平成9年2月10日より
経済コラムマガジン




07/1/8(464号)
面白みがない景気予想

  • 下支えによる日本経済
    年頭に当たり、今週号は今年の景気予想を行いたい。一昨年は面白みがないと予想を取り止めた。どうせ日本経済は底辺にへばりついているのだから、多少上向こうが、下がろうが平均的な国民の暮らし振りに大した変化はないからである。

    全体の経済のパイの大きさが変わらないのだから、所得が増えた人がいれば、その分所得が減る人がいるという塩梅である。昨年、所得の格差が大きくなったと世間はようやく騒ぎ出したが、ずっと前からこの傾向は続いていたのである。

    面白くないことを承知に、昨年は年初に景気の予想を行った06/1/16(第420号)「今年の景気予想」。まずこの予想の結果の吟味から始めたい。概ね予想は当ったと見ているが、外れたところもある。外れたと判断されるのは住宅投資の推移である。一応「団塊ジュニア世代の住宅購入があり底堅く推移する」と昨年は予想したが、当時、耐震強度偽装問題が騒がれており、多少なりとも住宅投資は減るのではと予測した。

    しかし昨年は前年を少し上回りそうである。新設住宅着工件数自体は02年度の114.6万戸をボトムに、03年度117.4万戸、04年度119.3万戸、05年度124.9万戸と徐々に増える傾向にある。

    昨年はたしかに1月こそ年率換算ベースで116.9万戸と不振であったが、尻上がりに住宅着工件数は増えており、特に11月(最新データ)は年率換算で135.8万戸と近年にはない活況(ちょっとこの数字は信じ難い)と言えるような水準である。このままの推移なら、今年度は130万戸前後の数字になりそうである。ボトムであった02年度と比べると約15万戸も住宅着工件数が増えている計算になる。


    15年前までは150万戸前後であった年間の住宅着工件数が130万戸台なのだから、絶好調とまでは言えないが住宅建設はたしかに回復している。もちろん着工件数がそのまま住宅投資額に比例はしないが、住宅建築が日本経済の下差さえをしていることは事実であろう。

    しかし一方消費は予想通り依然不調である。95年度、96年度がかろうじてプラスであったが、それ以降10年以上も消費支出はずっとマイナスを続けている。名目の所得が増えていないのだから当り前の話ではある。自動車の国内販売も伸びていない状態で、軽自動車の販売台数が増えているのだから、普通車の販売は減っている。

    住宅建設が好調なのに対して、一般の消費や普通自動車の販売の不振が好対照をなしている。これも日本人の資産や所得の二極化(格差)を反映したものと考える。新築住宅を購入できる人々(資産があり安定した収入がある)がいる反面、消費額を削っている人々がいる。またどうしても車が必要な人々の一部は、普通車から軽自動車に乗り替えていると見られる。


    もう一つ筆者が予想を外したのが為替の動向である。日本の経常収支は大きな黒字を続けており、はっきりと明言はしなかったが、どこかの時点で円高に転換するのではないかと予想した。たしかに日銀が量的緩和を止めたり、ゼロ金利政策を止めた瞬間には為替は円高に振れた。しかし日銀の追加利上げが当分ないことがはっきりしてからは、為替は円安に逆戻りしている。特に対ユーロでは最安値を更新している。

    政府は景気が良くなったと喧伝しているが、世間では誰もそんな話を信じていない。昨年の日本経済は、円安と住宅投資に下支えされ、かろうじて底割れを回避しているのである。実際、好調なのは不動産関連と輸出企業、そして輸出企業の設備投資に関連した企業だけであった。


  • 昨年とほぼ同じ予想
    次は今年の景気予想の番であるが、本当に面白みがなく気が進まない。昨年の06/1/16(第420号)「今年の景気予想」を読み返してみたが、今年はそっくりこのままでも良いとさえ思われるほどである。正直言ってこのような状況がここ6、7年続いている。

    気をとり直して今年の予想を行う。例年どおり各需要項目の予想を積上げて予想する。はっきりしているものから取上げる。政府支出は昨年とほぼ同レベルである。公共投資は減るが、社会福祉予算は増える。消費は金額が大きいが、トータルでは大きな変動はないものと見る。名目所得が伸びないのだから消費が大きくなるはずがない。むしろ定率減税の廃止や年金納付額が増えるので、消費支出はマイナスになる可能性がある。ただ団塊の世代の退職者の退職金からの消費が期待される(反面、団塊世代の所得が減り、この面では消費にマイナス)。


