平成9年2月10日より
経済コラムマガジン

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00/6/26(第168号)
効果ある失業対策
  • 不況カルテルの適用
    先々週号で、筆者の考える失業対策についてざっと説明した。もちろん失業対策として、財政政策と金融政策による内需拡大も大切である。しかしこれだけでは不十分であり、もっと直接的な対策が必要である。

    一つは、国内向きの成熟したサービス産業で、過剰競争に陥りやすい分野での競争の制限である。一つの具体的な方法は不況カルテルの適用である。このような分野は、規制緩和を進めても、価格が低下するだけで、需要がそれほど増えない分野である。むしろこのような分野は、規制緩和を進めるより、雇用の確保に重点を置いた施策に転じるべきである。

    現実の経済を知らないエコノミストは、さらに規制緩和を進め、投資を誘発すべきといつも言っているが、今日日本には規制緩和で投資が大きく増大するような分野はほとんどない。あるのなら具体的に示すべきである。彼等の話は、いつもNTTの接続料の引下げの話ばかりである。接続料の引下げでどれだけの投資が増えると言うのか。さらにNTTの接続料の引下げと言うことになれば、NTTは設備投資を減少させるはずである。このマイナスとの見合いと言うことになり、単純に新規の設備投資だけが増えると言うことにはならない。ちょうど電気料金の引下げに伴い電力会社が設備投資を減少させたことと似ている。この時には日立などの重電機メーカは、売上が減り、業績を悪化させたのである。

    特にその分野が成長産業でないのなら、自由化が進み競争が激化すれば、利益が見込めないことは容易に分る。一体誰がそのような分野に投資なんかするのであろうか。もし投資が増えるとすれば、唯一経営判断を間違えたケースだけである。実際、大店法の改正による規制緩和で、デパートや大手スーパが設備投資を大幅に増やした。ところがこれらの企業は揃って、経営危機に直面している。大きな貯蓄を背景に、融資を増やしたい銀行は、企業の採算を無視して、資金を企業に提供しがちである。しばらく前までは、担保となる土地があれば、安易に融資を行ってきたのである。

    ガソリンスタンドも自由化が進んだ。しかし設備投資が増えるどころか、廃業するスタンドが跡を立たない。そして筆者は、もし石油業界で規制緩和を進めるのだったら、20年以上も前に行うべきであったと考えている。当時なら、スタンドの跡地も他の店鋪への転用ももっと容易であったはずである。今は規制緩和を推進する時期ではない。
    需要の伸びが期待できない今日では、逆に競争を制限する方向に行くべきである。つまり不況カルテルの適用である。これによって雇用を維持する方が、国民経済にとって、より大きなメリットがあると思われる。

    建設業界やタクシー業界も同様である。提供するサービスが同質であり、差別化が難しく、多数の小さな企業で構成されている業界は、規制緩和を進めると直ぐに過当競争となる。需要が伸びている時代は良いが、今日のような低成長の時代では、競争激化はこのような業界に勤める人々の死活問題となる。

    たしかに経済の実態を知らない経済学者が言うように、規制緩和を行えば、価格が低下し、消費者にとってメリットはある。しかし純粋に消費者であるのは、年金生活者と金利生活者だけであろう。多くは消費者であると同時に供給者である。このような状況で一律に規制緩和を進めると、所属している産業分野によって所得の格差が異常に拡大することになる。これまで話をしてきたような業界では、所得が下がり、失業が発生することになる。一方、規制緩和がどうしても及ばない分野や業界が存在する。ここに勤める者は、全体の規制緩和が進むことによる物価の下落により、相対的に所得が増えることになる。

    法律などで価格競争が制限されている業界は安泰である。よく話題になる金融機関だけではない。最近、高給過ぎると週刊誌で取上げられる、免許制のテレビ局なども典型例である。新聞も再販価格を維持と言うカルテルを行っている。ある大手の新聞社は、一社で3,000名もの新聞記者がいると言う話である。このようなマスコミが先頭に規制緩和の合唱を行っている。そして訳の分らないエコノミストがマスコミに媚を売るようにこれに同調している。
    そして極めつけは公務員である。規制緩和と一番縁遠いのが、公務員である。つまり規制緩和で最大のメリットを受けるのが公務員である。そう言えば、特に規制緩和に熱心なのは、通産省の役人と国立大学の経済学の教授である。


