平成9年2月10日より
経済コラムマガジン




06/11/6(458号)
LNG(液化天然ガス)の話

  • 本誌とエネルギー問題
    人々の関心事、別の言い方をすれば、マスコミが取上げるテーマが日々刻々と変わる。最近のテーマは「酔っぱらい運転問題」や「高校の単位の偽装問題」などである。しかしこれらの不祥事は昔から起っていたり、行われていたことである。何も今日になって唐突に取上げる必然性はない。ところが不思議なことに日本のマスコミは一斉にこの「しょうもない」テーマに飛びついているのである。

    マスコミとしては「北朝鮮の核実験騒動」が一段落し、次に人々の耳目を引付けるテーマとして「酔っぱらい運転」や「単位の偽装問題」を取上げているのであろう。ただ「北朝鮮の核実験」と「酔っぱらい運転」や「単位の偽装」では重要度の点では雲泥の差があるはずだ。ところが日本のマスコミにとっては両者に大した差がないようだ。しかし筆者は、テレビのニュースをつけトップニュースが「酔っぱらい運転問題」と分かった時、「日本のマスコミは一体何を考えているのだ」と軽いショックを受ける。


    日本の大半のマスコミは、視聴者や読者の興味を引付けるため、テーマをどんどん変える。多分日本のマスコミの言い分は、視聴者や読者の反応が「北朝鮮の核実験」と「酔っぱらい運転」や「単位の偽装」ではそう違わないということであろう。

    それでは日本人が「アホ」化していると言っているのと同じである。そんなこともあってかニュース番組がどんどんワイドショー化している。ところがこのワイドショー化したニュース番組が視聴率を稼いでいるのである。やはり日本国民が「アホ」化しているのかもしれない。


    重要な出来事も、次々に起きるどうでも良いニュースに主役の座を奪われ、マスコミの世界では片隅に追いやられている。筆者が今週取上げる「エネルギー問題」もその一つである。原油価格は1バーレル70ドル代でピークを打ち、今日では50ドル代まで下がったためか、この問題に対するマスコミの関心はほとんどなくなった。

    まるで「エネルギー問題」は片付いたという雰囲気である。しかしこの問題は今後も続くのであり、次に問題になった時に慌てても簡単には対処できない。「エネルギー問題」については日頃からの戦略的な対策というものが必要である。その意味では、今回の原油の高騰は「エネルギー問題」を考える上で良い機会だったはずだ。


    本誌は04/6/28(第350号)「テロと中東石油」04/7/5(第351号)「危うい石油の確保」04/7/12(第352号)「日本のエネルギー自立政策」と3週連続でこの「エネルギー問題」を取上げた。しかしこれも2年以上も前のことであり状況も変わり続編を書くことにした。

    前回は原油価格上昇の初期で、エネルギー問題に人々の関心が集まり始めた頃であった。筆者は特に04/7/12(第352号)「日本のエネルギー自立政策」で原油代のピークはバーレル当たり70ドルくらいと予想した。幸い今のところこれが当っていたようだ(もっとも今後、突発的な出来事が起り100ドルにでもなったら予想は外れたことになる)。また日本においてエネルギー自立政策が重要という筆者の主張はいささかも変わっていない。


  • 液化設備を持つ船の建造
    今回は先週号で提案した「天然ガスの液化設備を持つ船の建造」の補足説明から始める。これには初歩的な有機化学の説明から始めた方が良いと思われる(専門家の人々には不要で退屈かもしれないが)。石油製品は炭化水素であり、炭素と水素の組合せで成っている。炭素原子1個に水素原子4個結びついたのがメタン(CH4)、炭素2個に水素6個がエタン、炭素3個に水素8個がプロパン、炭素4個に水素10個がブタンといった具合である。そしてここまでが常温では気体(ガス)である。

    さらに炭素と水素の数が増えればガソリン、灯油、軽油そして重油となる。つまり炭素と水素の数が少ないほど気化しやすい。逆に重油より炭素と水素の数が増えれば、常温でも液体ではなく固体になる。これがアスファルトである。実際のところガソリン以降の組成はもっと複雑であるが、ここでは常温では気体のガスに絞って説明を行う。


