • 参議院選におけるアベノミクスの評価
    今週は、今、筆者にとって関心がある事柄を三つばかり取上げる。やはり一つ目は21日に投票・開票される参議院選の行方である。今のところ与党が優位という予想は動かない。しかし注目されるのは与党、特に自民党の勝ち方である。

    自民党が大勝して、はたして衆参のねじれが解消されるかがポイントである。今回は自民党が支持を戻しているというより、民主党に投票していた無党派層の動向が結果を決める。棄権する者が多いと予想され、投票率はかなり低くなると思われる。投票率が低いことが、結果にどのような影響を与えるか注目される。


    勝敗を決めるのは一人区での勝敗である。一つの決め手は、経済、つまりアベノミクスの評価ということになろう。しかし実際のところ、わずか数パーセントの所得の増減では(今のところのアベノミクス効果)、一般の人々は景気の動向を実感として分からない。それに対して誰にも分かりやすい一つのバロメータが株価の動きである。人々は、この分かりやすい株価の動きで経済の状態をある程度判断しがちと言える。景気ウォッチャーの景気判断もこの株価の動きがかなり影響していると思われる。

    株価は、安倍政権発足時(正確には安倍政権の成立が予想された時点)から半年くらい一貫して上昇し続け、5月に一旦天井を打った。その後、株価は短期間で大きく下落した。しかし6月初旬の12,000円台を底に再び上昇に転じた。選挙当日までこの株価上昇が続けば、当然、自民党に有利に働くものと考えられる。

    また日本の株価の動きは、円相場に左右される面が強い。実際、円安の進行とともに株価が上昇してきた。5月後半からの株価下落も円安傾向が一服となったことが影響している。


    そこで実際に株式や不動産といった資産の価格の動きがどの程度実態経済に影響(いわゆる資産効果)を与えるか考えてみる。筆者は、株式投資がそれほど浸透していない日本においては、株価上昇による資産効果は限られていると思っている。むしろ米国のように株式で資産を運用している人々が多い国の方が、この資産効果は大きくなる。

    ところがこのような米国であっても、株式の資産効果より不動産の資産効果の方が大きいと言われている。米国では、家屋などの不動産の価格が底入れしている。ケース・シラー指数に見られるように、毎月、対前年比で12,3%程度上昇している。失業率に見られるように、米国の雇用情勢は依然厳しい状態が続いているが、小売売上高が堅調に推移しているのもこの資産効果があると考えられる。


    株価の上昇以外では、日本の実態経済に顕著な変化はまだ現れていない。しかしやっと4月頃から公共投資に動きが出てきた。対前年同月比で、4月28.6%、5月24.8%、6月21.7%の増加となった。2,3月がマイナスだったことを考えれば、ようやくアベノミクスの大きな武器となる大型補正予算の効果が出てきたと判断しても良い。この影響はこれから徐々に出てくるものと筆者は見ている。

    今のところアベノミクスを支えているのは、この公共投資の増加と円安である。しかし公共投資予算も年末には底をつく。また円相場は、もし消費税増税となれば、再び円高に反転すると筆者は見ている。参議院選以降の注目点は、次の補正予算と消費税増税の実施の判断である。


    もし自民党がある程度の勝利を収めた場合、安倍総理への求心力は増すものと考えられる。大勝でもすれば、安倍政権の長期政権が見えてくるというものである。13/1/28(第741号)「意志を持った「やじろべい」」で述べた通り、アベノミクスは色々な政治勢力の意見を反映している。中にはいい加減なものも混じっていたり、矛盾する政策もある(意味のないプライマリーバランスの回復などが典型)。しかし安倍政権が色々な政治勢力に支えられて成立したのだからこれもしょうがない。

