平成9年2月10日より
経済コラムマガジン




05/4/11(385号)
ノストラダムスの大予言

  • 構造改革派の大嘘
    本誌は、言論界やマスコミにはびこる「虚言・妄言」をずっと取上げ、これらに異義を唱えてきた。しかし一向に、発信源となっているエコノミストや経済学者にはこりた様子がない。元々の主張が「虚言・妄言」であるから、現実の経済は彼等の予想と全然違う動きとなる。ところが経済政策が彼等の「虚言・妄言」に左右されているため、これによって現実の経済や社会が悪化している。

    「虚言・妄言」の代表が「財政破綻の予言」である。橋本政権以来(小渕政権の初期を除き)、彼等の主張する公共投資の削減やタイトな財政運営を行ってきた。また構造改革を押しすすめる一環で規制緩和が行われている。彼等の予測では、一時的に経済は低迷するが、構造改革が進めば、投資が増え、経済は発展しデフレは解消されることになっていた。


    ところが橋本政権の財政再建政策が始まってから、むしろ国の累積債務のGDP比率は大きくなっている。また規制緩和は、一番弱い産業において集中的に進んでいる。これらの一連の政策によって、デフレが解決するどころか、一部の地域を除き経済は低迷している。

    公式発表の失業率は小さくなっているが、これは派遣やアルバイト・パートが増えているからである。不本意な低賃金労働が増えているのである。また正社員の方もこれらの人々との競争が厳しくなっているため、労働が強化されている。


    所得格差は確実に大きくなっている。規制緩和が及びやすい産業に携わる人々の所得が急激に減っている。しかし名目GDPが減少しているように、日本の経済は縮小しており、まともな雇用機会は減っている。つまり所得が減少しても、人々はそのような産業にしがみついている他はない。

    所得格差を示す数値にジニ係数があるが、日本は先進国の中でも大きい方であり、格差が大きいと言われている米国や英国に近付いている。しかもこの数字は数年前のものであり、もし今日調べると、日本は先進国の中で一番所得格差が大きい国ということになっている可能性がある。ところが自称知識人の間では、いまだに日本は社会主義国で、所得が平均化していると信じられている。昔からのことであるが、いかに日本の知識人という人々が不勉強で、自分達に都合の悪い情報を避けているかが分る。

    最新のジニ係数だけでなく、どういう訳か最新の「企業の開業率と廃業率」が一向に公表されない。筆者達は、2年前、総務省に電話をかけ、昨年の1月からこの調査がなされることを確認している。しかしもう1年以上経っているのに結果が公表されていないのである。構造改革派は、「創造的破壊」、つまり古いものをたたき壊せば新しいものがどんどん生まれるとデタラメを言っている。しかし現実に起っていることは「創造なき破壊」である。「企業の開業率と廃業率」の数字が出れば、このことがはっきりする。


    政府はこのような重要な数字を公表したがらない。これらが公表されれば、政府の経済政策が完全に間違っていたことが証明されるからである。国民所得が減少しているのに、所得格差だけが増大しているなんて、とんでもない経済政策である。一方、国の債務残高だけはこまめに公表し、国民をミスリードしている。

    経済的理由で、進学ができないとか学業を途中で止めるという話が増えている。昔なら考えられないことである。日本の刑務所は満杯である。変な犯罪が増えており、犯行者に無職の人が目立っている。一番危惧することは、刑務所に入りたくて犯罪を犯す人々が増えていることである。このよう人々は生き延びるために、刑務所に入る他はなくなっているのだ。こうなっては刑法が犯罪の抑止にならない。とんでもない社会になったものである。


    本来、資本主義の経済では費消されない部分が貯蓄となり、これが投資され生産力が増すことになる。また常に生産性の向上がある。つまり人々の所得は増え、生産性の向上によって余暇が増えるはずであった。たしかに一頃昔までは、このような経済の循環が実現していた。今日より明日、明日より明後日の生活が良くなるとなんとなく想われた。

