平成9年2月10日より
経済コラムマガジン

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99/12/13(第143号)
中堅以下の企業のリストラ
  • 厳しいリストラの実態
    今のところ大企業のリストラは、先週号で述べたように、それほど深刻な状況ではない。リストラと言っても、新卒者の採用減や関連会社などへの出向・転籍が主な手段である。希望退職を募る場合も、好条件を提示している。いきなり「指名解雇」を行うと言うケースはほとんど聞かない。また一昨年の大型金融機関の破綻以降、建設土木・商社と言った一部の業種を除き、大きな人員整理を伴う大手企業の破綻は影を潜めている。このように大企業の場合、リストラで会社を辞める場合でも、まだまだ「ハッピーリタイアメント」が普通である。

    ところが、中堅以下の企業の場合は状況が大きく異なる。一般的に企業の規模が小さくなるほど市場での競争は厳しくなる。したがって中小企業は、元々余剰人員と言うものを抱えている余裕がない。つまり誰でもいきなり失業に直面する可能性がある。人員整理の場合でも、大企業のような手厚い条件が提示されることは稀である。特に今日の円高の進行により、輸出関連の中小企業は苦しい立場に立たされている。

    中小企業の従業員のリストラにおける厳しい状況は、労働省の統計でもはっきり示されている。過去3年間で倒産や解雇・人員整理など特に厳しい離職を迫られた企業規模別の人数である。該当者の合計は43万人であるが、従業員が30人未満の企業で20万人・47%、30人以上500人未満の企業で17万人・39%である。500人以上の大企業では残り6万人・14%となっている。
    たしかに企業規模別の全体の従業員に占める比率が問題になる。しかし労働省の数字と入手可能な中小企業庁の企業の規模別の人数の捉え方が異なるので、筆者はこれを推定で示す外はない。中小企業庁の数字を元に、筆者は、非一次産業の500人以上の従業員の数は日本全体で35%前後と推定している。つまり500人以上の大企業で厳しいリストラを迫られたケースの14%は、これに比べかなり小さい数字である。さらに従業員の数が大きくな大企業ほど、この差は大きくなると考えられる。このように本当に厳しいリストラに直面しているのは、今のところ主に中小企業の従業員である。

    次に企業と構造改革について言及する。たしかに不景気にも拘わらず、現状では中小企業の倒産は低い水準で推移している。これは明らかに、政府の中小企業の対する20兆円の信用保証枠(10兆円がさらに増額される予定)の設定の効果である。筆者は、この政策を政府のヒット策と考えている。しかしこの信用保証枠の設定に対して「整理淘汰されるべき企業が延命され、構造改革が先送りされる」と言う意見を最近よく聞くようになった。しかしこの信用保証枠の設定は、不景気に加え、銀行の「貸し渋り」、つまり金融仲介機能の低下に対応するものである。いわば非常時の対策である。

    しかしこのような発言を行うエコノミストの特徴は、肝腎の「構造改革」の中味をはっきり言わないことである。筆者は、それは本人達にもアイディアがないからと考えている。まったく無責任なことであり、これについては別の機会にまた述べることにする。
    昔のように、経済がどんどん拡大している時代なら、既存の業種から他の成長業種への転換もスムースに進めることができるが、今日の日本のように、どんづまり状態では新規事業と言っても難しい。実際、新規事業で失敗しているケースが実に多いのである。またビジネスチャンスらしきものが登場すると、どの企業もそれに飛びつき、たちまち儲からなくなるのが実態である。


  • 大企業のリストラの今後
    有力な大企業が次々に大規模なリストラ計画を発表し、マスコミで話題になっている。しかしその実態は本誌が先週号から述べているように、従業員にとってはそれほど深刻な状況ではない。今のところ話題が先行しているだけである。前述したように実際に厳しいのは中小企業である。

