平成9年2月10日より
経済コラムマガジン




07/10/1(498号)
新総理総裁の誕生

  • 政治家の大衆化
    自民党の総裁選が行われ、福田元官房長官が総裁に選ばれた。次いで福田氏は国会で総理大臣に指名された。当初、対抗馬の麻生氏の方が優位と見られたが、総裁選が始まるやいなや反麻生包囲網が出来、福田氏の圧勝という結果に終わった。

    福田氏が圧倒的に支持されたというより、麻生氏に対する自民党内の反発が意外と強かったと筆者は解釈している。麻生氏の方が一般国民からの受けが良いような気がするが、自民党の中に麻生氏を徹底的に毛嫌いする者が結構いるようだ。野中元幹事長が麻生氏を嫌っていることは昔から知っていた。詳しい話は知らないが、沖縄の米軍基地問題で両者が対立したことが発端のようだ。

    古賀選挙対策委員長と山崎元副総裁も麻生氏に強く反発した。これはこの両者が麻生氏と同じ福岡県選出の国会議員で、地元での権力闘争の色合いがある。また麻生氏は、古賀氏が属する宏池会から分派した河野グループを継承した。古賀氏は「あいつ(麻生氏)だけは首相にしたくない」と強く麻生氏を拒否している。


    筆者が驚いたのは、福田氏の出馬が決まるや瞬く間に反麻生包囲網が出来たことである。福田氏が優位と見るや、大半の自民党議員が雪崩をうつように福田陣営に馳せ参じたのである。このように「勝ち馬に乗る」というムードが自民党に根付いている。特に近年この傾向が強くなった。福田氏が首相に相応しいかどうかといった事は全く関係がないのである。

    筆者はこれを自民党の政治家の「大衆化」と呼んでいる。とても一国のリーダを選ぶという雰囲気ではない。ここで筆者は「大衆」という言葉を決して良い意味では使っていない。大衆が大衆的であることは普通のことである。しかし高い見識が求められる政治家達が大衆化しているのである。

    この自民党政治家の「勝ち馬に乗る」という傾向は、小泉首相の再選された頃から酷くなった。安倍総理誕生の時にも同様の雰囲気があった。ただ安倍総裁の場合には、今年の参議院選の「顔」という意味合いがあった。しかし今回どうして福田氏を圧倒的多数で選んだのか全く意味が分らない。


    時々自民党は力のない者を総裁に選ぶことがある。「神輿を担ぐには軽い方が良い」と言った具合である。典型例が海部首相であった。おそらく今度の福田政権の場合は、森元首相、古賀選挙対策委員長、二階総務会長といったメンバーが実権を握ることになると思われる。

    一方、福田氏が総裁選出馬を簡単に承諾したことも理解できないことである。与党の参議院での議席数は半数を大きく割り込んでいる。法案が容易に通る状況ではない。もし衆議院選を行って過半数割れとなれば、自民党は直に野党に転落する。したがって解散権の行使は縛られる。こんな不自由で損な役回りが今日の自民党の総裁であり、総理大臣である。


  • 郵政改革反対派議員
    今日と異なり、以前の自民党の中には気骨と信念のある政治家がいた。郵政改革に反対した議員である。しかし彼等は造反議員のレッテルを貼られ、自民党を追われた。マスコミから批難されるだけでなく、自民党の地方組織からの支援も失った。そして郵政選挙では、刺客候補を立てられ大半が落選した。しかしこれらの政治家こそが価値があったのである。

    郵政改革反対派の政治家が抜けた後の自民党は何の取り柄もなくなった。まさに07/7/2(第488号)「ポンカス政党」になったのである。今回の総裁選の様子を見ていてもそのことがよく分る。政治家の「あさましさ」だけが目に付いた総裁選劇であった。


    先の参議院選の結果を見ても、3年以内の間に自民党が野党に転落する確率が大きくなったことは分る。一旦野党になれば、与党だという理由だけで寄って来た者がどんどん去り、自民党は消滅する方向に向かうと思われる。細川政権の時にも自民党は野党になったが、その時には参議院では多数を占めており、今とは大きく事情が異なっていた。参議院で少数派になった今回の方がずっと深刻なのである。ましてや気骨と信念のある政治家が全部抜け、ポンカス政党になってしまった自民党には再生する力は残っていない。

    細川政権時一旦落ち目になった自民党であったが、与党の座を取戻すと、さみだれ的に民主党や自由党から国会議員が自民党に移って来た。しかし今度は事情が違う。政権に近づいた民主党から離れる者はいないと思われる。むしろ自民党から離党者が出る可能性の方が高い。


    安倍政権下で郵政反対派議員の自民党復党がなされた。しかし参議院選の結果を見れば分るように、彼等は復党を急ぐ必要はなかったのである。中には「しまった」と思っている者もいるはずである。多くは議員本人が望んだというより、後援会が自民党への復党を願ったものと考えられる。