    民間の設備投資は変動が大きい。たしかにバブル崩壊後の長い低水準の設備投資の反動という面はあったが、ここ数年、設備投資は好調であった。特に輸出関連企業の設備投資は伸びてきた。しかし末端の国内需要は冷え込んだままである。日経新聞はいつも設備投資が依然好調と言っているが、数字を見る限り、筆者は設備投資は下降トレンドに入ったと見る。実際、機械受注額は7月から4ヶ月連続して対前年比でマイナスである。筆者は、国内経済が不調なのに設備投資だけがいつまでも増え続けるという状況を想定できない。

    輸出は依然好調を続けると見る。国内向けの機械受注額が伸び悩んでも、機械類の輸出は伸びるものと考えられる。特に対米ドル、対ユーロで円安が進んでいるため、日本企業の輸出圧力は相当大きくなっている。

    輸入は国内の経済が不調のため伸びないと見る。特に原油代も落着いており、場合によっては輸入金額が減少することも考えられる。これらの結果、輸出額から輸入額を差引いた純輸出額は大きくなる。そして貿易・サービス収支の黒字幅はまたもや大きくなると思われる。


    よく判らないのが住宅投資の動向である。日本の経済が二極化した影響か、住宅のような高額商品の販売動向を読むのが難しくなった。そろそろピークと思われた住宅建設であったが、少なくとも昨年の末までは好調を維持した模様である。

    それにしても所得が伸びない中で、住宅だけが好調を続けることは不自然である。自動車販売に見られるように、住宅の販売もいずれ頭打ちになるものと考えられる。それが今年なのか来年なのか分からない。ただ日銀の追加利上げの話が昨年の半ばからあり、これに急かされて住宅を購入した向きがある。もしこの反動があれば、案外早く住宅投資が失速する可能性がある。


    ここまでの話を総合すれば、今年も日本経済は良くないという結論になる。内需の不振が依然続き、日本経済は一層外需依存の度合を強めることになる。そして不透明なのが為替の動向である。いつ円高になっても不思議はないのであるが、キヤリー取引というものが大きくなっているため、むしろ異常な円安になっている。世界的に見ても、為替が経常収支を均衡させる働きをなくしている。

    今年は為替が大きく変動する可能性はある。しかし中国の人民元が米ドルにまとわりついているため、急激な米ドル安・円高とは簡単にはならない。また仮に為替が円高になっても多少のことでは、日本経済に大きな影響はないと考える。

    設備投資や住宅投資の動向は不透明であるが、日本の経済は低迷したまま推移すると思われる。外需だけで日本経済を支えると言っても限界がある。もし一段の冷え込みがあるとしたなら5月頃と見ている。この点の見通しについては昨年も全く同じことを述べた(昨年は「景気の変換点があるとしたなら、5月頃ではないかと筆者は予想している」と述べた)。