    筆者は、以前、日本の大企業の雇用状況を「ぬれ雑巾」と表現した。つまり人員的にはまだまだ合理化する余地があると言う意味である。出入業者への単価の引下要請や交際費などの経費のカットを経て、大企業はようやく人員の問題に到達したところである。そしてリストラのやり方はまだまだソフトである。
    しかし今後も同じような状況が続くとは思われない。大企業には今後、さらに第二、第三のリストラが構えているのである。筆者は、徐々に企業には余裕がなくなり、リストラの方法も一段と厳しくなるはずと考えている。したがって日本の大企業においては、従業員は、年金の支給を含め、一才でも年をとっている方が有利と考える。同期入社でも、大学に浪人して入った者の方が、年をくっている分有利なのである。

    筆者はここまでリストラの善し悪しについて述べてこなかった。むしろ筆者はリストラを善し悪しを論ずる前に、避けがたいものと考えている。特に大企業は余剰人員を大量に抱えているのであるから、今後は大企業からかなりの数の失業が発生することは十分予想される。。さらにリストラの主な対象である団塊の世代は、人数のうえでも各企業で特に突出しており、企業の年令構成を歪になものにしている原因でもある。したがってこの年代の者はいずれ人員整理の対象になる可能性は強かった。それが今日本格的にやって来たのである。

    話はちょっと変わるが、エコノミストのほとんどは、10年前のバブル経済を非難する。これを擁護する者はほとんど皆無である。しかし筆者はちょっと違う意見を持つ。たしかにバブル経済は異常な状況であり、色々な面に後遺症も残した。しかし筆者は、元々資本主義経済には常になにかしらバブル的なものがつきまとうものと考えている。

    問題のバブルは、為替レートが短期間のうちに240円から120円に急激に上昇した状況を背景に生まれた。政府は為替の急激な円高に対応するための経済対策、つまり景気対策を行った。しかし政府の景気対策は、当時の財政再建路線を意識し、財政出動を控え目にしたため、どうしても金融に偏重することになった。この結果、不動産投機が活発になり大きなバブルが生成されることになった。しかし方法はともあれ、景気は、奇跡的にも大きな落込みを見せず回復したのである。

    バブルを発生を押さえながら、円高不況を克服する方法があったかもしれないが、当時の日本の「空気」と日本人の知恵では無理だったのである。しかし景気はみごとに回復したのである。もしもと言う仮定で、当時バブルの発生をおそれ、政府が景気対策に躊躇し、円高不況が深刻になっていたら、今日行われているリストラは10年以上前から行われていたと筆者は考える。ターゲットはもちろん団塊の世代以上である。つまりバブル経済のおかげで、リストラが10年延長されたと言うのが筆者の感想である。また橋本政権の経済政策のミスがなければ、さらに5年間は大丈夫だったかもしれないとも考えている。

    これからも続く大企業のリストラの影響は、大企業の間に止まることはない。当然、中小企業を始め、日本全体に影響を与える。しかし誰もリストラの流れを止めることはできないと考える。たしかにちょっと前まで、完全雇用が当り前であった日本では、有効な雇用対策を行える態勢ができていない。日本では全体が、失業に対する対応にまだ慣れていないのである。少なくとも政府が行うべきことは、計画されている景気対策を自信を持って確実に行い、リストラに伴う痛みをできる限り和らげることである。筆者は、失業問題に対しては、「ワークシェアリング」などを含め、社会全体で知恵を出し合うべきと考える。そして税収不足と言って、安易に世論に迎合し、景気対策に逆行するよう「たばこの値上げ」などは決して行うべきではない。



来週号は今年の最終号である。来週号では、為替がまた円高傾向に推移していることもあり、為替が経済に及す影響について考えてみることにする。今週号で取上げたリストラも、為替の動向と密接な関係があると考えている。


