経済コラムマガジン 平成9年2月10日より
経済コラムマガジン




12/3/12(700号)
本誌700号に寄せて

  • 本誌の変遷
    今週号がちょうど700号ということなので、特別の企画を検討したが特に思い浮かばない。そこで今週は本誌を筆者自ら客観的に眺め、これを分析し感想を述べることにする。また先に本誌の変遷と経緯について少し述べる。たしかにこのようなことは初めてである。


    本誌のスタート時は、筆者はそのうちテーマもなくなるだろうから100号くらいで終わりだなあと思っていた。ところが本誌をメールマガジンで発行しようという人が現れ、その後も続けることになった。画像を使わないといった本誌のスタイルも、このメルマガを意識したものである。メールマガジンの発行部数は5,000部を越えるところまで行ったが、その後伸び悩んだ。

    メルマガの発行主体はある新興零細企業であったが、残念ながら2005年あたりで倒産した。これによってメールアドレスが失われ、メルマガの発行は中断した。日本経済発展のためベンチャー企業の育成が必要と言われて久しいが、小さな企業が成長することが難しいことをこの出来事が示している。

    話はちょっとそれるが、この会社だけでなく筆者の周りのベンチャー企業は次々と破綻している。評論家や日経新聞は、ベンチャー育成のために税制と金融の整備、そして規制緩和が必要と的外れな事を言っている。しかしそのような事より日本経済全体の成長が必要である。経済が大きくなることによって市場に「すきま」が生まれ、新興ベンチャー企業が生き延びる余地ができるのである。今日のような低成長が続けば、大企業が残されたわずかな「すきま」まで進出し、中小零細企業は苦しい立場に置かれることになる。


    本誌にとって大きかったのは、筆者が2002年頃から丹羽経済塾やそれから発生した日本経済復活の会に参加したことである。ここでは政府貨幣・紙幣の発行や積極財政についての見識を深めることができた。またこれらの活動を通じ、様々な人々と意見交換を行ったり、多くの政治家や要人と呼ばれる人々の話を直接聞く機会があり、貴重な情報を得ることができた。

    本誌を綴ることをアウトプットとすれば、色々な情報得ることはインプットになる。良いアウトプットを続けるには、良いインプットが必要である。今後の課題は、どれだけ良質のインプットに接し続けられるかということになる。このためにも筆者達も何らかのアクションを少し起す必要があると思われる。仲間内でもそのような事を話し合っている。


    メルマガが発行されていた時には、本誌の読者数について客観的な数字はあったが、現在、読者数がどの程度なのかを把握していない。ただ本誌の場合、本誌の内容をそっくり掲載しているサイトがいくつかあるようなので、全体の読者数ははっきり分らない。

    メルマガの発行部数は大きく伸びる時があり、人々がどのようなテーマに興味を持つのかある程度分かった。読者数が大きく伸びたテーマの一つが道路公団の民営化を扱ったものであった。当時、「高速道路は赤字垂れ流しであり早く民営化しなければとんでもないことになる」と言った意見が支配していた。

    これに対して本誌は、猪瀬氏などが道路公団の財務諸表の見方を間違っていることを指摘した。また長期金利を4%で設定するなどデタラメの収支予測を基に民営化論議がなされていたことを問題にした。高速道路は赤字どころか大儲けしていたのである(世界一高い料金を取りあれだけ混んでいるのに赤字のはずがないだろう)。ところが当時は赤字の高速道路を外資に売って財政再建に寄与させるといったとんでもない意見まで飛出していた。

    今日、一部の高速道路で無料化が実施されたり、値下げが実施されている。これは本誌の主張を裏付けるものである。ちなみに筆者は高速道路を無料にすることはないがある程度までは値下げすることは可能と考える。


  • 本誌の認知度
    本誌の影響力について述べる。「そもそも本誌は筆者が言いたいことを述べているで、読者の反応をそれほど気にしていない」と言い切ればそれは嘘になる。当然、反響があれば筆者としても嬉しいものである。ただ本誌の反響や影響力を客観的に知ることは難しい。

    おそらく一般の社会での本誌の認知度はほぼゼロではあるが、全くのゼロではないと言ったところであろう。わずかに影響力があるかもしれないといった程度と認識している。ただ本誌はネットの世界ではある程度の認知度があり、それに応じたの影響力もあるかもしれないと思っている。例えば筆者が丹羽経済塾に参加したのもネットを通じたものであった。