    自民党に復党しても「冷や飯」を食わされるくらいなら、自ら自民党を再び離れることを考えた方が良い。平沼氏も復党が認められた。しかし野党転落が見えて来た自民党に急いで復党する必要は全くない。むしろ平沼氏には保守系の新党を立ち上げてもらいたい。

    10月1日から郵政事業の民営化がスタートする。各種の手数料が軒並み値上げされる。数十パーセント程度の値上げでなく、何倍にもなるのである。民営化後の日本郵政にとっては儲けることが第一となる。したがって過疎地の郵便局の閉鎖も加速される。これが国民がこぞって賛成したとされる郵政民営化の姿である。筆者は、郵便局の閉鎖は郵政民営化に賛成した国会議員の地元を優先すべきと考える。


    今の自民党は、官僚組織が作った政策を実行しているに過ぎない。ところが官僚の発想を自分達の考えと思い込んでいる。例えば自民党は2011年までのプライマリーバランスの回復を唱えている。これこそが財政再建の本筋と思い込んでいるが、これは官僚、特に財務官僚が作ったシナリオそのものである。しかし財務官僚主導の財政再建が進められる度に日本経済がおかしくなり、自民党は選挙に負けている。ところが自民党には官僚に対抗できる人材がいなくなっているのである。



来週は「GDP統計の読み方」に戻り、今日本経済に起っていることを考える。いよいよ所得が増えないのに物価だけが上昇する最悪の時代に入ったようである。



07/9/24(第497号)「GDP統計の読み方」
07/9/17(第496号)「安倍首相の辞任劇」
07/9/10(第495号)「経済数字の実感との乖離」
07/9/3(第494号)「内閣改造に対する感想」
07/8/6(第493号)「自民党の自殺」
07/7/31(第492号)「07年参議院選挙の結果」
07/7/23(第491号)「参議員選の注目点」
07/7/16(第490号)「またもやデマ選挙か」
07/7/9(第489号)「参議院選挙の比例区」
07/7/2(第488号)「ポンカス政党」
07/6/25(第487号)「歴史の教訓」
07/6/18(第486号)「歴史教科書の上での抹殺」
07/6/11(第485号)「老舗に伝わる歴史」
07/6/4(第484号)「金・銀の産出量と経済」
07/5/28(第483号)「荻原重秀と新井白石」
07/5/21(第482号)「インフレと歴史教科書」
07/5/14(第481号)「インフレへの警戒感」
07/5/7(第480号)「日本の公務員」
07/4/23(第479号)「米国の構造改革派」
07/4/16(第478号)「構造改革派の正体」
07/4/9(第477号)「構造改革派とカルテル」
07/4/2(第476号)「構造改革派の生態」
07/3/26(第475号)「構造改革派の落日の始まり」
07/3/19(第474号)「超円高になる条件(その2)」
07/3/12(第473号)「超円高になる条件(その1)」
07/3/5(第472号)「今回の円高の分析」
07/2/26(第471号)「為替動向を占うポイント」
07/2/19(第470号)「今日の円安を考える」
07/2/12(第469号)「「女性は子供を産む機械」発言」」
07/2/5(第468号)「財界人と「合成の誤謬」」
07/1/29(第467号)「日本の財界人の自信」
07/1/22(第466号)「日本の財界の変質」
07/1/15(第465号)「日本の財界」
07/1/8(第464号)「面白みがない景気予想」
06/12/11(第463号)「筆者の主張のサマリー」
06/12/4(第462号)「高速増殖炉にまつわる誤解」
06/11/27(第461号)「高速増殖炉の話」
06/11/20(第460号)「日本の核融合研究」
06/11/13(第459号)「将来のエネルギーの本筋」
06/11/6(第458号)「LNG(液化天然ガス)の話」
06/10/30(第457号)「筆者の国防・防衛論」
06/10/23(第456号)「日本の核武装論」
06/10/16(第455号)「北朝鮮の核実験」
06/10/9(第454号)「安倍政権の生産性」
06/10/2(第453号)「安倍政権の発足にあたり」
06/9/25(第452号)「ポスト小泉の経済論議」
06/9/18(第451号)「ポスト小泉の経済と対米外交」
06/9/11(第450号)「ポスト小泉の対アジア外交」
06/9/4(第449号)「ポスト小泉について」
06/8/7(第448号)「郵政改革と宗教戦争」
06/7/31(第447号)「郵政改革論議の混乱」
06/7/24(第446号)「宗教・哲学と経済学」
06/7/17(第445号)「宗教と哲学への入門」
06/7/10(第444号)「劣勢のケインズ」
06/7/3(第443号)「トービン税について」
06/6/26(第442号)「自由放任(レッセ-フェール)の経済」
06/6/19(第441号)「筆者の税制改正案」
06/6/12(第440号)「筆者のニート対策」
06/6/5(第439号)「美しくない話」
