平成9年2月10日より
経済コラムマガジン




07/7/9(489号)
参議院選挙の比例区

  • 「毒まんじゅう」組の行末
    先週号で取上げた久間防衛相が「原爆投下はしょうがなかった」発言で辞任した。辞任というより解任である。今週はこの話から始める。安倍首相は小泉前首相人脈の久間氏をギリギリ辞めさせないつもりでいたと思われるが、公明党がNOを出したようである。後任は小池ゆり子氏である。筆者はこの人物も小泉人脈と見ている。大新聞は両者と安倍首相との関係を強調した解説をしているが、両者と安倍首相の関係はそんなに深くないと思う。筆者は今回も小泉前首相が影響する人事と考える。

    筆者が久間氏という人物に特に注目したのは、4年前の自民党総裁選での行動からである。この総裁選は、小泉総裁の二期目であり、対抗する候補に亀井、高村、藤井の三氏が立った。当時の橋本派(現在の津島派)の動向が注目されたが、この派閥は自派候補の藤井支持派と小泉支持派に別れた。久間氏は青木氏(現自民党参議院議員会長)と共に小泉支持の急先鋒となった。

    この結果、小泉氏は他を圧倒し、総理・総裁に再選された。当初、決して優位でなかったはずの小泉氏が、青木・久間の両氏の働きで首相に再任されたと考えて良い。当時、野中元幹事長は橋本派の中の小泉支持派を「毒まんじゅうを喰わせられている」と表現した。久間氏はまさにいわゆるこの「毒まんじゅう」組の一人である。


    この自民党総裁選の最中、久間氏は北海道の講演で「今回の総裁選は政策の問題ではない」と発言した。筆者はこの発言に極めて注目した。「政策ではない」と言い切ってしまえば、政治家の存在は一体何なのかという話になる。政治家としての信条が全く異なる小泉氏を強力に推した青木・久間の両氏の奇妙な姿勢と行動は、その後も続くことになる。しかし久間氏は、この総裁選の論功により、小泉政権において幹事長代理や総務会長などの要職に就いた。

    小泉前首相は「古い自民党をぶっ壊す」と言っていたが、これは田中・竹下の流れをくむ橋本派を壊すことであった。結果的に出身派閥である橋本派の解体に協力したのがこの久間氏と青木氏である。今回の参議院選挙で、津島派の参議院議員はさらに激減するものと見られる。まさに旧田中・竹下派はぶっ壊れるのである。

    昔から自民党では、地方議会出身者、特に地方議会に長く携わっていた国会議員が軽んじられている。筆者には何となくその理由が解る。青木・久間の両氏も長く地方議会に携わってきた政治家である。筆者は、自派を裏切り、政治信条が全く異なる小泉氏支持に走った青木・久間の両氏には、どうしても政権の中枢に身を置く必要があったと考えるのである。


  • 非拘束名簿方式
    参議院選挙の結果を予想するのは難しい。衆議院選挙も中選挙区制から小選挙区制に変わって予想が難しくなったと言われるが、こちらの方がましである。これは衆議院議員の方が、選挙民にとって馴染みがあり、投票行動が読みやすいからである。

    参議院の方が比例区の議員の比率が高い。選挙区も衆議院の小選挙区より広い。したがって選挙民と立候補者との距離がどうしても大きくなる。そのためか衆議院選挙より参議院選挙の方が投票率が低くなる。


    立候補者との距離が大きいため、選挙民は比較的気軽な気持で投票を行う。投票日直前まで投票相手を決めない人が多いと思われる。したがって新聞社の一週間の当落予想がかなり狂う。前回04年の参議院選挙では、一週間前の段階で自民党の大敗が予想された。そこで公明党がいくつかの一人区で自民党候補のてこ入れを行った。これによって自民党は大敗北をなんとか免れた。

    つまり選挙民の自由度が高いため、正確な議席数の予想はかなり投票日に近づかなければ無理ということになる。今日、各種マスコミから当落予想が出ているが、実際の結果とかなり違うことが考えられる。これから29日までの間に何が起るか分らないのである。


    参議院選挙は、投票が気軽になされるため、選挙結果が毎回大きく変わるのが特徴である。自民党の獲得議席で言えば60台から30台まで大きくブレる。大きく変動するのは一人区と比例区である。

    参議院選挙の投票結果を左右するのはその時の「風」である。小泉首相が始めて登場した01年の時には、小泉ブームで自民党は大勝した。しかし前回04年は同じ小泉政権でありながら自民党は苦戦した。逆風が吹いたのである。過去に遡れば、橋本総理と宇野総理の時に自民党は大敗した。特に宇野総理の時には30台というみじめな結果であった。