    筆者は、本誌「経済コラムマガジン」のネット上の存在感を調べるために、色々なキーワードの検索を行ってみた。検索結果、どの程度の位置に本誌が表示されているのか調べたのである。これによって本誌のネット上の存在感というものがおぼろげに分かったような気がする。

    さすがに「政府貨幣」「政府紙幣」ではかなり上位に表示されている。また「積極財政」でもかなり上位に表示されている。一方、「構造改革」や「ケインズ」では本誌の表示は現れない。

    ところが一歩進んで「構造改革派」や「ケインズ政策」とキーワードを少し変えるとかなり上位に表示される。また「デフレ」の場合は10ページ目あたりと中途半端なところに表示されるが(検索結果が数百万なので上位と言えば上位であるが)、「デフレギャップ」なら1ページ目に表示される。


    他のキーワードでも検索したが、思い掛けない言葉で本誌が上位に表示されている。ただ筆者はグーグルやヤフーといった検索サーバのアルゴリズムを正確には知らない。ただネット上で引用が多いサイトが上位に表示される傾向があるという話だけは聞いたことがある。また15年の長い間続けてきたことも影響しているかもしれない。

    キーワード検索の結論としては、本誌のネット上の存在感は、総じて筆者が思っていたよりあるような気がする。これによって本誌をもう少し続けても良いのではないかと多少勇気付けられる。しかしここに大きな落とし穴が二つあると筆者は見ている。


    一つは本誌が専門にしている「経済」の分野は全く人気がないことである。人々は自分の生活を取巻く経済については関心が強い。しかし国全体の経済、つまりマクロ経済に興味がある人は限定されている。出版不況の中で一番売れないのが「政治」関連であり、次が「経済」という話を聞いたことがある。また「経済」といっても売れるのはサバイバルに関したものだけでということである。

    ネット上でも人々は「芸能」や「スポーツ」、あるいは「事件」といったものに興味を持つもので、これだけ重要なのに「経済」、特にマクロ経済にはほとんど関心がない。つまりネット検索で多少上位に表示されていても、社会的な影響力は極めて小さいということである。このような認識が必要と筆者は常に思っている。


    もう一つの落とし穴は、本誌が上位に表示されているキーワード検索では、筆者が昔から知っている人々のサイトも上位に表示されているケースが目立つことである。具体的には丹羽経済塾や日本経済復活の会などのメンバーであり、手っ取り早く言えば昔からの仲間のサイトである。

    どうも新しい人々のサイトがほとんど増えていないと見られる。つまり丹羽経済塾が発足して10年以上経つ。しかしマクロ経済に関心を持ち積極財政が必要と考えたり、さらに踏込んで政府貨幣や政府紙幣に興味を持つ人はほとんど増えていないことをこれは意味している。筆者を始め、我々はこの点を率直に認め反省が必要と考える。どうも戦略の練り直しが必要な段階に来ている思う。