  • 究極の失業対策
    建設業界やタクシー業界などが過当競争に陥りやすいことは前段で説明した。たしかに規制緩和が進み、その結果このような業界にもリストラが行われても、もし他に良い就職口があれば、問題は小さいであろう。しかし今日の日本のように雇用の流動性が乏しい国では、次の受け皿が全くない。むしろこのような業界が、他の産業からの失業者の受け皿だったのである。

    始めからタクシーの運転手の人だったと言う人はまずいない。長距離トラックの運転手や、自営業をやっていた人々が転職してタクシーの運転手をやっているのである。中には事業に失敗してタクシーの運転手になっている人もいる。つまりタクシーの運転手なら人並みの収入が得られると期待して転職してきたのである。ところが、この不況と競争の激化で思惑は外れているのである。

    建設業界はもっと深刻である。この業界も他の仕事から転職して人々が多い。しかし10年前のことを思い出してみれば良い。建設業界は、いわゆる3K職場、つまり「きつい、危険、きたない」とどちらかと言えば人々から敬遠された業界である。そこへあえて転職してきたのである。ところがこのような業界も、工事単価のカットや工事量の減少に直面している。そしてこの業界からリストラされた人々には、もう行くところがほとんどない状態である。

    先日、これまで一方的に進められてきた規制緩和に、ようやく待ったを掛ける動きが自民党の中からあった。筆者は当然のことと考えている。
    よく取上げられるのは酒類販売に関わるものとタクシー業界に関わるものである。ところが、これに対して案の定、マスコミやエコノミストは「改革の後退」と声高に非難を行っている。

    経済が順調に成長している時ならともかく、今日のようなデフレ経済が続く日本で、本来、失業者の受け皿になるような業界を合理化してどうなる。IT革命で雇用が増えると言っても、どれだけの実績があるのであろうか。ましてや後がないと言う状態の人々が、簡単にIT関連業界に移ることができるとでも考えているのであろうか。


    大手の企業は依然過剰雇用を抱えている。為替の動向も関係してくるが、今後も大手の企業には合理化の圧力が掛かることは必至である。しかしこれらの企業からの失業者にも受け皿がない。政府は、職業訓練と補助金でこれを解決しようとしている。しかしこれがうまく行くはずがない。どの企業も余剰人員を抱えているのである。実際、これまで政府の失業対策はほとんどうまく行っていない。

    これにも増して問題なのは、新卒者の就職口である。新卒者の就職状況が悪化している。彼等の立場から見れば、今日「ろくな就職口」がない。したがって就職しても、直ぐに辞めてしまう。そして筆者は、「ろくな就職口」がないと言うこと自体が彼等の日常の行動に微妙に影響していると考える。これは経済問題と言うより、もはや社会問題である。しかし企業にとっては、長年勤めた者を辞めさせるより、新卒者の採用を取り止める方が容易なのである。
    色々考えたが、筆者は、これらの問題に対する具体的な対策は「公務員の増員」しかないと言う結論に達した。つまり企業の余剰人員を特別の公務員として採用し、一方企業は新卒者を採用するのである。そしてこれが究極の失業対策である。



