経済コラムマガジン 平成9年2月10日より
経済コラムマガジン




12/1/30(695号)
無税国家への道

  • 民主党の現実
    今週は政治と政治家について述べる。基本的にどのように優れた政策であっても、政治が動かなければ実現しない。反対に問題のある政策でも、政治の動きによっては実現してしまうことが有りうる。ただ今日衆参のねじれ現象が続いているため、日本においては大きな政策はなかなか実現せず、また重要方案も簡単には成立しない状況が続いている。

    衆参のねじれ現象は自民党の安倍政権から始まった。民主党に政権交代した時、社民党や国民新党と連立することによってかろうじて一時的に「ねじれ」は解消した。しかし菅首相が唐突に「消費税増税」を掲げた1年半前の参議院選挙で民主党が大敗し、またねじれ現象が復活した。


    衆参のねじれ現象による政治的停滞自体が、特に政権与党にとって痛手になる。自民党が政権を明け渡したように、これが政権交代の大きな要因になっている。経済や社会に問題が山積しているのに国会が空転し政策が全く進まないことが、政権与党の責任とマスコミは煽り、国民はイライラがつのるのである。

    この結果、与党が衆議院選挙で大敗し野党が政権を奪取する。しかし国民は野党を信頼しているわけではなく、ただ与党に不満を持ったのである。麻生自民党は2年半前の衆議院選挙で大敗したが、人々が民主党を支持したわけではない。自民党に「あきあき」した人が多くなったのである。

    獲得議席数で大差が生じたが、しかし民主党と自民党の間の獲得投票数の差は案外と小さい。つまり自分の一票が有効になるような投票行動を行った有権者がある程度いたため政権交代がなされたと筆者は見ている。具体的には特に民主党を支持していないが、とにかく自民党を政権から引きずり落としたいため民主党に投票した人々がいたのである。


    元々寄せ集めの民主党を本当に支持している者は少ない。「自民党が嫌い」「自民党よりましかもしれない」といった程度の理由と期待で民主党に投票したのである。ましてや民主党のマニフェストが素晴しいから投票したという人は少数派と筆者は見ている。ちなみにマニフェスト選挙のばかばかしさについて本誌は09/7/13(第577号)「選挙マニフェストの話」他で取上げた。

    今日、民主党はかって自分達が攻撃していた与党の立場になった。今、野党から参議院で問責決議が次々出される情勢が続き民主党は窮地に立っている。しかしこれは民主党が、野党時代、自分達が政権与党だった自民党にやってきたことである。


    選挙制度を小選挙区制にすると、二大政党になりやすく、またこれらの二大政党の政策が似通ってくる。実際、民主党と自民党は共に「消費税増税」を打出している。しかしこれでは選挙にならないので、次の選挙ではおそらく「消費税増税」に否定的な政治勢力が出てきてかなりの議席を獲得するものと見られる。

    民主党と自民党は今さら「消費税増税」を引っ込めるわけには行かない。これを念頭に次の衆議院選挙の結果を大胆に占うと、民主党は大敗し自民党もそれほど伸びない。前述した「消費税増税」反対政党がある程度議席を獲得し、政権のキャスディンボードを握るといったことになろう。まあ、多くの政治評論家の言っていることと同じである。


    それにしても政権与党になったり、政治家が主導的立場に立つと何故か「消費税増税」や「財政規律」を唱えるようになる。不思議な現象である。まるで変な宗教に取付かれたように財政規律の重要性を訴えるのである。これはEUの首脳と共通している。


  • 増税は偏差値が高い
    松下政経塾出身の政治家につい述べる。筆者は、01/7/23(第217号)「日本を滅ぼす松下政経塾」他で、松下政経塾出身の政治家の問題点を指摘した。野田首相を始め今の民主党の幹部は、その政経塾出身者が目立っている。政経塾出身者の関係者は、民主党に多いが自民党やみんなの党にもいる。