    前述したように参議院選挙は一人区と比例区の変動が大きい。先週号で一人区を取上げたので、今週は比例区を取り上げる。比例区は選出方法が変わってきている。昔は単純な投票方式で、政党は関係なく獲得票が大きい者から順番に当選した。選挙というより人気投票的要素が強く、これはこれで面白かった。中には200万票、300万票を集める候補者もいた。

    その次が拘束名簿方式である。これは各党が事前に名簿順位を決める方式であった。この方式によって、政権に近い派閥がより優位な順番を得ることになった。力のある旧田中・竹下派に多くの参議院議員が集まったのも、この比例方式のお陰である。業界も旧田中・竹下派になびいた。そして今日行われているのが非拘束名簿方式である。選挙民が書くのは候補者の個人名でも政党名でも良い。同じ政党の中で個人名の多い者から当選が決まる。


    単純選挙方式の時は、候補者は大変であった。全国をかけづり回り選挙戦を闘った。また拘束名簿方式の時は、名簿で良い順番を得るため、数多くの推薦者の名簿を提出する必要があった。つまりどちらの選挙方法でも立候補者は、自ら票を掘り起こすことが必要であった。

    しかし今日非拘束名簿方式になって事情は変わった。自民党の場合、個人名の投票は3割くらいであり、政党名が7割である。立候補者は、自民党全体の票を掘り起こすより、同じ自民党内の他候補者より1票でも多くの個人名票を獲得すれば良いことになる。したがってわずか15万票ぐらいでも当選することができる。しかしこれでは自民党の全体の票は伸びない。

    04年の前回の選挙では、自民党は1,680万票の投票を獲得し15議席を得た。110万票で一人の当選者という計算になる。来る選挙では、この投票獲得数を1,200万票と予想する向きもある。これでは当選者が11名前後ということになる。しかし2年前の衆議院選挙で自民党は比例区で2,600万票も得ているのである。筆者はなんぼなんでも1,200万票ということはないと予想する。