来週号は失業問題の締めくくりとして、失業対策における国と民間の役割分担について述べることにする。



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00/6/19(第167号)「総選挙と「無党派層」」
00/6/12(第166号)「本当の「セーフティーネット」」
00/6/5(第165号)「日本の産業構造と失業」
00/5/29(第164号)「GDPと政策目標」
00/5/22(第163号)「グローバル化と市場の競争」
00/5/15(第162号)「経済のグローバル化とNGO」
00/5/8(第161号)「インターネットと株式市場」
00/4/24(第160号)「米国の株式市場の行方」
00/4/17(第159号)「Eコマースの将来性(その2)」
00/4/10(第158号)「Eコマースの将来性(その1)」
00/4/3(第157号)「「日銀による国債の引受」政策」
00/3/27(第156号)「インフレとデフレの功罪(その2)」
00/3/20(第155号)「インフレとデフレの功罪(その1)」
00/3/13(第154号)「国債の日銀引受に関わる諸問題」
00/3/6(第153号)「資金供給の増大とインフレ」
00/2/28(第152号)「澱んだ資金の経済への影響」
00/2/21(第151号)「もう一つの累積債務の解決方」
00/2/14(第150号)「政府の累積債務に関わる問題」
00/2/7(第149号)「ペイオフ延期騒動と日経新聞」
00/1/31(第148号)「「ペイオフ強行派」への反論」
00/1/24(第147号)「「ペイオフ解禁」の延期」
00/1/17(第146号)「有力エコノミストの対談」
00/1/10(第145号)「新年度の経済を見通す」
99/12/20(第144号)「為替の話あれこれ(その1)」
99/12/13(第143号)「中堅以下の企業のリストラ」
99/12/6(第142号)「大企業のリストラ」
99/11/29(第141号)「商工ローンと日本人」
99/11/22(第140号)「あやしい常識」
99/11/15(第139号)「金融のさらなる量的緩和」
99/11/8(第138号)「為替変動と日銀」
99/11/1(第137号)「ニセ札とインフレ」
99/10/25(第136号)「もう一つの実質金利の実体」
99/10/18(第135号)「もう一つの実質金利」
99/10/11(第134号)「もう一つの調整インフレ」
99/10/4(第133号)「日銀の独立性(その2)」
99/9/27(第132号)「日銀の独立性(その1)」
99/9/20(第131号)「社会的欲求と日本経済」
99/9/13(第130号)「欲求と日本経済成長の関係」
99/9/6(第129号)「日本経済と欲求の限界(その2)」
99/8/30(第128号)「日本経済と欲求の限界(その1)」
99/8/9(第127号)「エコノミストの格付け(その3)」
99/8/2(第126号)「エコノミストの格付け(その2)」
99/7/26(第125号)「エコノミストの格付け(その1)」
99/7/19(第124号)「規制緩和と通産省」
99/7/12(第123号)「供給サイドの経済学」
99/7/5(第122号)「インターネットと日本経済(その2)」
99/6/28(第121号)「インターネットと日本経済(その1)」
99/6/21(第120号)「銀行員とリスク(その2)」
99/6/14(第119号)「銀行員とリスク(その1)」
99/6/7(第118号)「銀行のバブル期の行動」
99/5/31(第117号)「日本の銀行とリスク」
99/5/24(第116号)「需給ギャップと景気回復」
99/5/17(第115号)「経済の構造改革」
99/5/10(第114号)「サマータイムと日本人」
99/5/3(第113号)「地価動向と景気回復」
99/4/26(第112号)「お金持ちとリスク」
99/4/19(第111号)「日本のお金持ち」
99/4/12(第110号)「寡占と所得の分配」
99/4/5(第109号)「寡占市場の話」
99/3/29(第108号)「完全競争市場の話」
99/3/22(第107号)「独占市場の話」
99/3/15(第106号)「本誌の経済予想とその間違い」
99/3/8(第105号)「景気の現状(99年春)」
99/3/1(第104号)「立派な社会と景気回復」
99/2/22(第103号)「現代の日本経済と投資」
99/2/15(第102号)「需給ギャップと投資」
99/2/8(第101号)「99年度の経済を見通す」
99/2/1(第100号)「公共投資の将来を考える」
99/1/25(第99号)「今後の景気対策を考える(その2)」
99/1/18(第98号)「景気の見通しを考える」
99/1/11(第97号)「今後の景気対策を考える(その1)」
98/12/28(第96号)「不況の原因と消費税減税を考える」
98/12/21(第95号)「米国経済の光と影を考えるーーその2」
98/12/14(第94号)「米国経済の光と影を考えるーーその1」
98/12/7(第93号)「自自連立政権を考える」
98/11/30(第92号)「公共投資と経済を考えるーーその2」
98/11/23(第91号)「緊急経済対策を考える」
98/11/16(第90号)「公共投資と経済を考えるーーその1」
98/11/9(第89号)「「空気」を考えるーーその2」
98/11/2(第88号)「「空気」を考えるーーその1」
98/10/26(第87号)「景気対策論議を考える」
98/10/19(第86号)「為替レートの今後のトレンドを考える」
98/10/12(第85号)「経済の「あいまいさ」を考えるーーその3」
98/10/5(第84号)「経済の「あいまいさ」を考えるーーその2」