    政経塾出身者の一つの特徴は、選挙戦術に長けていて選挙に強いことである。特に選挙区制が中選挙区制から小選挙区制に変わって、選挙区内での獲得投票比率を上げることが必要になって彼等の存在が大きくなった。昔のような固い支持基盤を持つだけの立候補者には厳しい選挙制度になったのである。固い支持者がいても浮動票をかなり取らない限り当選が難しくなった。


    その点政経塾出身者は大衆を相手にするのが得意である。例えば小選挙区制に変わって選挙に関わるマスコミの影響が大きくなったが、彼等はマスコミに対しても「そつ」がない。また政経塾出身者には見栄えが良い者が多く、見栄えが良くない場合でも演説がうまかったりする。

    彼等は政経塾で選挙戦術を得たり情報を交換していると見られる。例えば毎朝バス停を掃除をするというのも選挙戦術の一つらしい。野田首相の毎朝の辻立ち演説もこれに似ている。

    たしかに彼等には、二世議員や高級官僚のような確固とした支持者や支持組織を持たない者が多い。そのせいか自民党からは選挙に出られず、日本新党のような振興政党から出馬せざるを得なかった。しかし小選挙区制に変わったことが彼等に幸いした。


    ここまで政経塾出身者だけを取上げてきたが、政経塾出身者以外の若手政治家も政経塾出身者に似てきている。政治家の「松下政経塾化」である。彼等もテレビ映りを気にして、またマスコミへの対応もうまい。襟を立てたファツションの女性議員や小泉元首相の息子もその一人であろう。

    たしかに彼等と逆のような古いタイプの政治家も残っている。しかし彼等は閣僚に抜擢されたりすると、脇が甘いので色々な問題発言をする。これによってマスコミの格好の餌食となって、国会で問責決議を出されそうになる。


    松下政経塾出身の政治家が主要ポストを占める時代になった。しかしこれらの政経塾出身の政治家の業績が本当に「パァッ」としない。ほとんど官僚の言いなりと見られてもしょうがない状況である。本当に何のために政治家になったのか解らない人々ばかりである。

    もっとも彼等は政治を行うために政治家になったのではなく、政治家になる事自体が目的だったのではないかと考えれば理解できる。また偏差値時代に育った彼等にとって、より偏差値の高いポストに就くことが重要である。地方議員より国会議員、また同じ知事でも大きな県の知事を目指す。つまり野田氏は総理という最難関校に合格したようなものである。ひょっとすると彼等にとって「増税」が政策として一番難しく偏差値が高いと思い込んでいるので、これに挑戦しているのかもしれない。

    たしかに彼等は実社会での経験がほとんどない。その彼等が毎朝バス停を掃除をしているようでは、しかるべき政治ポストに就いても何もできないのが当然であろう。彼等の周りを「海千山千」の人々が取り巻いているのである。そのうち人々も政経塾出身の政治家の「内容のなさ」に気付くであろう。


    松下政経塾出身の政治家のもう一つの特徴は、増税にこだわりが強いことである。筆者は、政経塾出身の宮城県知事が震災復興の話より復興税にこだわっていたことに驚いた。また政経塾出身者の多くは消費税増税を訴えている。ただし政経塾出身であっても松原仁大臣のような例外はたしかにいる。

    筆者が不思議に思うのは彼等のこの増税へのこだわりである。そもそも松下幸之助氏が松下政経塾を設立した主旨は「日本再編計画ー無税国家への道」であったはずである。どちらかと言えば「小さな政府」の実現である。どうも今日の政経塾出身政治家が目指している「無税国家」とは法人税と所得税の話であり、その分消費税を上げると言うことであろうか。