来週も700号にまつわる話を続けたい。



12/3/5(第699号)「投資顧問AIJの事件」
12/2/27(第698号)「橋下維新政党へのコメント」
12/2/20(第697号)「地方自治体と通貨」
12/2/13(第696号)「デフレ経済下での増税」
12/1/30(第695号)「無税国家への道」
12/1/23(第694号)「世界的な金利低下」
12/1/16(第693号)「過剰貯蓄による災い」
12/1/9(第692号)「バーチャルな話」
11/12/19(第691号)「シミュレーションモデルの話」
11/12/12(第690号)「財政破綻のすすめ」
11/12/5(第689号)「「騒ぎ屋」の時代」
11/11/28(第688号)「技術進歩の恩恵」
11/11/21(第687号)「避けられる根本問題」
11/11/14(第686号)「物事の本質」
11/11/7(第685号)「組織の異端児的存在」
11/10/31(第684号)「組織の研究」
11/10/24(第683号)「気乗りしないTPPの話」
11/10/17(第682号)「解決策はユーロ離脱か」
11/10/10(第681号)「ポール・クルーグマン教授の変心」
11/10/3(第680号)「現実論者VS観念論者」
11/9/26(第679号)「世界的な「日本化」」
11/9/12(第678号)「欧州発のリーマンショック」
11/9/5(第677号)「野田政権の成立」
11/8/29(第676号)「円相場の今後の動き」
11/8/22(第675号)「欧米経済の変調」
11/8/15(第674号)「脱・反原発派の人々」
11/8/8(第673号)「食品安全委員会の問題」
11/8/1(第672号)「タウンミーティングの報告」
11/7/25(第671号)「意味の解らない暫定基準値」
11/7/18(第670号)「政府が明らかにすべきこと」
11/7/11(第669号)「放射線防護の専門家」
11/7/4(第668号)「ダイオキシンとプルトニウム」
11/6/27(第667号)「付加価値を生まない発電」
11/6/20(第666号)「付加価値と発電」
11/6/13(第665号)「ポスト原発はやはり原発」
11/6/6(第664号)「菅政権に対する不信任案騒動」
11/5/30(第663号)「ニューニューサンシャイン計画」
11/5/23(第662号)「原発と電力会社の経営」
11/5/16(第661号)「原発推進派と反・脱原発派」
11/5/2(第660号)「菅政権の迷走」
11/4/25(第659号)「放射線は身体に良い?」
11/4/18(第658号)「山を越えたか?」
11/4/11(第657号)「原子力の専門家」
11/4/4(第656号)「本当に重大な事は何か」
11/3/28(第655号)「電力不足で表沙汰になった事実」
11/3/21(第654号)「東日本巨大地震」
11/3/7(第653号)「日本が貿易立国という誤解」
11/2/28(第652号)「日本は本当に貿易立国?」
11/2/21(第651号)「関税以外の貿易障壁」
11/2/14(第650号)「TPPに関する推理」
11/2/7(第649号)「菅首相の消費税増税」
11/1/31(第648号)「モラルハザードの話」
11/1/24(第647号)「問題は分配ではない」
11/1/17(第646号)「永久債の日銀引受け」
11/1/10(第645号)「日本の経済成長シナリオ」
10/12/20(第644号)「難しい日本の経済成長」
10/12/13(第643号)「日本における新経済成長論」
10/12/6(第642号)「経済成長理論に対する批判」
10/11/29(第641号)「「ケインズはもう古い」?」
10/11/22(第640号)「不況下の反ケインズ政策」
10/11/15(第639号)「政治家に向かない職業」
10/11/8(第638号)「米政府に対するロビー活動」
10/11/1(第637号)「この日をつかめ(Seize the Day)」
10/10/25(第636号)「人民元安容認の経緯」
10/10/18(第635号)「本誌の中国経済の見方」
10/10/11(第634号)「「腹を括る」べき時」
10/10/4(第633号)「中国漁船の公務執行妨害」
10/9/20(第632号)「菅政権の行方」
10/9/13(第631号)「中央銀行の制度設計」
10/9/6(第630号)「日銀悪玉説」
10/8/30(第629号)「外為特会の31兆円の評価損」
10/8/23(第628号)「野田財務大臣を罷免せよ!」
10/8/9(第627号)「世界に広がるデフレ」
10/8/2(第626号)「米国もデフレ?」
10/7/26(第625号)「国債利払いの名目GDP比率」
10/7/19(第624号)「中国の日本国債購入」
10/7/12(第623号)「10年参議院選挙の結果」
10/7/5(第622号)「サミットの変質」
10/6/28(第621号)「各党のデフレ対策」
10/6/21(第620号)「菅首相の想定」
10/6/14(第619号)「EU市場混乱の本質」
10/6/7(第618号)「EU経済の混乱とIMF」
10/5/31(第617号)「議論の前提条件」
10/5/24(第616号)「現実離れの構造改革派」
10/5/17(第615号)「これも一歩前進か」
10/5/10(第614号)「一歩前進か」
10/4/26(第613号)「ガラパゴス症候群」
10/4/19(第612号)「マクロによる検証」
10/4/12(第611号)「ミクロで捉えた日本経済」
10/4/5(第610号)「何事もタイミング」
10/3/29(第609号)「政策提言の想定問答」
10/3/22(第608号)「政策提言(後半)」
10/3/15(第607号)「政策提言(前半)」
10/3/8(第606号)「税収と名目GDPの関係」
10/3/1(第605号)「政治ができる事」
10/2/22(第604号)「積極財政への雑音」
10/2/15(第603号)「経済と金融の間の緊張関係」
10/2/8(第602号)「第二回目キャンペーン」
10/2/1(第601号)「第一回目キャンペーン」
10/1/25(第600号)「日本の財政構造」
10/1/18(第599号)「財政非常事態宣言」
10/1/11(第598号)「10年今年の景気」
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