    ところが財政再建派や構造改革派の人々が、経済運営の主導権を握った頃から、日本経済はおかしくなった。しかし財政再建派や構造改革派は、あらかじめ「構造改革には痛みが伴う」と言い訳を用意していた。また「日本の経済が悪くなったのは、競争力を失ったから」という大嘘をつく。このようなセリフに皆がだまされているのである。

    世界的にも構造改革派の政権は嘘が巧みなので、けっこう長く続くという特徴がある。必ず構造改革派の政治家は、構造改革を進めるに当っては、セーフティネットを設けることが必要とシャアシャアと嘘をつく。何を血迷っているのか。そのセーフティネットを壊すことが、まさに日本で進行している構造改革ではないか。


  • 責任の追求のない嘘
    日本国民は「財政が破綻する」とか「日本は国際競争力を失った」という文句にずっと脅かされ続けている。「財政が破綻する」という話が嘘ということは本誌で何回も指摘してきた。日本の財政の累積債務が大きいことは、日本の貯蓄が大きいことの裏返しである。貯蓄は使われなければ、全体の経済は縮小する。民間がこの貯蓄を使わないから、代わって政府が使って経済のバランスを取ってきた。今日、個人の金融資産は増えていないが、企業の貯蓄が増えているから、政府の債務がさらに増えているのである。

    また政府の借金は大きく見えるが、政府の金融資産も大きいので、差引の純債務のGDP比は他の先進国並である。日経の記事によれば、この正しい認識がようやく自民党の議員の間にも浸透してきたようである。金利水準を見ても、日本が財政破綻から一番遠い国であることははっきりしている。

    「日本は国際競争力を失った」という話も半分は嘘である。このようなことを言う人々は、絶対に為替レートについて触れない。しかし為替レートを無視して、国際競争力を語っても何の意味もない。これらの人々の決まり文句は、日本の産業がりストラされないと生産拠点を中国に移すと言う脅しである。

    ほんの20年前までは1米ドルが1人民元であった。つまり1元が180円ほどであった。それを今日までに中国政府は、政策的に米ドルに対して8分の1に切り下げたのである。韓国のウォンも昔は1円が1ウォンであったが、今日1円が10ウォンである。つまり両国とも何の努力もせずに、自国の通貨を切下げることによって、何百パーセントも生産性を上げたことになる。つまりどれだけ日本の企業がリストラを行って生産性を上げても、ちょっと為替を切下げれば追い付くのである。ちなみに元の大幅な切下げ後、元を米ドルにリンクさせているので、米ドル安・円高によって、ちょっと前まで1元15円だったのが、現在1元13円とさらに元安となっている。

    ところが「日本は国際競争力を失った」と言って日本にリストラを迫る人々は、卑怯にもこの為替については一切触れない。人民元のように、購買力とかけ離れた為替水準を維持している国との間では、まともな交易は成立するはずがない。間抜けな経済学者達は、リカードの「比較優位の原理」が働き、日本と中国の間に生産物の住み分けが成立つと信じている。

    しかし今日の人民元の水準が維持されるなら、全ての製品を中国で作ることが優位になる。技術移転がさほど難しいことでないとしたなら、リカードの「比較優位の原理」なんて机上の空論であり、いずれそのようなことになる。今のところまだ過渡期であり、また日本の製造業はリストラの連続によってかろうじて競争力を維持している。しかし日本がリストラの壁にぶつかり、中国への技術移転がもっと活発になり、中国が日本への輸出に本腰を入れれば、日本の産業は壊滅すると危惧される。日本こそ中国の不公正な為替政策に厳重な抗議をすべきである。これをやらずにさらなるリストラを進めろなんて、日本の自殺行為である。


    日本では、どれだけ「虚言・妄言」をはいても責任が追求されない。逆に「このままでは2006年に財政が破綻する」と嘘の主張していた財政学者は、出版社から表彰されており、今日でも日経新聞に堂々と意見を寄せている。また筆者は、「数年後には、日本は財政破綻し、ハイパーインフレが起る」とずっと人々を脅し続けていた浅井某は、さすがに消えていなくなったと思っていた。ところがこりずに今日、また2年後にはハイパーインフレが起ると脅している。日本はどうなっているのだ。