98/9/28(第83号)「経済の「あいまいさ」を考えるーーその1」
98/9/21(第82号)「為替レートのトレンドを考える」
98/9/14(第81号)「バブルの清算と公金投入を考える」
98/9/7(第80号)「公金投入の整合性を考える」
98/8/31(第79号)「政治と経済の混乱を考える」
98/8/10(第78号)「今回の不況の原因を考える」
98/8/3(第77号)「新政権の人事を考える」
98/7/27(第76号)「小淵新自民党総裁誕生を考える」
98/7/20(第75号)「橋本総理退陣を考える」
98/7/13(第74号)「マスコミの驕りを考えるーーその2」
98/7/6(第73号)「マスコミの驕りを考えるーーその1」
98/6/29(第72号)「参院選と経済を考える」
98/6/22(第71号)「為替介入の背景を考える」
98/6/15(第70号)「橋本総理と円安を考える」
98/6/8(第69号)「日本の金融を考える」
98/6/1(第68号)「経済への関心を考える」
98/5/25(第67号)「世論と経済政策を考えるーーその2」
98/5/18(第66号)「世論と経済政策を考えるーーその1」
98/5/11(第65号)「アンケートと経済政策を考える」
98/5/4(第64号)「今回の景気対策を考える」
98/4/27(第63号)「消費の限界を考えるーーその2」
98/4/20(第62号)「消費の限界を考えるーーその1」
98/4/13(第61号)「恒久減税を考える」
98/4/6(第60号)「今回の自民党の景気対策を考える」
98/3/30(第59号)「米国の対日経済要求を考える」
98/3/23(第58号)「新日銀総裁の就任を考える」
98/3/16(第57号)「今回の不況の深刻さを考える」
98/3/9(第56号)「日米の景気対策を考える」
98/3/2(第55号)「日経新聞と経済を考えるーーその2」
98/2/23(第54号)「日経新聞と経済を考えるーーその1」
98/2/16(第53号)「貸し渋りと景気を考える」
98/2/9(第52号)「政治と経済を考える」
98/2/2(第51号)「官僚と経済を考える」
98/1/26(第50号)「「小さな政府」を考えるーーその3」
98/1/19(第49号)「「小さな政府」を考えるーーその2」
98/1/12(第48号)「「小さな政府」を考えるーーその1」
97/12/22(第47号)「需要不足の日本経済を考える」
97/12/15(第46号)「景気の現状と対策を考えるーーその8」
97/12/8(第45号)「景気の現状と対策を考えるーーその7」
97/12/1(第44号)「京都会議と経済を考える」
97/11/24(第43号)「景気の現状と対策を考えるーーその6」
97/11/17(第42号)「景気の現状と対策を考えるーーその5」
97/11/10(第41号)「景気の現状と対策を考えるーーその4」
97/11/3(第40号)「景気の現状と対策を考えるーーその3」
97/10/27(第39号)「景気の現状と対策を考えるーーその2」
97/10/20(第38号)「景気の現状と対策を考えるーーその1」
97/10/13(第37号)「市場の心理を考える」
97/10/6(第36号)「公共事業とマスコミを考える」
97/9/29(第35号)「リクルート事件と経済を考える」
97/9/22(第34号)「ロッキード事件と経済を考える」
97/9/15(第33号)「住宅と貯蓄を考える(その2)」
97/9/8(第32号)「住宅と貯蓄を考える(その1)」
97/9/1(第31号)「労働組合と経済を考える」
97/8/25(第30号)「競争時代の賃金を考える」
97/8/18(第29号)「米国経済の生産性の向上を考える」
97/8/11(第28号)「米国の景気を考える(その2)」
97/8/4(第27号)「米国の景気を考える(その1)」
97/7/28(第26号)「内需拡大と整備新幹線を考える(その2)」
97/7/21(第25号)「内需拡大と整備新幹線を考える(その1)」
97/7/14(第24号)「香港返還と中国経済を考える(その2)」
97/7/7(第23号)「香港返還と中国経済を考える(その1)」
97/6/30(第22号)「日本の米国債保有を考える」
97/6/23(第21号)「投機と市場を考える」
97/6/16(第20号)「規制緩和と日米関係を考える」
97/6/9(第19号)「ビックバンと為替を考える」
97/6/2(第18号)「内需拡大と公共工事を考える(その2)」
97/5/26(第17号)「内需拡大と公共工事を考える(その1)」
97/5/19(第16号)「金利と為替を考える」
97/5/12(第15号)「規制緩和と景気を考える」
97/5/5(第14号)「為替の変動を考える」
97/4/28(第13号)「日本の物価と金利を考える(その2)」
97/4/21(第12号)「日本の物価と金利を考える(その1)」
97/4/14(第11号)「日本の土地価格を考える」
97/4/7(第10号)「当マガジン経済予測のレビュー」
97/3/31(第9号)「日本の株式を考える」
97/3/24(第8号)「たまごっちと携帯電話を考える」
97/3/17(第7号)「政府の景気対策を考える」
97/3/10(第6号)「オリンピックと景気を考える」
97/3/3(第5号)「為替レートの動向を考える(その2)」
97/2/24(第4号)「為替レートの動向を考える(その1)」
97/2/17(第3号)「日本の金利水準と為替レートを考える」
97/2/10(第2号)「国と地方の長期債務残高を考える」
97/2/1(第1号)「株価下落の原因を考える」「今後の景気動向を考える」

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