    常温で気体(ガス)であるメタン、エタン、プロパン、プタンも冷やせば液体になる。しかしガスの中でプロパンとブタンは常温でも圧力を掛ければ液体になる(プロパンで8気圧、ブタンで2気圧)。一方、メタンとエタンは圧力だけでは液化せず、相当冷やす必要がある。特にメタンはマイナス162度でやっと液化する。

    圧力で液化するプロパンとブタンがLPG(液化石油ガス)、冷やして液化したメタンとエタンはLNG(液化天然ガス)とそれぞれ呼ばれている。

    圧力だけで液化するプロパンとブタンは扱い易く、家庭用燃料、タクシーの燃料、ライターなどに使われている。一方、メタンは通常、消費地にパイプラインで運ばれ使われる。ただ日本などメタンの生産地から遠い国は、一旦液化したメタン(LNG)を輸入し、これをガスに戻して都市ガスや発電に使っている。ところでエタンは、昔はメタンと一緒に燃やされていたが、石油化学の原料(エチレン、エタノール、ベンゼンなど)になるので、今日ではメタンと分離して回収されている。


    これらのガスは原油採掘の随伴と石油精製の過程で発生する。またメタンはこれら以外でも発生する(欧米、ロシアなどには各地にガス田がある)。ただし商業生産ということになれば、そのガス田の位置が問題になる。ここにメタンの活用の難しさがある。欧米のように生産地が消費地の近くあれば、メタンはパイプラインを使い容易に運ぶことができる。しかし日本のように生産地から離れている場合は液化というコストが別に必要になる。

    エネルギーの開発にはコストというものが常に付きまとう。マイナス162度以下にするメタンの液化にはかなり大掛かりな装置が必要である。また液化する過程で、不純物を除去したり、エタンやプロパンなどを分離することになり、これらの装置も必要である。一ケ所の設備投資額も1,000億円以上掛かっているようだ。つまりよほど大規模なガス田でなければ、液化設備の建設は商業的にペイしない。したがってLNG(液化天然ガス)の売買契約は、生産側の投資負担を考え、何十年という長い期間で設定される。


    エネルギー開発には常に不確実性がつきまとう。しかし採算を考えざるを得ない日本の民間企業は、このリスクをかぶってまでどんどんエネルギー開発を行えない。この点がメジャーと違う。一方、国は将来を見据えたエネルギー政策を持つ必要がある。ところが日本では官から民へという流れがあり、今日エネルギー開発においては国が前面に立ちにくい状況にある。

    しかし先週号で述べた「天然ガスの液化設備を持つ船の建造」みたいなことこそ国が主導で行うべきプロジェクトと筆者は思う。技術的には今日においてもこの種の船の建造は可能と考える。後はコストの問題である。そして民間企業ではこの負担は難しいというのなら、このようなことにこそ国が積極的に関与すべきと筆者は考える。もちろん天然ガスの液化設備を持つ船の活用は、なにも東シナ海のガス田に限ったものではない。