    しかし安倍政権が長期政権となれば、実施したところの各々の政策の善し悪しも自ずと分かってくると言うものである。筆者は、公共投資を始めとした財政支出と円安、そしてこれらを支える金融政策がアベノミクスの要諦と認識している。そのことを見定めるためにも、安倍自民党の勝利が良いと見ている。最も警戒する事柄は、自民党勝利の予想に対する「慢心」と「驕り」である。


  • 勘違い知事
    次のテーマは中国経済の行方である。それにしても13/2/18(第744号)「群盲象をなでる」で述べたように、外部からは中国経済の実態がよく見えない。それどころか中国の首脳部さえどこまで正確な情報を把握しているのかが不明である。おそらく7月15日(つまり今週の経済コラムマガジンの発行日)に4〜6月の中国のGDPが公表されると思われる。

    米国のGDP速報値が7月の下旬、日本のGDP速報値が9月中旬であるから、いかに中国の公表が早いのかが分かる。さらに米国や日本では改定値、さらに確定値が公表されるのに対して、中国はそのような修正を行わない。つまり中国の公表数値は、実態を示すというより、政治的な経済数値のお披露目に過ぎない。

    1〜3月が年率で7.6%の成長であったから、筆者は4〜6月は7.4%か7.5%と予想している。世界は、中国経済が低迷していると認識しているので、これ以上良い数字では信用をなくす。しかし低過ぎる数字は別の問題を起こす。したがって際どくて微妙な数字になると筆者は考えている。これでもし低い数字(例えば3〜4%)ならば、中国の政権に何らかの大きな変化があったと勘ぐる他はない。


    中国経済に「7月危機説」が囁かれていた。どうも理財商品の満期が6月末に集中していることが影響していたと筆者は考えている。中国は表向きの預金金利が規制されているため、銀行は高金利の理財商品を発行して資金を集めている。この資金は高利で地方政府や民間企業に貸付けられている。昔の日本の金融債(ワリコーやリッチョウなど)に似ているが、金融債のような厳しい制限はない。しかも満期が6ヶ月未満と極めて短い。

    理財商品は高金利であるため、運用先にも高金利を求めている。資金の主な融資先は不動産関連とその他の民間企業である。しかし不動産価格はほぼ天井に達していて、また民間企業の業績も悪化している。一応、6月末の資金繰りはクリアできたが、6ヶ月以内に次の償還集中日を迎えることになる。だいたいこの理財商品の発行額の総額がはっきりしていない。中国政府の公表では133兆円であるが、格付け機関は211兆円と見ている。


    しかし中国政府の対策は限られている。財政を出動したり金融を緩和すれば、さらにバブルが膨らむ。さらに中国政府のコントロールが効かない大量の資金の動きが考えられる。中国はまさに「渾沌」の状態と見られる。

    しかし僅かな成功体験を基にいまだに未練がましく中国進出活動を続けている日本の民間企業が多い。特に大きな世界の流れが見えない技術系の経営者が実権を握っている企業に目立つ。1990年頃の土地バブル時代の最終局面を思い出す(この頃になってもまだ目を醒していない経営者がけっこういた)。


    三つ目が原発再稼動に向けての原子力規制委員会への電力各社からの申請にまつわる話である。この動きの中で、筆者が極めて不快に思ったのは新潟の泉田県知事の東電トップに対する対応である。たしかに東電のこれまでの動きに問題がなかったわけではない。しかし泉田県知事の高飛車な態度に筆者は強い怒りを感じた。

    原発再稼動に関しては慎重に進めるべきである。しかし以前からこの知事は原発に関して独特の考えを披露し、一歩も引下がらない態度であった。震災ガレキの焼却にも頑に反対した。この他では北陸新幹線の建設費負担でいちゃもんを付けていた。


    過去において、この知事に対して筆者が一番に不快感を持ったのは、街の中心部にある万代小学校のかなり広い跡地を、新潟市長と一緒になって中国領事館の用地として中国に売り払おうとしたことである。日中関係が悪化しているにもかかわらず、治外法権が及ぶ領事館用地として売却を試みたのである。ちなみに中国は外国人による土地の保有は絶対に認めない。さらに驚くことにこの知事は市長と一緒になって、新潟の中心部に中華街を造ろうと動いていた。