来週は、参議院選挙で筆者が注目するポイントを挙げたい。



07/7/2(第488号)「ポンカス政党」
07/6/25(第487号)「歴史の教訓」
07/6/18(第486号)「歴史教科書の上での抹殺」
07/6/11(第485号)「老舗に伝わる歴史」
07/6/4(第484号)「金・銀の産出量と経済」
07/5/28(第483号)「荻原重秀と新井白石」
07/5/21(第482号)「インフレと歴史教科書」
07/5/14(第481号)「インフレへの警戒感」
07/5/7(第480号)「日本の公務員」
07/4/23(第479号)「米国の構造改革派」
07/4/16(第478号)「構造改革派の正体」
07/4/9(第477号)「構造改革派とカルテル」
07/4/2(第476号)「構造改革派の生態」
07/3/26(第475号)「構造改革派の落日の始まり」
07/3/19(第474号)「超円高になる条件(その2)」
07/3/12(第473号)「超円高になる条件(その1)」
07/3/5(第472号)「今回の円高の分析」
07/2/26(第471号)「為替動向を占うポイント」
07/2/19(第470号)「今日の円安を考える」
07/2/12(第469号)「「女性は子供を産む機械」発言」」
07/2/5(第468号)「財界人と「合成の誤謬」」
07/1/29(第467号)「日本の財界人の自信」
07/1/22(第466号)「日本の財界の変質」
07/1/15(第465号)「日本の財界」
07/1/8(第464号)「面白みがない景気予想」
06/12/11(第463号)「筆者の主張のサマリー」
06/12/4(第462号)「高速増殖炉にまつわる誤解」
06/11/27(第461号)「高速増殖炉の話」
06/11/20(第460号)「日本の核融合研究」
06/11/13(第459号)「将来のエネルギーの本筋」
06/11/6(第458号)「LNG(液化天然ガス)の話」
06/10/30(第457号)「筆者の国防・防衛論」
06/10/23(第456号)「日本の核武装論」
06/10/16(第455号)「北朝鮮の核実験」
06/10/9(第454号)「安倍政権の生産性」
06/10/2(第453号)「安倍政権の発足にあたり」
06/9/25(第452号)「ポスト小泉の経済論議」
06/9/18(第451号)「ポスト小泉の経済と対米外交」
06/9/11(第450号)「ポスト小泉の対アジア外交」
06/9/4(第449号)「ポスト小泉について」
06/8/7(第448号)「郵政改革と宗教戦争」
06/7/31(第447号)「郵政改革論議の混乱」
06/7/24(第446号)「宗教・哲学と経済学」
06/7/17(第445号)「宗教と哲学への入門」
06/7/10(第444号)「劣勢のケインズ」
06/7/3(第443号)「トービン税について」
06/6/26(第442号)「自由放任(レッセ-フェール)の経済」
06/6/19(第441号)「筆者の税制改正案」
06/6/12(第440号)「筆者のニート対策」
06/6/5(第439号)「美しくない話」
06/5/29(第438号)「第三セクター鉄道の危機」
06/5/22(第437号)「テレビ番組の制作現場」
06/5/15(第436号)「日銀の実態・・憶測」
06/5/8(第435号)「日銀は魔法の杖か」
06/4/24(第434号)「もう一つ勇気を」
06/4/17(第433号)「格差とマスコミ」
06/4/10(第432号)「官僚の力と限界」
06/4/3(第431号)「日経新聞のダブルスタンダード」
06/3/27(第430号)「金融政策の失敗の歴史」
06/3/20(第429号)「量的緩和解除の波紋」
06/3/13(第428号)「コンビニ弁当の話」
06/3/6(第427号)「GDPギャップのインチキ推計法」
06/2/27(第426号)「潜在GDPとGDPギャップ」
06/2/20(第425号)「労働力と経済成長」
06/2/13(第424号)「大衆社会における経済論議」
06/2/6(第423号)「皇室典範改正法案に一言」
06/1/30(第422号)「ホリエモンと政治家」
06/1/23(第421号)「改革の旗手の危機」
06/1/16(第420号)「今年の景気予想」
06/1/9(第419号)「思考停止の日本」
05/12/19(第418号)「日本人の変質」
05/12/12(第417号)「日本的経営の行く末」
05/12/5(第416号)「アメリカ人」
05/11/28(第415号)「遠ざかる豊かな社会」
05/11/21(第414号)「移民問題と市場経済」
05/11/14(第413号)「ブリエアの解放者たち」
05/11/7(第412号)「第三次小泉内閣の感想」
05/10/31(第411号)「現実経済の乗数値」
05/10/24(第410号)「公共投資に伴う誘発投資」
05/10/17(第409号)「誘発投資の拡張版」
05/10/10(第408号)「経済理論上の乗数」
05/10/3(第407号)「政治家達の沈黙」
05/9/26(第406号)「大谷氏への公開質問状」
05/9/19(第405号)「デマの検証」
05/9/13(第404号)「選挙結果の雑感」
05/8/29(第403号)「今回の総選挙を読む」
05/8/22(第402号)「今回の総選挙の沿革」
05/8/8(第401号)「中国経済の本当の脅威」
05/8/1(第400号)「中国の為替戦略」
05/7/25(第399号)「経済のグローバリズムの行末」
05/7/18(第398号)「経済のグローバリズムの本質」
05/7/11(第397号)「郵政法案と小泉政権の行方」
05/7/4(第396号)「経済のグローバリズムと競争の公正」
05/6/27(第395号)「日本語の研究」
05/6/20(第394号)「公的年金とセイニアーリッジ」
05/6/13(第393号)「日本国民全員がばん万歳の政策」
05/6/6(第392号)「公的年金とマクロ経済」
05/5/30(第391号)「マクロ経済政策で解決するもの」
05/5/23(第390号)「ヴァーチャルなもの(その2)」
05/5/16(第389号)「ヴァーチャルなもの(その1)」
05/5/9(第388号)「中国進出の主導者」
05/4/25(第387号)「鎖国主義への誘惑(その2)」
05/4/18(第386号)「鎖国主義への誘惑(その1)」
05/4/11(第385号)「ノストラダムスの大予言」
05/4/4(第384号)「法律と現実社会との間」
05/3/28(第383号)「株式に関する非常識」