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99/12/6(第142号)「大企業のリストラ」
99/11/29(第141号)「商工ローンと日本人」
99/11/22(第140号)「あやしい常識」
99/11/15(第139号)「金融のさらなる量的緩和」
99/11/8(第138号)「為替変動と日銀」
99/11/1(第137号)「ニセ札とインフレ」
99/10/25(第136号)「もう一つの実質金利の実体」
99/10/18(第135号)「もう一つの実質金利」
99/10/11(第134号)「もう一つの調整インフレ」
99/10/4(第133号)「日銀の独立性(その2)」
99/9/27(第132号)「日銀の独立性(その1)」
99/9/20(第131号)「社会的欲求と日本経済」
99/9/13(第130号)「欲求と日本経済成長の関係」
99/9/6(第129号)「日本経済と欲求の限界(その2)」
99/8/30(第128号)「日本経済と欲求の限界(その1)」
99/8/9(第127号)「エコノミストの格付け(その3)」
99/8/2(第126号)「エコノミストの格付け(その2)」
99/7/26(第125号)「エコノミストの格付け(その1)」
99/7/19(第124号)「規制緩和と通産省」
99/7/12(第123号)「供給サイドの経済学」
99/7/5(第122号)「インターネットと日本経済(その2)」
99/6/28(第121号)「インターネットと日本経済(その1)」
99/6/21(第120号)「銀行員とリスク(その2)」
99/6/14(第119号)「銀行員とリスク(その1)」
99/6/7(第118号)「銀行のバブル期の行動」
99/5/31(第117号)「日本の銀行とリスク」
99/5/24(第116号)「需給ギャップと景気回復」
99/5/17(第115号)「経済の構造改革」
99/5/10(第114号)「サマータイムと日本人」
99/5/3(第113号)「地価動向と景気回復」
99/4/26(第112号)「お金持ちとリスク」
99/4/19(第111号)「日本のお金持ち」
99/4/12(第110号)「寡占と所得の分配」
99/4/5(第109号)「寡占市場の話」
99/3/29(第108号)「完全競争市場の話」
99/3/22(第107号)「独占市場の話」
99/3/15(第106号)「本誌の経済予想とその間違い」
99/3/8(第105号)「景気の現状(99年春)」
99/3/1(第104号)「立派な社会と景気回復」
99/2/22(第103号)「現代の日本経済と投資」
99/2/15(第102号)「需給ギャップと投資」
99/2/8(第101号)「99年度の経済を見通す」
99/2/1(第100号)「公共投資の将来を考える」
99/1/25(第99号)「今後の景気対策を考える(その2)」
99/1/18(第98号)「景気の見通しを考える」
99/1/11(第97号)「今後の景気対策を考える(その1)」
98/12/28(第96号)「不況の原因と消費税減税を考える」
98/12/21(第95号)「米国経済の光と影を考えるーーその2」
98/12/14(第94号)「米国経済の光と影を考えるーーその1」
98/12/7(第93号)「自自連立政権を考える」
98/11/30(第92号)「公共投資と経済を考えるーーその2」
98/11/23(第91号)「緊急経済対策を考える」
98/11/16(第90号)「公共投資と経済を考えるーーその1」
98/11/9(第89号)「「空気」を考えるーーその2」
98/11/2(第88号)「「空気」を考えるーーその1」
98/10/26(第87号)「景気対策論議を考える」
98/10/19(第86号)「為替レートの今後のトレンドを考える」
98/10/12(第85号)「経済の「あいまいさ」を考えるーーその3」
98/10/5(第84号)「経済の「あいまいさ」を考えるーーその2」
98/9/28(第83号)「経済の「あいまいさ」を考えるーーその1」
98/9/21(第82号)「為替レートのトレンドを考える」
98/9/14(第81号)「バブルの清算と公金投入を考える」
98/9/7(第80号)「公金投入の整合性を考える」
98/8/31(第79号)「政治と経済の混乱を考える」
98/8/10(第78号)「今回の不況の原因を考える」
98/8/3(第77号)「新政権の人事を考える」
98/7/27(第76号)「小淵新自民党総裁誕生を考える」
98/7/20(第75号)「橋本総理退陣を考える」
98/7/13(第74号)「マスコミの驕りを考えるーーその2」
98/7/6(第73号)「マスコミの驕りを考えるーーその1」
98/6/29(第72号)「参院選と経済を考える」
98/6/22(第71号)「為替介入の背景を考える」
98/6/15(第70号)「橋本総理と円安を考える」