06/5/29(第438号)「第三セクター鉄道の危機」
06/5/22(第437号)「テレビ番組の制作現場」
06/5/15(第436号)「日銀の実態・・憶測」
06/5/8(第435号)「日銀は魔法の杖か」
06/4/24(第434号)「もう一つ勇気を」
06/4/17(第433号)「格差とマスコミ」
06/4/10(第432号)「官僚の力と限界」
06/4/3(第431号)「日経新聞のダブルスタンダード」
06/3/27(第430号)「金融政策の失敗の歴史」
06/3/20(第429号)「量的緩和解除の波紋」
06/3/13(第428号)「コンビニ弁当の話」
06/3/6(第427号)「GDPギャップのインチキ推計法」
06/2/27(第426号)「潜在GDPとGDPギャップ」
06/2/20(第425号)「労働力と経済成長」
06/2/13(第424号)「大衆社会における経済論議」
06/2/6(第423号)「皇室典範改正法案に一言」
06/1/30(第422号)「ホリエモンと政治家」
06/1/23(第421号)「改革の旗手の危機」
06/1/16(第420号)「今年の景気予想」
06/1/9(第419号)「思考停止の日本」
05/12/19(第418号)「日本人の変質」
05/12/12(第417号)「日本的経営の行く末」
05/12/5(第416号)「アメリカ人」
05/11/28(第415号)「遠ざかる豊かな社会」
05/11/21(第414号)「移民問題と市場経済」
05/11/14(第413号)「ブリエアの解放者たち」
05/11/7(第412号)「第三次小泉内閣の感想」
05/10/31(第411号)「現実経済の乗数値」
05/10/24(第410号)「公共投資に伴う誘発投資」
05/10/17(第409号)「誘発投資の拡張版」
05/10/10(第408号)「経済理論上の乗数」
05/10/3(第407号)「政治家達の沈黙」
05/9/26(第406号)「大谷氏への公開質問状」
05/9/19(第405号)「デマの検証」
05/9/13(第404号)「選挙結果の雑感」
05/8/29(第403号)「今回の総選挙を読む」
05/8/22(第402号)「今回の総選挙の沿革」
05/8/8(第401号)「中国経済の本当の脅威」
05/8/1(第400号)「中国の為替戦略」
05/7/25(第399号)「経済のグローバリズムの行末」
05/7/18(第398号)「経済のグローバリズムの本質」
05/7/11(第397号)「郵政法案と小泉政権の行方」
05/7/4(第396号)「経済のグローバリズムと競争の公正」
05/6/27(第395号)「日本語の研究」
05/6/20(第394号)「公的年金とセイニアーリッジ」
05/6/13(第393号)「日本国民全員がばん万歳の政策」
05/6/6(第392号)「公的年金とマクロ経済」
05/5/30(第391号)「マクロ経済政策で解決するもの」
05/5/23(第390号)「ヴァーチャルなもの(その2)」
05/5/16(第389号)「ヴァーチャルなもの(その1)」
05/5/9(第388号)「中国進出の主導者」
05/4/25(第387号)「鎖国主義への誘惑(その2)」
05/4/18(第386号)「鎖国主義への誘惑(その1)」
05/4/11(第385号)「ノストラダムスの大予言」
05/4/4(第384号)「法律と現実社会との間」
05/3/28(第383号)「株式に関する非常識」
05/3/21(第382号)「人とグローバリズム」
05/3/14(第381号)「資本とグローバリズム」
05/3/7(第380号)「貿易とグローバリズム」
05/2/28(第379号)「マスコミの暴走」
05/2/21(第378号)「マスコミが流す誤った概念」
05/2/14(第377号)「日本のマスコミの権力指向」
05/2/7(第376号)「日本のマスコミの体質」
05/1/31(第375号)「財政当局の変心」
05/1/24(第374号)「経済成長の条件(その2)」
05/1/17(第373号)「経済成長の条件(その1)」
05/1/10(第372号)「中国経済の実態」
04/12/13(第371号)「第一回財政研交流会」
04/12/6(第370号)「虚構の終焉(フィクション・エコノミクス)その3」
04/11/29(第369号)「虚構の終焉(フィクション・エコノミクス)その2」
04/11/22(第368号)「構造改革派の常套手段」
04/11/15(第367号)「虚構の終焉(フィクション・エコノミクス)その1」
04/11/8(第366号)「第二次南北戦争」
04/11/1(第365号)「妄言・虚言の正体」
04/10/25(第364号)「クライン博士を招いてのシンポジウム」
04/10/18(第363号)「日本経済のデフレ体質の分析(その3)」
04/10/11(第362号)「日本経済のデフレ体質の分析(その2)」
04/10/4(第361号)「日本経済のデフレ体質の分析(その1)」