    この知事は元通産省官僚で資源エネルギー庁にもいたことがある。このような経歴もあってか、民間企業である東電を見下していると見られる。しかし彼のような考え(民間を見下す)が普通ならば、官僚出身の知事や国会議員は考えものである。


    東日本大震災が起った際、全く機能しなかったのが都道府県レベルの行政単位であった。ところが復興が始まるとこの役ただずの県が前面にしゃしゃり出てきた。例えば宮城の県知事は唐突に復興税が必要と発言し始めた。ちなみに筆者は、大震災なんてめったにないことなのだから、超長期の国債を発行して財源にすれば良いと主張した。さらにこの超長期の国債を日銀が買えば、国民負担はなくなる。

    筆者は、ITや交通が発達した今日、都道府県といった行政単位は不要と思っている(実際の民意が国に伝わりにくくなるなど、むしろ邪魔)。もし残すのなら、権限をできる限り市町村に移すべきと考える(小さな市町村は受け皿として周辺と組合を作る)。都道府県の長は国が任命すれば良い。実際、知事の立候補者について選挙民はほとんど何も知らない。明治の廃藩置県でも適当に「県」という行政区分を作ったに過ぎない。

    へたに選挙で知事を選ぶから、知事の中には「自分は殿様になった」と勘違いする者が現れる。この勘違い知事達はお城と見間違うような県庁庁舎を建てたがる。また泉田知事を見ていると、「道州制」なんて狂気の沙汰と考える。



今週、さらにバーナンキFRB議長の任期と米国の金融政策の関係を取上げたかったが、これは後日にする。来週は21日の参議院選の結果を取上げる。したがって発行日は23日頃を予定している。