98/6/8(第69号)「日本の金融を考える」
98/6/1(第68号)「経済への関心を考える」
98/5/25(第67号)「世論と経済政策を考えるーーその2」
98/5/18(第66号)「世論と経済政策を考えるーーその1」
98/5/11(第65号)「アンケートと経済政策を考える」
98/5/4(第64号)「今回の景気対策を考える」
98/4/27(第63号)「消費の限界を考えるーーその2」
98/4/20(第62号)「消費の限界を考えるーーその1」
98/4/13(第61号)「恒久減税を考える」
98/4/6(第60号)「今回の自民党の景気対策を考える」
98/3/30(第59号)「米国の対日経済要求を考える」
98/3/23(第58号)「新日銀総裁の就任を考える」
98/3/16(第57号)「今回の不況の深刻さを考える」
98/3/9(第56号)「日米の景気対策を考える」
98/3/2(第55号)「日経新聞と経済を考えるーーその2」
98/2/23(第54号)「日経新聞と経済を考えるーーその1」
98/2/16(第53号)「貸し渋りと景気を考える」
98/2/9(第52号)「政治と経済を考える」
98/2/2(第51号)「官僚と経済を考える」
98/1/26(第50号)「「小さな政府」を考えるーーその3」
98/1/19(第49号)「「小さな政府」を考えるーーその2」
98/1/12(第48号)「「小さな政府」を考えるーーその1」
97/12/22(第47号)「需要不足の日本経済を考える」
97/12/15(第46号)「景気の現状と対策を考えるーーその8」
97/12/8(第45号)「景気の現状と対策を考えるーーその7」
97/12/1(第44号)「京都会議と経済を考える」
97/11/24(第43号)「景気の現状と対策を考えるーーその6」
97/11/17(第42号)「景気の現状と対策を考えるーーその5」
97/11/10(第41号)「景気の現状と対策を考えるーーその4」
97/11/3(第40号)「景気の現状と対策を考えるーーその3」
97/10/27(第39号)「景気の現状と対策を考えるーーその2」
97/10/20(第38号)「景気の現状と対策を考えるーーその1」
97/10/13(第37号)「市場の心理を考える」
97/10/6(第36号)「公共事業とマスコミを考える」
97/9/29(第35号)「リクルート事件と経済を考える」
97/9/22(第34号)「ロッキード事件と経済を考える」
97/9/15(第33号)「住宅と貯蓄を考える(その2)」
97/9/8(第32号)「住宅と貯蓄を考える(その1)」
97/9/1(第31号)「労働組合と経済を考える」
97/8/25(第30号)「競争時代の賃金を考える」
97/8/18(第29号)「米国経済の生産性の向上を考える」
97/8/11(第28号)「米国の景気を考える(その2)」
97/8/4(第27号)「米国の景気を考える(その1)」
97/7/28(第26号)「内需拡大と整備新幹線を考える(その2)」
97/7/21(第25号)「内需拡大と整備新幹線を考える(その1)」
97/7/14(第24号)「香港返還と中国経済を考える(その2)」
97/7/7(第23号)「香港返還と中国経済を考える(その1)」
97/6/30(第22号)「日本の米国債保有を考える」
97/6/23(第21号)「投機と市場を考える」
97/6/16(第20号)「規制緩和と日米関係を考える」
97/6/9(第19号)「ビックバンと為替を考える」
97/6/2(第18号)「内需拡大と公共工事を考える(その2)」
97/5/26(第17号)「内需拡大と公共工事を考える(その1)」
97/5/19(第16号)「金利と為替を考える」
97/5/12(第15号)「規制緩和と景気を考える」
97/5/5(第14号)「為替の変動を考える」
97/4/28(第13号)「日本の物価と金利を考える(その2)」
97/4/21(第12号)「日本の物価と金利を考える(その1)」
97/4/14(第11号)「日本の土地価格を考える」
97/4/7(第10号)「当マガジン経済予測のレビュー」
97/3/31(第9号)「日本の株式を考える」
97/3/24(第8号)「たまごっちと携帯電話を考える」
97/3/17(第7号)「政府の景気対策を考える」
97/3/10(第6号)「オリンピックと景気を考える」
97/3/3(第5号)「為替レートの動向を考える(その2)」
97/2/24(第4号)「為替レートの動向を考える(その1)」
97/2/17(第3号)「日本の金利水準と為替レートを考える」
97/2/10(第2号)「国と地方の長期債務残高を考える」
97/2/1(第1号)「株価下落の原因を考える」「今後の景気動向を考える」

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