04/9/27(第360号)「豊かな社会ーー競争と共生」
04/9/20(第359号)「レーガンの規制緩和の実態」
04/9/13(第358号)「今こそ大胆な政策転換を」
04/9/6(第357号)「虚言・妄言が跋扈する世の中」」
04/8/30(第356号)「日本の「韓国化」」
04/8/2(第355号)「日本の分割統治」
04/7/26(第354号)「自民党大敗北の要因分析」
04/7/19(第353号)「参院選で見たもの」
04/7/12(第352号)「日本のエネルギー自立政策」
04/7/5(第351号)「危うい石油の確保」
04/6/28(第350号)「テロと中東石油」
04/6/21(第349号)「対談の論点(再)」
04/6/14(第348号)「対談の論点」
04/6/7(第347号)「富の分配と公正」
04/5/31(第346号)「小泉首相訪朝の成果」
04/5/24(第345号)「日本に必要な財政赤字政策」
04/5/17(第344号)「土地売買の盲点」
04/5/10(第343号)「日本経済の体質と財政政策」
04/4/26(第342号)「凍り付くマネーサプライ」
04/4/19(第341号)「デフレ体質の日本経済」
04/4/12(第340号)「火星の土地」
04/4/5(第339号)「円高は構造的」
04/3/29(第338号)「規制緩和に飛びつく人々」
04/3/22(第337号)「矛盾の出発点」
04/3/15(第336号)「日経の貧乏神」
04/3/8(第335号)「実感なき経済成長」
04/3/1(第334号)「為替介入ではなく財政支出を」
04/2/23(第333号)「為替介入への道」
04/2/16(第332号)「為替介入資金の働き(その2)」
04/2/9(第331号)「為替介入資金の働き(その1)」
04/2/2(第330号)「為替介入政策の限界」
04/1/26(第329号)「今日の政治課題」
04/1/19(第328号)「今年の政局の課題」
04/1/12(第327号)「今年の日本の景気」
03/12/15(第326号)「日本の公的年金」
03/12/8(第325号)「足利銀行の破綻処理」
03/12/1(第324号)「日本経済を支えているもの」
03/11/24(第323号)「総選挙結果から見えるもの」
03/11/17(第322号)「総選挙結果の分析」
03/11/10(第321号)「総選挙の結果他」
03/11/3(第320号)「総選挙の予測」
03/10/27(第319号)「動態的会計による企業価値算定」
03/10/20(第318号)「道路公団、財務諸表の怪」
03/10/13(第317号)「藤井総裁解任劇」
03/10/6(第316号)「総裁選と総選挙」
03/9/29(第315号)「総裁選の総括」
03/9/22(第314号)「ドキュメンタリー総裁選」
03/9/15(第313号)「レポート総裁選・・その2」
03/9/8(第312号)「レポート総裁選」
03/9/1(第311号)「混迷の終始符」
03/8/25(第310号)「急がば回れ・・再び」
03/8/18(第309号)「自民党の総裁選に向けて」
03/8/4(第308号)「日本の実稼働率」
03/7/28(第307号)「設備投資の実態」
03/7/21(第306号)「企業経営と創造的破壊」
03/7/14(第305号)「頭が破壊されている人々」
03/7/7(第304号)「頭が混乱している構造改革派」
03/6/30(第303号)「経済の循環(その2)」
03/6/23(第302号)「経済の循環(その1)」
03/6/16(第301号)「経済政策の混乱」
03/6/9(第300号)「りそな銀行の件」
03/6/2(第299号)「規制緩和と日本経済」
03/5/26(第298号)「経済学と経営学」
03/5/19(第297号)「政府紙幣発行の認知度」
03/5/12(第296号)「滝田洋一氏への反論」
03/5/5(第295号)「政府紙幣発行政策の誤解」
03/4/21(第294号)「逆噴射の財政政策」
03/4/14(第293号)「危機管理下の経済政策」
03/4/7(第292号)「国債の管理政策」
03/3/31(第291号)「経済再生政策提言フォーラム」
03/3/24(第290号)「日本の有名経済学者達」
03/3/17(第289号)「波乱の株式市場」
03/3/10(第288号)「政府貨幣の理解」
03/3/3(第287号)「軽視される高橋是清の偉業」
03/2/24(第286号)「日本の清貧の思想」
03/2/17(第285号)「日本のデフレの原点」
03/2/10(第284号)「小泉首相の「もっと重要なこと」」
03/2/3(第283号)「スローパニック経済」
03/1/27(第282号)「所得を生むマネーサプライ」
03/1/20(第281号)「マネーサプライ政策の限界」
03/1/13(第280号)「データに基づく経済論」
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