13/7/8(第761号)「デフレに興味のない大新聞」
13/7/1(第760号)「日経新聞の論説の特徴」
13/6/24(第759号)「アベノミクスを牽制する人々」
13/6/17(第758号)「長期金利上昇で騒いでいる人々」
13/6/10(第757号)「雲行きが怪しいデフレ脱却」
13/6/3(第756号)「財政再建論者のサークル」
13/5/27(第755号)「財政の2010年問題」
13/4/29(第754号)「国民一律の年金」
13/4/22(第753号)「日銀のリスク資産購入」
13/4/15(第752号)「異次元の金融政策」
13/4/8(第751号)「久しぶりの「朝まで生テレビ」」
13/4/1(第750号)「不穏な中国と日本の安全保障」
13/3/25(第749号)「TPPの基本は友好」
13/3/18(第748号)「日本の雪崩的輸出の歴史」
13/3/11(第747号)「TPP交渉と日本警戒論」
13/3/4(第746号)「TPPの実態」
13/2/25(第745号)「有り得る軍事的衝突」
13/2/18(第744号)「群盲象をなでる」
13/2/11(第743号)「まず印紙税の廃止」
13/2/4(第742号)「「構造改革」と「規制緩和」の本当の姿」
13/1/28(第741号)「意志を持った「やじろべい」」
13/1/21(第740号)「金融政策に対する提言」
13/1/14(第739号)「年頭にあたり」
12/12/31(第738号)「中央銀行の働きの変化」
12/12/24(第737号)「日銀とFRBの違い」
12/12/17(第736号)「師走の総選挙の感想」
12/12/10(第735号)「建設国債引受け発言の波紋」
12/12/3(第734号)「先進国だからデフレ」
12/11/26(第733号)「総選挙の行方」
12/11/19(第732号)「残る経済成長路線」
12/11/12(第731号)「先進国における経済成長」
12/11/5(第730号)「投資と経済成長」
12/10/29(第729号)「プラスアルファーの議論」
12/10/22(第728号)「アラン・ブラインダー教授の文章」
12/10/15(第727号)「バランスを欠いた報道」
12/10/8(第726号)「中国からの撤退も視野に」
12/10/1(第725号)「中国の反日暴動に対する感想」
12/9/24(第724号)「本誌の中国問題ダイジェスト」
12/9/17(第723号)「技術流出と日本の伝承文化」
12/9/10(第722号)「技術流出の現状」
12/9/3(第721号)「知的所有権の話」
12/8/27(第720号)「最近の出来事」
12/8/6(第719号)「御用学者の話」
12/7/30(第718号)「増税マニア達は現実離れ」
12/7/23(第717号)「吉川洋東大教授の文章」
12/7/16(第716号)「消費税増税が待ち遠しい?」
12/7/9(第715号)「消費税は「鬼門」」
12/7/2(第714号)「増税騒動の感想」
12/6/25(第713号)「今日の諸情勢の変化」
12/6/18(第712号)「世界中「展望がない」」
12/6/11(第711号)「schole(スコレー、暇)の話」
12/6/4(第710号)「ギリシャ化の話」
12/5/21(第709号)「単式簿記の世界」
12/5/14(第708号)「文春と朝日の関係」
12/4/30(第707号)「続・増税論議と文芸春秋」
12/4/23(第706号)「増税論議と文芸春秋」
12/4/16(第705号)「増税論議と政界」
12/4/9(第704号)「増税派の人々」
12/4/2(第703号)「松下政経塾政治家と増税」
12/3/26(第702号)「英国の永久債発行」
12/3/19(第701号)「過去の号の修正」
12/3/12(第700号)「本誌700号に寄せて」
12/3/5(第699号)「投資顧問AIJの事件」
12/2/27(第698号)「橋下維新政党へのコメント」
12/2/20(第697号)「地方自治体と通貨」
12/2/13(第696号)「デフレ経済下での増税」
12/1/30(第695号)「無税国家への道」
12/1/23(第694号)「世界的な金利低下」
12/1/16(第693号)「過剰貯蓄による災い」
12/1/9(第692号)「バーチャルな話」
11/12/19(第691号)「シミュレーションモデルの話」
11/12/12(第690号)「財政破綻のすすめ」
11/12/5(第689号)「「騒ぎ屋」の時代」
11/11/28(第688号)「技術進歩の恩恵」
11/11/21(第687号)「避けられる根本問題」
11/11/14(第686号)「物事の本質」
11/11/7(第685号)「組織の異端児的存在」
11/10/31(第684号)「組織の研究」
11/10/24(第683号)「気乗りしないTPPの話」
11/10/17(第682号)「解決策はユーロ離脱か」
11/10/10(第681号)「ポール・クルーグマン教授の変心」
11/10/3(第680号)「現実論者VS観念論者」
11/9/26(第679号)「世界的な「日本化」」
11/9/12(第678号)「欧州発のリーマンショック」
11/9/5(第677号)「野田政権の成立」
11/8/29(第676号)「円相場の今後の動き」
11/8/22(第675号)「欧米経済の変調」
11/8/15(第674号)「脱・反原発派の人々」
11/8/8(第673号)「食品安全委員会の問題」
11/8/1(第672号)「タウンミーティングの報告」
11/7/25(第671号)「意味の解らない暫定基準値」
11/7/18(第670号)「政府が明らかにすべきこと」
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11/6/27(第667号)「付加価値を生まない発電」
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11/6/13(第665号)「ポスト原発はやはり原発」
11/6/6(第664号)「菅政権に対する不信任案騒動」
11/5/30(第663号)「ニューニューサンシャイン計画」
11/5/23(第662号)「原発と電力会社の経営」
11/5/16(第661号)「原発推進派と反・脱原発派」
11/5/2(第660号)「菅政権の迷走」
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11/4/11(第657号)「原子力の専門家」
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11/3/28(第655号)「電力不足で表沙汰になった事実」
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