来週は日本の財界を取上げる予定である。



06/12/11(第463号)「筆者の主張のサマリー」
06/12/4(第462号)「高速増殖炉にまつわる誤解」
06/11/27(第461号)「高速増殖炉の話」
06/11/20(第460号)「日本の核融合研究」
06/11/13(第459号)「将来のエネルギーの本筋」
06/11/6(第458号)「LNG(液化天然ガス)の話」
06/10/30(第457号)「筆者の国防・防衛論」
06/10/23(第456号)「日本の核武装論」
06/10/16(第455号)「北朝鮮の核実験」
06/10/9(第454号)「安倍政権の生産性」
06/10/2(第453号)「安倍政権の発足にあたり」
06/9/25(第452号)「ポスト小泉の経済論議」
06/9/18(第451号)「ポスト小泉の経済と対米外交」
06/9/11(第450号)「ポスト小泉の対アジア外交」
06/9/4(第449号)「ポスト小泉について」
06/8/7(第448号)「郵政改革と宗教戦争」
06/7/31(第447号)「郵政改革論議の混乱」
06/7/24(第446号)「宗教・哲学と経済学」
06/7/17(第445号)「宗教と哲学への入門」
06/7/10(第444号)「劣勢のケインズ」
06/7/3(第443号)「トービン税について」
06/6/26(第442号)「自由放任(レッセ-フェール)の経済」
06/6/19(第441号)「筆者の税制改正案」
06/6/12(第440号)「筆者のニート対策」
06/6/5(第439号)「美しくない話」
06/5/29(第438号)「第三セクター鉄道の危機」
06/5/22(第437号)「テレビ番組の制作現場」
06/5/15(第436号)「日銀の実態・・憶測」
06/5/8(第435号)「日銀は魔法の杖か」
06/4/24(第434号)「もう一つ勇気を」
06/4/17(第433号)「格差とマスコミ」
06/4/10(第432号)「官僚の力と限界」
06/4/3(第431号)「日経新聞のダブルスタンダード」
06/3/27(第430号)「金融政策の失敗の歴史」
06/3/20(第429号)「量的緩和解除の波紋」
06/3/13(第428号)「コンビニ弁当の話」
06/3/6(第427号)「GDPギャップのインチキ推計法」
06/2/27(第426号)「潜在GDPとGDPギャップ」
06/2/20(第425号)「労働力と経済成長」
06/2/13(第424号)「大衆社会における経済論議」
06/2/6(第423号)「皇室典範改正法案に一言」
06/1/30(第422号)「ホリエモンと政治家」
06/1/23(第421号)「改革の旗手の危機」
06/1/16(第420号)「今年の景気予想」
06/1/9(第419号)「思考停止の日本」
05/12/19(第418号)「日本人の変質」
05/12/12(第417号)「日本的経営の行く末」
05/12/5(第416号)「アメリカ人」
05/11/28(第415号)「遠ざかる豊かな社会」
05/11/21(第414号)「移民問題と市場経済」
05/11/14(第413号)「ブリエアの解放者たち」
05/11/7(第412号)「第三次小泉内閣の感想」
05/10/31(第411号)「現実経済の乗数値」
05/10/24(第410号)「公共投資に伴う誘発投資」
05/10/17(第409号)「誘発投資の拡張版」
05/10/10(第408号)「経済理論上の乗数」
05/10/3(第407号)「政治家達の沈黙」
05/9/26(第406号)「大谷氏への公開質問状」
05/9/19(第405号)「デマの検証」
05/9/13(第404号)「選挙結果の雑感」
05/8/29(第403号)「今回の総選挙を読む」
05/8/22(第402号)「今回の総選挙の沿革」
05/8/8(第401号)「中国経済の本当の脅威」
05/8/1(第400号)「中国の為替戦略」
05/7/25(第399号)「経済のグローバリズムの行末」
05/7/18(第398号)「経済のグローバリズムの本質」
05/7/11(第397号)「郵政法案と小泉政権の行方」
05/7/4(第396号)「経済のグローバリズムと競争の公正」
05/6/27(第395号)「日本語の研究」
05/6/20(第394号)「公的年金とセイニアーリッジ」
05/6/13(第393号)「日本国民全員がばん万歳の政策」
05/6/6(第392号)「公的年金とマクロ経済」
05/5/30(第391号)「マクロ経済政策で解決するもの」
05/5/23(第390号)「ヴァーチャルなもの(その2)」
05/5/16(第389号)「ヴァーチャルなもの(その1)」
05/5/9(第388号)「中国進出の主導者」
05/4/25(第387号)「鎖国主義への誘惑(その2)」
05/4/18(第386号)「鎖国主義への誘惑(その1)」
05/4/11(第385号)「ノストラダムスの大予言」
05/4/4(第384号)「法律と現実社会との間」
05/3/28(第383号)「株式に関する非常識」
05/3/21(第382号)「人とグローバリズム」
05/3/14(第381号)「資本とグローバリズム」
05/3/7(第380号)「貿易とグローバリズム」
05/2/28(第379号)「マスコミの暴走」
05/2/21(第378号)「マスコミが流す誤った概念」
05/2/14(第377号)「日本のマスコミの権力指向」
05/2/7(第376号)「日本のマスコミの体質」
05/1/31(第375号)「財政当局の変心」
05/1/24(第374号)「経済成長の条件(その2)」
05/1/17(第373号)「経済成長の条件(その1)」
05/1/10(第372号)「中国経済の実態」
04/12/13(第371号)「第一回財政研交流会」
