平成9年2月10日より
経済コラムマガジン




03/11/3(320号)
総選挙の予測

  • 総裁選での無理
    筆者は、本誌03/9/29(第315号)「総裁選の総括」で述べたように、今回の総選挙と先の総裁選は切り離せないと考える。識者の評論やマスコミ報道と異なり、小泉首相は、かろうじて総裁に再選されたと見ている。またその勝利の代償として小泉陣営は信じられないくらい数々の無理をしている。この無理によって、自民党は総選挙で不利な状況に追込まれている。

    これについての詳細は、総選挙が終わってからまた取上げることにする。また総選挙の前ということもあり、今週号はストレートな表現が難しいと感じる。亀井静香勝手連のホームページ亀井静香勝手連のホームページhttp://www.nb-j.co.jp/katterenでも総選挙公示後は、掲示板を除きページの更新を中止している。

    自民党にとって、有利な戦略は、本当は来年の参院選と同一日に総選挙を行なうことである。これは誰もが考えていたことである。特に今回は、自由党が民主党に合流した矢先であり、新民主党にある程度の勢いがある。ところが衆議院の解散を行ない、不利を承知で総選挙を急いだ。これは小泉陣営の公明党への配慮という考えが成立つ。おそらく反対に、総裁選では小泉陣営に公明党から協力があったからと推測される。

    また債務超過の財務諸表問題は一旦決着したはずなのに、またこれを蒸し返し、藤井道路公団総裁を無理に解任したことも、総裁選時の別の協力者の要請と思われる。藤井総裁は放っておいても、来年の4月には定年退職であった。このように選挙を前に、小泉政権は、頭をかしげるような事を強引に行なっている。しかしこれらのことが統べて裏目に出ており、これらのことが総選挙で自民党に不利に働いている。こんなところにも、無理に小泉氏を総裁に再選させた歪みが如実に現われている。

    さらに中曽根元首相の比例名簿登載拒否にいたっては、何が目的かさえ分らない。このことによって小泉政権に何のメリットがあるのか全く不明である。一応、小泉首相は「自民党の若手を育成し、党の若返りを図るため」と釈明している。

    しかしこれまで小泉首相は、高齢の塩川氏を長い間財務大臣に据え(病気引退しなければ、そのまま財務大臣に留任していたと思われる)、民間人をどんどん大臣に登用し、さらに今回の改造では、次の選挙に出馬せずに引退予定の参議院議員を閣僚に抜擢している。どこが若手育成だ。このような小泉首相の見え透いた嘘に、人々はものすごい嫌悪感を持っている。また今回の改造で、若手を登用したと言っているが、その若手の基準がさっぱり分らない。むしろ政策に精通しているがうるさそうな政治家の登用を避けているだけと思われる。自己主張のない川口外務大臣の留任はこの延長線上である。とにかく小泉首相にとって、政治がうまく行くかどうかなんてどうでも良いことなのだ。

    総選挙まで一週間である。この間にまだまだ小泉首相陣営の不規則的行動が行なわれる可能性がある。しかし不思議なように、小泉首相陣営の思惑に反して、これらがまた裏目に出るのである。これも小泉陣営の司令塔が一部変わったことが一因と思われる。


    マスコミは「小泉首相は人気があり、「選挙の顔」としては、小泉氏しかいない」と総裁選の時に盛んに言っていた。しかし本誌03/10/6(第316号)「総裁選と総選挙」で「党首の人気自体は、ほとんど選挙結果に関係がない。むしろ党首に人気がなくとも運動員が危機感を持ち、活発に動いた時に自民党はけっこう善戦している。ちなみに前回の総選挙は、史上最低の支持率の森首相のもとで行われたが、自民党は善戦している。党首の人気が選挙結果に影響するという話は、マスコミ自身の営業トークであり、マスコミの政治に対する脅しの一種である。」と述べた。

    ある自民党の議員は「自民党の前職議員が当選すると「自前」と表示される。自前と書いて「じまえ」と読み、まさに自民党は自前党である。」と話してくれた。たしかに党首が人気があることに越したことはないが、選挙結果にはほとんど影響がないと言っていた。大切なことは、後援会組織の運動員が熱心に活動し、昔からの支持者がちゃんと選挙に行ってくれるかにかかっている。しかし政策に強い不満がある場合は、これらの人々が十分機能しなかったり投票に行かない。問題はこれらの人々のモチベーションの高さである。