来週はエネルギー政策にまつわる誤解を中心に取上げたい。

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06/10/30(第457号)「筆者の国防・防衛論」
06/10/23(第456号)「日本の核武装論」
06/10/16(第455号)「北朝鮮の核実験」
06/10/9(第454号)「安倍政権の生産性」
06/10/2(第453号)「安倍政権の発足にあたり」
06/9/25(第452号)「ポスト小泉の経済論議」
06/9/18(第451号)「ポスト小泉の経済と対米外交」
06/9/11(第450号)「ポスト小泉の対アジア外交」
06/9/4(第449号)「ポスト小泉について」
06/8/7(第448号)「郵政改革と宗教戦争」
06/7/31(第447号)「郵政改革論議の混乱」
06/7/24(第446号)「宗教・哲学と経済学」
06/7/17(第445号)「宗教と哲学への入門」
06/7/10(第444号)「劣勢のケインズ」
06/7/3(第443号)「トービン税について」
06/6/26(第442号)「自由放任(レッセ-フェール)の経済」
06/6/19(第441号)「筆者の税制改正案」
06/6/12(第440号)「筆者のニート対策」
06/6/5(第439号)「美しくない話」
06/5/29(第438号)「第三セクター鉄道の危機」
06/5/22(第437号)「テレビ番組の制作現場」
06/5/15(第436号)「日銀の実態・・憶測」
06/5/8(第435号)「日銀は魔法の杖か」
06/4/24(第434号)「もう一つ勇気を」
06/4/17(第433号)「格差とマスコミ」
06/4/10(第432号)「官僚の力と限界」
06/4/3(第431号)「日経新聞のダブルスタンダード」
06/3/27(第430号)「金融政策の失敗の歴史」
06/3/20(第429号)「量的緩和解除の波紋」
06/3/13(第428号)「コンビニ弁当の話」
06/3/6(第427号)「GDPギャップのインチキ推計法」
06/2/27(第426号)「潜在GDPとGDPギャップ」
06/2/20(第425号)「労働力と経済成長」
06/2/13(第424号)「大衆社会における経済論議」
06/2/6(第423号)「皇室典範改正法案に一言」
06/1/30(第422号)「ホリエモンと政治家」
06/1/23(第421号)「改革の旗手の危機」
06/1/16(第420号)「今年の景気予想」
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05/11/14(第413号)「ブリエアの解放者たち」
05/11/7(第412号)「第三次小泉内閣の感想」
05/10/31(第411号)「現実経済の乗数値」
05/10/24(第410号)「公共投資に伴う誘発投資」
05/10/17(第409号)「誘発投資の拡張版」
05/10/10(第408号)「経済理論上の乗数」
05/10/3(第407号)「政治家達の沈黙」
05/9/26(第406号)「大谷氏への公開質問状」
05/9/19(第405号)「デマの検証」
05/9/13(第404号)「選挙結果の雑感」
05/8/29(第403号)「今回の総選挙を読む」
05/8/22(第402号)「今回の総選挙の沿革」
05/8/8(第401号)「中国経済の本当の脅威」
05/8/1(第400号)「中国の為替戦略」
05/7/25(第399号)「経済のグローバリズムの行末」
05/7/18(第398号)「経済のグローバリズムの本質」
05/7/11(第397号)「郵政法案と小泉政権の行方」
05/7/4(第396号)「経済のグローバリズムと競争の公正」
05/6/27(第395号)「日本語の研究」
05/6/20(第394号)「公的年金とセイニアーリッジ」
05/6/13(第393号)「日本国民全員がばん万歳の政策」
05/6/6(第392号)「公的年金とマクロ経済」
05/5/30(第391号)「マクロ経済政策で解決するもの」
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05/5/9(第388号)「中国進出の主導者」
05/4/25(第387号)「鎖国主義への誘惑(その2)」
05/4/18(第386号)「鎖国主義への誘惑(その1)」
05/4/11(第385号)「ノストラダムスの大予言」
05/4/4(第384号)「法律と現実社会との間」
05/3/28(第383号)「株式に関する非常識」
05/3/21(第382号)「人とグローバリズム」
05/3/14(第381号)「資本とグローバリズム」
05/3/7(第380号)「貿易とグローバリズム」
05/2/28(第379号)「マスコミの暴走」
05/2/21(第378号)「マスコミが流す誤った概念」
05/2/14(第377号)「日本のマスコミの権力指向」
05/2/7(第376号)「日本のマスコミの体質」
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04/12/6(第370号)「虚構の終焉(フィクション・エコノミクス)その3」
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04/11/22(第368号)「構造改革派の常套手段」
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04/11/8(第366号)「第二次南北戦争」