04/12/6(第370号)「虚構の終焉(フィクション・エコノミクス)その3」
04/11/29(第369号)「虚構の終焉(フィクション・エコノミクス)その2」
04/11/22(第368号)「構造改革派の常套手段」
04/11/15(第367号)「虚構の終焉(フィクション・エコノミクス)その1」
04/11/8(第366号)「第二次南北戦争」
04/11/1(第365号)「妄言・虚言の正体」
04/10/25(第364号)「クライン博士を招いてのシンポジウム」
04/10/18(第363号)「日本経済のデフレ体質の分析(その3)」
04/10/11(第362号)「日本経済のデフレ体質の分析(その2)」
04/10/4(第361号)「日本経済のデフレ体質の分析(その1)」
04/9/27(第360号)「豊かな社会ーー競争と共生」
04/9/20(第359号)「レーガンの規制緩和の実態」
04/9/13(第358号)「今こそ大胆な政策転換を」
04/9/6(第357号)「虚言・妄言が跋扈する世の中」」
04/8/30(第356号)「日本の「韓国化」」
04/8/2(第355号)「日本の分割統治」
04/7/26(第354号)「自民党大敗北の要因分析」
04/7/19(第353号)「参院選で見たもの」
04/7/12(第352号)「日本のエネルギー自立政策」
04/7/5(第351号)「危うい石油の確保」
04/6/28(第350号)「テロと中東石油」
04/6/21(第349号)「対談の論点(再)」
04/6/14(第348号)「対談の論点」
04/6/7(第347号)「富の分配と公正」
04/5/31(第346号)「小泉首相訪朝の成果」
04/5/24(第345号)「日本に必要な財政赤字政策」
04/5/17(第344号)「土地売買の盲点」
04/5/10(第343号)「日本経済の体質と財政政策」
04/4/26(第342号)「凍り付くマネーサプライ」
04/4/19(第341号)「デフレ体質の日本経済」
04/4/12(第340号)「火星の土地」
04/4/5(第339号)「円高は構造的」
04/3/29(第338号)「規制緩和に飛びつく人々」
04/3/22(第337号)「矛盾の出発点」
04/3/15(第336号)「日経の貧乏神」
04/3/8(第335号)「実感なき経済成長」
04/3/1(第334号)「為替介入ではなく財政支出を」
04/2/23(第333号)「為替介入への道」
04/2/16(第332号)「為替介入資金の働き(その2)」
04/2/9(第331号)「為替介入資金の働き(その1)」
04/2/2(第330号)「為替介入政策の限界」
04/1/26(第329号)「今日の政治課題」
04/1/19(第328号)「今年の政局の課題」
04/1/12(第327号)「今年の日本の景気」
03/12/15(第326号)「日本の公的年金」
03/12/8(第325号)「足利銀行の破綻処理」
03/12/1(第324号)「日本経済を支えているもの」
03/11/24(第323号)「総選挙結果から見えるもの」
03/11/17(第322号)「総選挙結果の分析」
03/11/10(第321号)「総選挙の結果他」
03/11/3(第320号)「総選挙の予測」
03/10/27(第319号)「動態的会計による企業価値算定」
03/10/20(第318号)「道路公団、財務諸表の怪」
03/10/13(第317号)「藤井総裁解任劇」
03/10/6(第316号)「総裁選と総選挙」
03/9/29(第315号)「総裁選の総括」
03/9/22(第314号)「ドキュメンタリー総裁選」
03/9/15(第313号)「レポート総裁選・・その2」
03/9/8(第312号)「レポート総裁選」
03/9/1(第311号)「混迷の終始符」
03/8/25(第310号)「急がば回れ・・再び」
03/8/18(第309号)「自民党の総裁選に向けて」
03/8/4(第308号)「日本の実稼働率」
03/7/28(第307号)「設備投資の実態」
03/7/21(第306号)「企業経営と創造的破壊」
03/7/14(第305号)「頭が破壊されている人々」
03/7/7(第304号)「頭が混乱している構造改革派」
03/6/30(第303号)「経済の循環(その2)」
03/6/23(第302号)「経済の循環(その1)」
03/6/16(第301号)「経済政策の混乱」
03/6/9(第300号)「りそな銀行の件」
03/6/2(第299号)「規制緩和と日本経済」
03/5/26(第298号)「経済学と経営学」
03/5/19(第297号)「政府紙幣発行の認知度」
03/5/12(第296号)「滝田洋一氏への反論」
03/5/5(第295号)「政府紙幣発行政策の誤解」
03/4/21(第294号)「逆噴射の財政政策」
03/4/14(第293号)「危機管理下の経済政策」
03/4/7(第292号)「国債の管理政策」
03/3/31(第291号)「経済再生政策提言フォーラム」
03/3/24(第290号)「日本の有名経済学者達」
03/3/17(第289号)「波乱の株式市場」
03/3/10(第288号)「政府貨幣の理解」
03/3/3(第287号)「軽視される高橋是清の偉業」
03/2/24(第286号)「日本の清貧の思想」
03/2/17(第285号)「日本のデフレの原点」
03/2/10(第284号)「小泉首相の「もっと重要なこと」」
03/2/3(第283号)「スローパニック経済」
03/1/27(第282号)「所得を生むマネーサプライ」
03/1/20(第281号)「マネーサプライ政策の限界」
03/1/13(第280号)「データに基づく経済論」
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