    今回の総選挙を占うには、自民党の各種の支持組織と昔からの支持者の行動の行方がポイントである。しかし最近行なわれた、埼玉の知事選や参議院補選の結果を見ていると自民党にとって極めて厳しい結果が出ている。たしかに埼玉が特殊で参考にならないという意見(土屋前知事の不祥事の影響)もあるかもしれないが、筆者はこの傾向は全国的なものと見ている。しかし対抗する民主党の大勝利とも思わない。民主党に勢いがあることはたしかであるが、少なくとも日本新党などが登場した頃のようなブームには及ばない。自民党への不満票をどれ程集められるかがカギである。


  • 総選挙のポイント
    筆者は、今回の総選挙を考える場合、先の自民党の総裁選の影響を重視している。総裁選では、積極財政派(景気重視派)と小泉氏の構造改革派が鋭く対立した。過去にこのような政策の対立が見られた総裁選はない。これまでは自民党支持者は、候補者に物足りなさを感じていても、小選挙区制のもとで自民党に投票してきた。しかし今回の総裁選で自民党は、積極財政派(景気重視派)と構造改革派の二つにみごとに別れた。自民党支持者は改めて自分はどちらに賛成なのか考えたと思われる。

    たしかに小泉首相が登場した時には、構造改革という言葉が輝いて見えた。しかし今日、構造改革で経済が上向くと信じている人は少数派になっている。これはあくまでも筆者の大胆な推測であるが、自民党の国会議員の3分の2以上は、程度の差があっても積極財政派(景気重視派)である。残りの少数派が小泉首相と同じような構造改革派である。自民党の支持者にいたっては、積極財政派(景気重視派)の割合はもっと大きくなると思われる。これは各種の世論調査でも同様の結果が出ている。

    それならどうして小泉氏が、自民党の総裁に選ばれたのか疑問に思う人が多いはずである。これは今の段階では、「一種のマジックだった」と答える他はない。また何回か述べているように、これは総裁選で小泉陣営が相当無理なことを行なった結果と考えている。そのツケが色々な形で今日回って来ているのである。


    とにかく末端の自民党支持者の希望する政策と、小泉政権の実際の政策の間には大きな溝ができている。以前の中選挙区制なら、複数の自民党の候補者の中から、自分の考えに近い候補を選ぶことができた。しかし今日は小選挙区制であり、自民党の候補者はたった一人である。たしかに前回も小選挙区制であったが、自民党の候補なら政策に大きな違いがなかった。ところが今回は、同じ自民党議員でも意見が全く違うことがはっきりしたのである。

    ところで昔からの自民党の支持者の多くは、今回の総裁選の結果を見て、相当白けている。国民が経済情勢のこれだけの悪さに直面しているのに、郵政と道路公団の民営化と言ったどうでも良いことにしか興味のない人物が総裁に再選されたのである。つまり自分達の考えと違う人物が総裁に選ばれた結果、人々は強い不満を持っている。特に地方ではこの傾向が顕著である。したがって小選挙区の自民党の候補者が自分の考えと同じなら良いが、違うケースが問題である。繰返すようであるが、自民党の総選挙の結果は、「運動員が熱心に活動し、昔からの支持者がちゃんと選挙に行ってくれるか」にかかっている。しかし筆者の予想では、雲行きはとても怪しいと感じている。


    自民党の総裁選は、候補者同士の考えにちゃんとした対立軸があり、議論を聞いていても面白かった。ところが今度の総選挙の党首の討論会は、討論会になっていない。小泉首相の主張している郵政や道路公団の民営化論に、他党は突っ込まない。民主党の高速道路の無料化案にしても、道路公団の借入金の返済を道路予算で行なうと言っている。しかし毎年2兆円も道路予算を削れば、まさにこれはデフレ政策である。ところが誰もこのことを指摘しない。互いに好きなことを発言しているだけである。このような状態で、自民党支持者だけでなく、一般の人々も政治に興味をなくすことは間違いない。

