平成9年2月10日より
経済コラムマガジン




03/11/17(322号)
総選挙結果の分析

  • 全体の分析
    先週号は、総選挙の結果が出たばかりだったので、予定していたコメントを加えることができなかった。選挙が終わり、新聞各社は各種の分析を行なっている。また関係者からも、色々な情報が漏れ伝わって来ている。今後、週刊誌などで詳しい話が世間に明らかになると思われる。今週号では、取り敢えず新聞の情報を元に総選挙結果を筆者なりに分析する。

    選挙結果は、ご存じの通り、民主党が大きく伸び、共産、社民、保守新党が壊滅的な敗北を喫した。やはりこれは小選挙区制の影響が大きいと考えられる。しかし共産、社民に関しては、党勢自体が長期低落傾向にあり、地方議会でも選挙の度に議席を減らしている。共産、社民の活動家や支持者は高齢化しており、はっきり言って、今後党勢を挽回することはちょっと難しいと思われる。これまで両党は自民党政権への不満票の受皿として機能した面もあるが、この種の票は民主党にそっくり流れるようになった。

    今後、日本の民主主義を考えた場合、少数意見をどのように政治に反映させて行くかが課題となろう。特に政党助成金の関係もあり、政党の中においては執行部の力が強くなっている。ただでさえ小選挙区制が開始され、政治と末端の有権者の距離が大きくなっている。このような状況では、少数意見はますます埋没して行くことになる。


    投票率は、59.9%と前回の62.5%に比べ2.6%低下した。天候は曇りがちで全国的に良くはなかった。しかし最悪と言う訳ではなかった。本来このような天候は、行楽地に行くことをあきらめる人が多くなるため、むしろ投票率は上がる要因になりうる。しかしトータルで考え、今回の総選挙に関しては、天候は投票率にあまり影響がなかったと思われる。

    投票率が低かったことは、組織票や公明票に頼る自民党に有利と言われてきた。しかし今回の投票率でもう一つ特徴的なことは、男性の投票率が高くなり、女性の投票率が低くなったことである。一般に民主党の支持者は男性に多く、自民党は逆に女性票に強い。つまり自民党にとって有利な展開(低投票率)と不利な展開(男性の投票率が高かった)が同時に起った。


    今回の選挙結果のポイントは二つある。一つは民主党と自由党の合併効果である。これで与党の政策に不満な人々の票が、新民主党に集まりやすくなった。現政権の政策に不満を持つ人々の票を集め、地方でも民主党の議席が増えた。愛知などの都市部では、合併効果が発揮され、自民党は民主党に完敗状態であった。

    もう一つは公明党票が自民党候補に投じられたことである。一方、昔からの自民党支持者のうちかなりの人々が今回の選挙に棄権したり、反対党(民主党)に投票したことは明らかである。しかし自民党はボロ負けしたと言うわけではない。開票終了当初、数の上ではマイナス10であり、追加公認と新保守党4名の加入によって、単独過半数の241以上は確保した。

    しかし一つ忘れていけないことがある。自民党は、前回記録的な低支持率の森首相の元で選挙している。その後、自民党は、他党から移った議員が相次ぎ、14議席増やしている。さらに保守新党が生まれている。その分民主党や自由党は減っていた。一見、今回自民党が比例区で善戦しているように見えるが、このような議員の移動があったことを忘れてはいけない。

    このように自民党のボロ負けを阻止したのは公明党票である。全体では公明党票の61%から65%が自民党に入った。また公明党の候補のいない小選挙区(ほとんどの選挙区)では、公明票の72%(読売新聞調べ)が自民党に投票されている。前回の選挙に比べ、この比率は10%以上増えていると推定される。つまり自公の選挙協力がある程度うまく行ったのである。

    反対に比例区では、自民党の票の一部が公明党に投じられている。この数は、自民票の6%から7%くらいと推定されている。自民系の無所属で立候補した者からの投票も加えると160万から170万くらいは、自民から公明に流れている。この種の票は、前回選挙に比べかなり増えており、公明党の議席増に大きく貢献している。そして比例の公明党の票数は870万票であるから、公明党の基礎票は700万くらいと推定される(どうもこれに加え、民主から公明に流れた票もあるようだ。これをカウントするとさらに公明の基礎票は減る)。


    小泉首相の人気が自民党に影響があったかどうかが問題である。新聞各社の出口調査では、どの新聞社の調査でも小泉内閣の支持率はほぼ50%であった。しかしこの60%しか自民党に投票していない。残りの40%は半分が公明党であり、他の大半は民主党に投票している。つまり自民党への投票に反映する小泉内閣の支持率は、50%ではなく30%ということになる。

    そして比例区の投票状況を見ると、自民党に投票するが、小泉内閣を支持しない票が10%弱はある。また自民党支持であるが、小泉政策に反感を持つため、棄権したり他党に投票している者もいる。筆者の周りにも、本来自民党支持であるが、小泉政権に反感を持つため、他党に投票している人が多くいる。これらの人々の投票行動は、小選挙区は自民に投票するが比例は他党とか、あるいはこの反対のパターン、そして両方とも他党と複雑である。少なくともマスコミで言われている「小泉人気」と言うものは幻である。