05/3/21(第382号)「人とグローバリズム」
05/3/14(第381号)「資本とグローバリズム」
05/3/7(第380号)「貿易とグローバリズム」
05/2/28(第379号)「マスコミの暴走」
05/2/21(第378号)「マスコミが流す誤った概念」
05/2/14(第377号)「日本のマスコミの権力指向」
05/2/7(第376号)「日本のマスコミの体質」
05/1/31(第375号)「財政当局の変心」
05/1/24(第374号)「経済成長の条件(その2)」
05/1/17(第373号)「経済成長の条件(その1)」
05/1/10(第372号)「中国経済の実態」
04/12/13(第371号)「第一回財政研交流会」
04/12/6(第370号)「虚構の終焉(フィクション・エコノミクス)その3」
04/11/29(第369号)「虚構の終焉(フィクション・エコノミクス)その2」
04/11/22(第368号)「構造改革派の常套手段」
04/11/15(第367号)「虚構の終焉(フィクション・エコノミクス)その1」
04/11/8(第366号)「第二次南北戦争」
04/11/1(第365号)「妄言・虚言の正体」
04/10/25(第364号)「クライン博士を招いてのシンポジウム」
04/10/18(第363号)「日本経済のデフレ体質の分析(その3)」
04/10/11(第362号)「日本経済のデフレ体質の分析(その2)」
04/10/4(第361号)「日本経済のデフレ体質の分析(その1)」
04/9/27(第360号)「豊かな社会ーー競争と共生」
04/9/20(第359号)「レーガンの規制緩和の実態」
04/9/13(第358号)「今こそ大胆な政策転換を」
04/9/6(第357号)「虚言・妄言が跋扈する世の中」」
04/8/30(第356号)「日本の「韓国化」」
04/8/2(第355号)「日本の分割統治」
04/7/26(第354号)「自民党大敗北の要因分析」
04/7/19(第353号)「参院選で見たもの」
04/7/12(第352号)「日本のエネルギー自立政策」
04/7/5(第351号)「危うい石油の確保」
04/6/28(第350号)「テロと中東石油」
04/6/21(第349号)「対談の論点(再)」
04/6/14(第348号)「対談の論点」
04/6/7(第347号)「富の分配と公正」
04/5/31(第346号)「小泉首相訪朝の成果」
04/5/24(第345号)「日本に必要な財政赤字政策」
04/5/17(第344号)「土地売買の盲点」
04/5/10(第343号)「日本経済の体質と財政政策」
04/4/26(第342号)「凍り付くマネーサプライ」
04/4/19(第341号)「デフレ体質の日本経済」
04/4/12(第340号)「火星の土地」
04/4/5(第339号)「円高は構造的」
04/3/29(第338号)「規制緩和に飛びつく人々」
04/3/22(第337号)「矛盾の出発点」
04/3/15(第336号)「日経の貧乏神」
04/3/8(第335号)「実感なき経済成長」
04/3/1(第334号)「為替介入ではなく財政支出を」
04/2/23(第333号)「為替介入への道」
04/2/16(第332号)「為替介入資金の働き(その2)」
04/2/9(第331号)「為替介入資金の働き(その1)」
04/2/2(第330号)「為替介入政策の限界」
04/1/26(第329号)「今日の政治課題」
04/1/19(第328号)「今年の政局の課題」
04/1/12(第327号)「今年の日本の景気」
03/12/15(第326号)「日本の公的年金」
03/12/8(第325号)「足利銀行の破綻処理」
03/12/1(第324号)「日本経済を支えているもの」
03/11/24(第323号)「総選挙結果から見えるもの」
03/11/17(第322号)「総選挙結果の分析」
03/11/10(第321号)「総選挙の結果他」
03/11/3(第320号)「総選挙の予測」
03/10/27(第319号)「動態的会計による企業価値算定」
03/10/20(第318号)「道路公団、財務諸表の怪」
03/10/13(第317号)「藤井総裁解任劇」
03/10/6(第316号)「総裁選と総選挙」
03/9/29(第315号)「総裁選の総括」
03/9/22(第314号)「ドキュメンタリー総裁選」
03/9/15(第313号)「レポート総裁選・・その2」
03/9/8(第312号)「レポート総裁選」
03/9/1(第311号)「混迷の終始符」
03/8/25(第310号)「急がば回れ・・再び」
03/8/18(第309号)「自民党の総裁選に向けて」
03/8/4(第308号)「日本の実稼働率」
03/7/28(第307号)「設備投資の実態」
03/7/21(第306号)「企業経営と創造的破壊」
03/7/14(第305号)「頭が破壊されている人々」
03/7/7(第304号)「頭が混乱している構造改革派」
03/6/30(第303号)「経済の循環(その2)」
03/6/23(第302号)「経済の循環(その1)」
03/6/16(第301号)「経済政策の混乱」
03/6/9(第300号)「りそな銀行の件」
03/6/2(第299号)「規制緩和と日本経済」
03/5/26(第298号)「経済学と経営学」
03/5/19(第297号)「政府紙幣発行の認知度」
03/5/12(第296号)「滝田洋一氏への反論」
03/5/5(第295号)「政府紙幣発行政策の誤解」
03/4/21(第294号)「逆噴射の財政政策」
03/4/14(第293号)「危機管理下の経済政策」
03/4/7(第292号)「国債の管理政策」
03/3/31(第291号)「経済再生政策提言フォーラム」
03/3/24(第290号)「日本の有名経済学者達」
03/3/17(第289号)「波乱の株式市場」
03/3/10(第288号)「政府貨幣の理解」
03/3/3(第287号)「軽視される高橋是清の偉業」
03/2/24(第286号)「日本の清貧の思想」
03/2/17(第285号)「日本のデフレの原点」
03/2/10(第284号)「小泉首相の「もっと重要なこと」」
03/2/3(第283号)「スローパニック経済」
03/1/27(第282号)「所得を生むマネーサプライ」
03/1/20(第281号)「マネーサプライ政策の限界」
03/1/13(第280号)「データに基づく経済論」
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