    日本人は、最近、急速に政治に期待することをあきらめている。何を言っても、政治に声が届かないと感じているのである。たしかに中には政権交代があれば、政治も変わると考える人がいる思われるが、民主党に魅力を感じる人も限られていると思われる。これは埼玉での補選の投票率の低さを見ても明らかである。


    だいたい人々は、政治とか日本全体の経済・社会と言ったことに興味をなくしている。たしかにこれだけ経済の不調が続き、将来に希望を持てない状況では、自分のことを考えるのが精一杯である。出版者の人に聞いた話では、今日政治やマクロ経済の本は全く売れないということである。経済関係で売れるのは「サバイバル本」だけである。今日の経済苦境をどのように乗り越えるか、ノウハウを提供する本である。

    このような政治に期待しない風潮が広がっている中での総選挙である。よほどのことがない限り、投票率が上がらないことが予想される。その場合には、公明党の組織票が威力を発揮することになる。しかしそれ以上に従来の自民党の支持者の投票が大きく減る可能性がある。つまり与党が政権を維持できても、公明党の発言力が強まるという図式である。驚くことに民主党も、公明党を意識した行動をとり始めている。



来週号は、総選挙の結果を踏まえ、その後の政局や経済政策について述べるため、多少アップが遅れることをご了承願いたい。

筆者は、小泉首相や小泉内閣の本当の支持率は、公表されているマスコミの数値よりずっと低いと見ている。そして首相の支持率は、総選挙にそれほど影響しないと本文で述べたが、自民党の議員やマスコミの一部には、まだ小泉人気神話が根強く残っている。この神話が本当なのかどうかは、一週間後にはっきりする。

小泉首相自身は自分は人気者と思っているかもしれないが、反対に小泉首相を嫌ったり、憎んでいる人の数はものすごく多い。マスコミの小泉内閣支持率が急落している。しかし支持率がそんなに短期間に下落するのもおかしい。むしろこれまでごまかしていた数字を、実際の支持率に調整中と理解している。

自民党が長期政権を維持できたのは、ライバル政党の主張を巧みに取入れ、政策の幅を広げてきたからである。これによってライバル政党を無力化するのに成功した。たとえば福祉を主張する社会党に対して、自民党は福祉政策を充実させた。具体的には国民皆保険、国民皆年金、住宅政策、中小企業対策、教科書の無料配布などである。そして小泉政権は、民主党の構造改革に対して、同様に構造改革路線で対抗して民主党を無力化した。民主党の支持率が伸びないのも、小泉自民党の改革路線への転換が影響している。

しかしこれだけ不況が続き、地方の経済が疲弊すれば、従来の自民党の支持者(自民党にしか投票しない人々)も、いい加減自民党を見限る。民放の調査をみると、投票率は4%くらい減りそうである。この4%のほとんどが従来の自民党の支持者とすれば、自民党は苦戦することになる。

さらにこれまで従来の自民党の支持者(特に地方)は、棄権することはあっても、他党に投票することはめったになかったが、今回は分らない。筆者の知っている東京の自民党員は、あきれかえっており「今回は共産党にでも投票しよう」と冗談ともつかないことを言っている。今回の選挙で自民党が勝てば「やはり改革路線が正しい」と言うだろうし、反対に、自民党が議席を減らし民主党が勝っても「改革路線の打出し方が弱かった」と小泉首相は言い出すような気がする。

小泉首相も自民党の敗北を意識してか、勝敗ラインを極端に下げている。与党三党で過半数を取れば、責任は生じないとばかなことを言っている。だいたい与党三党ではなく、自民党の獲得議席が問題であろう。

ものすごく不人気だった森政権の元でも233の議席を獲得したのである。保守新党と公明の議席が40とすれば、自民党が201取れれば過半数の241議席になる。自民党の現有議席が247だから、46も議席が減っても責任問題はないと言っているのである。当然、この小泉首相の勝敗ラインについては、党内から「ふざけるな」と言う声が随分あるはずだが、不思議なことにこのような反響が一切マスコミに乗らない。

小泉首相の名古屋遊説での「後三年間は景気は回復しない」発言の影響が懸念される。「構造改革の芽が出て来た」発言とは明らかに矛盾している。市場や総選挙結果への影響が注目される。



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