  • 個別の分析
    もう少し細かい分析を行なう。自民党の派閥に関しては、森派が大勝ち、山崎、加藤が現状維持、橋本、亀井、堀内が負けである。ボロ負けとは言わないが、反主流派はかなり数を減らした。森前首相は、新人が森派から出たがると苦しい言い訳をしている。また新聞も、人気の小泉首相と安倍幹事長がいるからと言った的外れの解説を行なっている。

    しかし前段の述べたように、小泉首相は、自民党支持者の間では、人気がないどころか反感を持つものが多い。また、橋本、亀井、堀内の三派は現職議員がバタバタ落ちているのである。また勝つにしても、かろうじて比例で復活している。ところが森、山崎、加藤派の三派では現職がほとんど落選していない。

    また橋本派でも、小泉支持を打出した現職議員は全員当選している。落ちたのは村岡兼造氏だけである。もっとも村岡氏の相手の無所属候補は、森派である。森派は現在10議席増と言うことになっているが、今後無所属議員や自民の新人でもまだ派閥に属していない者の参加が見込められるので、さらにこの数字は大きくなる。


    今回の選挙結果には、公明党の自民党への選挙協力が影響している。このことは誰もが分っていることであるが、どうもマスコミはこの辺の話を避けようとしている。「小泉人気」と言っているが、小泉政権には自民党支持者から強い反発がある(今回三重では医師会が民主党支持に回った)。ただ小泉政権は、公明党から100%の支持を受けており、このことを「小泉人気」と言っているのならたしかにこの話は正しい。

    筆者は、今回の総選挙は公明党がはりきった選挙と認識している。9日開票速報で、テレビ各社は最終議席をかなり大きく間違えた。最初、自民党がボロ負けし、民主党は200議席を越えると言っていた。筆者は、これはテレビ局が不在者投票の内訳の読みを間違えたからと考えている。不在者投票を出口調査と同じ割合で加味したと考えられるのである。

    今回の選挙では、全体の投票率が低かったのに、不在者投票数の方は最高記録であった。筆者は、これは選挙の活動家が事前に不在者投票をしていたからと考える。これらの人々は、選挙当日、彼等は投票依頼をしていた有権者に投票を促したりするため、とても忙しい。この対策として自分自身の投票は、不在者投票で済ませておくと言ったノウハウが広まっていたと考えよれる。つまり不在者投票のほとんどは、自民党、公明党の票だったと推定される。


    一週間前の各新聞の総選挙結果予測と選挙結果は微妙に違う。予想より自民党が少し減り、民主党が少し増えている。また個々の候補者を見ても結果は少し違う。断然リードとか楽勝と言われていた候補が、意外と苦戦しているのである。

    亀井静香氏も新聞の予想の段階では「大きくリード、公明支持層も5割強を確保」となっていた。ところが蓋を開けてみると、1万7千票の差と苦戦であった。なかなか当確が打たれず、とても予想通りの闘いとは言えなかった。ちなみに前回の総選挙では6万票の差であった。

    まことに奇妙なことに亀井静香勝手連のホームページ亀井静香勝手連のホームページhttp://www.nb-j.co.jp/katterenの掲示板に総選挙の二日前変な投稿があった。たしか短く「亀井氏は民主党候補に負ける」と言った内容であった。筆者は、まさかと思っていたが、現実はこれに近かったのである。この一件は、今回の総選挙を象徴しているような気がする。



今週号はとりあえず選挙結果を分析してみたが、やや表面的であった。来週号で、もう少し詳しい分析を行なうかどうか思案中である。



03/11/10(第321号)「総選挙の結果他」
03/11/3(第320号)「総選挙の予測」
03/10/27(第319号)「動態的会計による企業価値算定」
03/10/20(第318号)「道路公団、財務諸表の怪」
03/10/13(第317号)「藤井総裁解任劇」
03/10/6(第316号)「総裁選と総選挙」
03/9/29(第315号)「総裁選の総括」
03/9/22(第314号)「ドキュメンタリー総裁選」
03/9/15(第313号)「レポート総裁選・・その2」
03/9/8(第312号)「レポート総裁選」
03/9/1(第311号)「混迷の終始符」
03/8/25(第310号)「急がば回れ・・再び」
03/8/18(第309号)「自民党の総裁選に向けて」
03/8/4(第308号)「日本の実稼働率」
03/7/28(第307号)「設備投資の実態」
03/7/21(第306号)「企業経営と創造的破壊」
03/7/14(第305号)「頭が破壊されている人々」
03/7/7(第304号)「頭が混乱している構造改革派」
03/6/30(第303号)「経済の循環(その2)」
03/6/23(第302号)「経済の循環(その1)」
03/6/16(第301号)「経済政策の混乱」
03/6/9(第300号)「りそな銀行の件」
03/6/2(第299号)「規制緩和と日本経済」
03/5/26(第298号)「経済学と経営学」
03/5/19(第297号)「政府紙幣発行の認知度」
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03/5/5(第295号)「政府紙幣発行政策の誤解」
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