来週は所用のため休ませてもらうと思っているが、余裕が出来たらアップする。再来週のテーマは消費税増税の経済への影響を予定している。



12/1/23(第694号)「世界的な金利低下」
12/1/16(第693号)「過剰貯蓄による災い」
12/1/9(第692号)「バーチャルな話」
11/12/19(第691号)「シミュレーションモデルの話」
11/12/12(第690号)「財政破綻のすすめ」
11/12/5(第689号)「「騒ぎ屋」の時代」
11/11/28(第688号)「技術進歩の恩恵」
11/11/21(第687号)「避けられる根本問題」
11/11/14(第686号)「物事の本質」
11/11/7(第685号)「組織の異端児的存在」
11/10/31(第684号)「組織の研究」
11/10/24(第683号)「気乗りしないTPPの話」
11/10/17(第682号)「解決策はユーロ離脱か」
11/10/10(第681号)「ポール・クルーグマン教授の変心」
11/10/3(第680号)「現実論者VS観念論者」
11/9/26(第679号)「世界的な「日本化」」
11/9/12(第678号)「欧州発のリーマンショック」
11/9/5(第677号)「野田政権の成立」
11/8/29(第676号)「円相場の今後の動き」
11/8/22(第675号)「欧米経済の変調」
11/8/15(第674号)「脱・反原発派の人々」
11/8/8(第673号)「食品安全委員会の問題」
11/8/1(第672号)「タウンミーティングの報告」
11/7/25(第671号)「意味の解らない暫定基準値」
11/7/18(第670号)「政府が明らかにすべきこと」
11/7/11(第669号)「放射線防護の専門家」
11/7/4(第668号)「ダイオキシンとプルトニウム」
11/6/27(第667号)「付加価値を生まない発電」
11/6/20(第666号)「付加価値と発電」
11/6/13(第665号)「ポスト原発はやはり原発」
11/6/6(第664号)「菅政権に対する不信任案騒動」
11/5/30(第663号)「ニューニューサンシャイン計画」
11/5/23(第662号)「原発と電力会社の経営」
11/5/16(第661号)「原発推進派と反・脱原発派」
11/5/2(第660号)「菅政権の迷走」
11/4/25(第659号)「放射線は身体に良い?」
11/4/18(第658号)「山を越えたか?」
11/4/11(第657号)「原子力の専門家」
11/4/4(第656号)「本当に重大な事は何か」
11/3/28(第655号)「電力不足で表沙汰になった事実」
11/3/21(第654号)「東日本巨大地震」
11/3/7(第653号)「日本が貿易立国という誤解」
11/2/28(第652号)「日本は本当に貿易立国?」
11/2/21(第651号)「関税以外の貿易障壁」
11/2/14(第650号)「TPPに関する推理」
11/2/7(第649号)「菅首相の消費税増税」
11/1/31(第648号)「モラルハザードの話」
11/1/24(第647号)「問題は分配ではない」
11/1/17(第646号)「永久債の日銀引受け」
11/1/10(第645号)「日本の経済成長シナリオ」
10/12/20(第644号)「難しい日本の経済成長」
10/12/13(第643号)「日本における新経済成長論」
10/12/6(第642号)「経済成長理論に対する批判」
10/11/29(第641号)「「ケインズはもう古い」?」
10/11/22(第640号)「不況下の反ケインズ政策」
10/11/15(第639号)「政治家に向かない職業」
10/11/8(第638号)「米政府に対するロビー活動」
10/11/1(第637号)「この日をつかめ(Seize the Day)」
10/10/25(第636号)「人民元安容認の経緯」
10/10/18(第635号)「本誌の中国経済の見方」
10/10/11(第634号)「「腹を括る」べき時」
10/10/4(第633号)「中国漁船の公務執行妨害」
10/9/20(第632号)「菅政権の行方」
10/9/13(第631号)「中央銀行の制度設計」
10/9/6(第630号)「日銀悪玉説」
10/8/30(第629号)「外為特会の31兆円の評価損」
10/8/23(第628号)「野田財務大臣を罷免せよ!」
10/8/9(第627号)「世界に広がるデフレ」
10/8/2(第626号)「米国もデフレ?」
10/7/26(第625号)「国債利払いの名目GDP比率」
10/7/19(第624号)「中国の日本国債購入」
10/7/12(第623号)「10年参議院選挙の結果」
10/7/5(第622号)「サミットの変質」
10/6/28(第621号)「各党のデフレ対策」
10/6/21(第620号)「菅首相の想定」
10/6/14(第619号)「EU市場混乱の本質」
10/6/7(第618号)「EU経済の混乱とIMF」
10/5/31(第617号)「議論の前提条件」
10/5/24(第616号)「現実離れの構造改革派」
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