    日本人は「脅される」ことに弱い。詐欺話を簡単に信じてしまう。長い間、日本では「ノストラダムスの大予言」が信じられていた。どうも「ノストラダムスの大予言」で騒いでいたのは日本人だけのようだ。特に日本の若い人々の間では、幼稚なこの嘘話が信じられていた。筆者などが、若者に「これは嘘だ」と説得を試みても太刀打ちできなかった。「どうせ1999年に世界は終わる」と固く信じている若者が多かった。「ノストラダムスの大予言」の影響か、この世代の者は世の中を刹那的に見る傾向がある。

    しかし「ノストラダムスの大予言」の場合には救いがあった。1999年の7の月まで待てば、話がはっきりするからであった。当り前であるが、1999年の7月以降、「ノストラダムスの大予言」については全く誰も口に出さなくなった。しかしこの「虚言・妄言」を広めて儲けた人々は、全く責任を追求されていない。


    ところがもっとたちが悪いのが「財政破綻の予言者」である。「いつ」「どのように」財政が破綻するのか明言しない。また浅井某は予言を行ったその年が来ると、前に言っていた事には全く触れず、また次の2年後の予言を行う。このように「財政破綻の予言者」は、驚くほどいい加減な者ばかりである。なにしろ82年の鈴木善幸首相の「財政事情非常事態宣言」から、23年間もこの手の話が続いているのである。もういい加減に、人々はこれが真っ赤な嘘と気付いても良い頃である。



来週は、構造改革運動で壊れつつある日本的経営について述べる。

今日日本において、成果主義とか抜擢人事がもてはやされている。日本的経営によって、やる気のある者や成果のある者への報酬や見返りを小さくしているので、経済危機が訪れているという主張がずっとあった。成果主義と抜擢人事はこれに対する反動であろう。10人のうちの1人をエリートに指名して、報酬を大きくし、早くから高い地位を与えるということが行われている。しかし1人のエリートによるプラスと、残り9人がやる気を失うことによるマイナスのどちらが大きいかということである。参考の事例として三洋電機の試を注目している。ちなみに筆者は、ダイエーの長期低落が中内オーナが、息子を後継者に指名し副社長に据えた頃から始まったと思っている。

テレビ東京系のワールドサテライトの解説者の高橋進氏の発言には驚いた。郵政巡る自民党の反対派について解説を求められ、「郵政事業は今は良いが、10年もすれば赤字に転落する。国鉄と同じ運命である。しかし10年後には財政がひっ迫しており、国が国鉄の時と同じように赤字の補填ができない。自民党の政治家も段々そのことに気が付き始め、民営化に賛成するように変わっている。郵政民営化に最後まで反対するのは極めて少数である。」と断言していた。

高橋氏に問いたい。10年後に郵政事業が赤字に気が付いて、民営化に賛成に転じた自民党の政治家とは、一体誰のことなのか教えてもらいたい。だいたい国鉄の赤字と郵政事業の損益を同列に扱うとは、とても経済を語る資格のある人物とは思えない。また1年後の経済の見通しもいい加減なエコノミスに、どうして10年後の郵政事業の損益を正しく予想できるのか。ところで前にも述べたが国鉄改革の本質は、日本の最後に残っていた大きな教条的左翼勢力を押さえ込むため、民営化という手法を用いたことにある。この人物は国鉄改革の本質を何も解っていない。

この人物は本誌でも前に取上げたことがある。以前、この番組で「他の公共投資の乗数効果は小さいが、IT関連の公共投資の乗数効果は5もある」と意味不明なことを言っていた。とにかく日本の経済問題を混乱させているのは、このようなワールドサテライトなどの解説者達である。とにかく日本では、人前に出てくるエコノミストの程度の低さにはいつも驚かされる。

亀井静香勝手連の掲示板のアドレスが変更された。新しい掲示板には亀井静香勝手連のトップページから入ってもらいたい。亀井静香勝手連のアドレスは(亀井静香勝手連のホームページhttp://www.nb-j.co.jp/katteren)である。



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