04/11/1(第365号)「妄言・虚言の正体」
04/10/25(第364号)「クライン博士を招いてのシンポジウム」
04/10/18(第363号)「日本経済のデフレ体質の分析(その3)」
04/10/11(第362号)「日本経済のデフレ体質の分析(その2)」
04/10/4(第361号)「日本経済のデフレ体質の分析(その1)」
04/9/27(第360号)「豊かな社会ーー競争と共生」
04/9/20(第359号)「レーガンの規制緩和の実態」
04/9/13(第358号)「今こそ大胆な政策転換を」
04/9/6(第357号)「虚言・妄言が跋扈する世の中」」
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04/7/26(第354号)「自民党大敗北の要因分析」
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04/7/12(第352号)「日本のエネルギー自立政策」
04/7/5(第351号)「危うい石油の確保」
04/6/28(第350号)「テロと中東石油」
04/6/21(第349号)「対談の論点(再)」
04/6/14(第348号)「対談の論点」
04/6/7(第347号)「富の分配と公正」
04/5/31(第346号)「小泉首相訪朝の成果」
04/5/24(第345号)「日本に必要な財政赤字政策」
04/5/17(第344号)「土地売買の盲点」
04/5/10(第343号)「日本経済の体質と財政政策」
04/4/26(第342号)「凍り付くマネーサプライ」
04/4/19(第341号)「デフレ体質の日本経済」
04/4/12(第340号)「火星の土地」
04/4/5(第339号)「円高は構造的」
04/3/29(第338号)「規制緩和に飛びつく人々」
04/3/22(第337号)「矛盾の出発点」
04/3/15(第336号)「日経の貧乏神」
04/3/8(第335号)「実感なき経済成長」
04/3/1(第334号)「為替介入ではなく財政支出を」
04/2/23(第333号)「為替介入への道」
04/2/16(第332号)「為替介入資金の働き(その2)」
04/2/9(第331号)「為替介入資金の働き(その1)」
04/2/2(第330号)「為替介入政策の限界」
04/1/26(第329号)「今日の政治課題」
04/1/19(第328号)「今年の政局の課題」
04/1/12(第327号)「今年の日本の景気」
03/12/15(第326号)「日本の公的年金」
03/12/8(第325号)「足利銀行の破綻処理」
03/12/1(第324号)「日本経済を支えているもの」
03/11/24(第323号)「総選挙結果から見えるもの」
03/11/17(第322号)「総選挙結果の分析」
03/11/10(第321号)「総選挙の結果他」
03/11/3(第320号)「総選挙の予測」
03/10/27(第319号)「動態的会計による企業価値算定」
03/10/20(第318号)「道路公団、財務諸表の怪」
03/10/13(第317号)「藤井総裁解任劇」
03/10/6(第316号)「総裁選と総選挙」
03/9/29(第315号)「総裁選の総括」
03/9/22(第314号)「ドキュメンタリー総裁選」
03/9/15(第313号)「レポート総裁選・・その2」
03/9/8(第312号)「レポート総裁選」
03/9/1(第311号)「混迷の終始符」
03/8/25(第310号)「急がば回れ・・再び」
03/8/18(第309号)「自民党の総裁選に向けて」
03/8/4(第308号)「日本の実稼働率」
03/7/28(第307号)「設備投資の実態」
03/7/21(第306号)「企業経営と創造的破壊」
03/7/14(第305号)「頭が破壊されている人々」
03/7/7(第304号)「頭が混乱している構造改革派」
03/6/30(第303号)「経済の循環(その2)」
03/6/23(第302号)「経済の循環(その1)」
03/6/16(第301号)「経済政策の混乱」
03/6/9(第300号)「りそな銀行の件」
03/6/2(第299号)「規制緩和と日本経済」
03/5/26(第298号)「経済学と経営学」
03/5/19(第297号)「政府紙幣発行の認知度」
03/5/12(第296号)「滝田洋一氏への反論」
03/5/5(第295号)「政府紙幣発行政策の誤解」
03/4/21(第294号)「逆噴射の財政政策」
03/4/14(第293号)「危機管理下の経済政策」
03/4/7(第292号)「国債の管理政策」
03/3/31(第291号)「経済再生政策提言フォーラム」
03/3/24(第290号)「日本の有名経済学者達」
03/3/17(第289号)「波乱の株式市場」
03/3/10(第288号)「政府貨幣の理解」
03/3/3(第287号)「軽視される高橋是清の偉業」
03/2/24(第286号)「日本の清貧の思想」
03/2/17(第285号)「日本のデフレの原点」
03/2/10(第284号)「小泉首相の「もっと重要なこと」」
03/2/3(第283号)「スローパニック経済」
03/1/27(第282号)「所得を生むマネーサプライ」
03/1/20(第281号)「マネーサプライ政策の限界」
03/1/13(第280号)「データに基づく経済論」
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