経済コラムマガジン 平成9年2月10日より
経済コラムマガジン




17/7/24(948号)
加計問題と日本のマスコミ

    反アベノミクス議員の決起集会

    参議院参考人招致での加戸前愛媛県知事の証言を朝日、毎日は取上げなかった。自分達にとって都合が悪い話は、絶対に報道しないという姿勢である(民放テレビも肝腎なところは放送しない)。まさに日本のマスコミは中国の報道機関と一緒である。このままでは朝日は従軍慰安婦問題の二の舞いを演じると筆者は見ている。朝日が従軍慰安婦を取上げた後、これはおかしいという話が続々と出て来たが、朝日は頑としてこれらを受付けなかった。

    朝日が報道を誤報だったと認めたのは30年以上も経ってからであった。筆者は、従軍慰安婦問題の時の吉田清治に当るのが前川前文科省事務次官と見なしている。また加計問題を取上げる方針を決めたのは、朝日のかなり上と筆者は見ている。狙いは安倍一強体制の打倒である。このように朝日新聞のやっていることは、通常の報道ではなく政治闘争である。


    しかし実際に一般国民に影響が大きいのは、朝日ではなく民放テレビの方である。朝日一紙が何を報道しても影響は小さい。しかしこの朝日の報道を元にした話を検証せず全ての民放テレビが一斉に繰返し流すことで、人々に大きな影響を及す。「赤旗」の記事はテレビは取上げないが、朝日や毎日の記事は連日テレビが取上げる。安倍総理と加計理事長が一緒にゴルフをやっている写真は、それこそ何百回となくテレビで流された。「安倍総理と加計理事長が友人だから簡単に獣医学部新設が実現した」と視聴者は印象操作されるのである。

    「友人だからという話」を安倍総理が否定し、このことを説明してもなかなか納得されない。またこれまでの話に反する事実が次々と出て来ても(例えば加戸前愛媛県知事証言や京産大の獣医学部新設断念の話など)、報道するのは産経と読売だけであり、朝日、民放テレビは決して伝えない。この結果、世論調査では8割近くの人々が「総理の説明が不十分」「総理の言葉が信じられない」と答えることになり、内閣支持率は30%まで下落した。


    民放テレビ局の独自の取材力は小さい。したがって朝日や文春のスクープを元に番組を作成することが普通になっている。実際、これによって視聴率が稼げるのである。一方、テレビの説明能力は卓越している。テレビの性格上、短い時間で視聴者にどれだけアッピールできるかが勝負である。各種のフリップを使い、また映像を交え、視聴者に極めて分りやすく説明する。このような芸当は新聞や雑誌にはできない。

    ところでテレビの報道番組やワイドショーは、他の番組同様、シナリオ(台本)を元に作成される(実際に台本というものが無くても、暗黙の了解というものが台本の代わりになる)。コメンテーターもシナリオ通りの発言ができる者だけが選ばれる。シナリオから外れた不規則な発言をする者は、テレビに呼ばれなくなる。またシナリオで対象者の設定が決めらる。加計問題では民放テレビ各局は前川氏が「白」、安倍政権は「限りなく黒」という朝日が創った設定をそのまま踏襲する。

    民放テレビの中で最も安倍政権に批判的なのがTBSである。ところがこのTBSの「サンデーモーニング」でハプニングが起った。コメンテーターの大宅映子氏が突然「加戸前愛媛県知事の参議院での証言を聞いているとこれまでの話は違うのでは」(筆者も正確には憶えていないが)とボソボソと口走った。明らかにTBSのシナリオから外れる発言であり筆者は他の出演者の反応に注目した。しかし司会の関口宏氏はこれを簡単に黙殺した。


    朝日、文春、民放テレビの目的は、安倍一強体制の打破である。しかし受け皿となる民進党が弱体である。そこでこれらの報道機関が仕掛けていることは、まず自民党内の勢力図の転換である。最近、安倍総理を攻撃する政治家として急にクローズアップされているのが石破茂氏と村上誠一郎氏である。

    両氏は、安倍内閣が窮地に陥るにつれ、メディアに頻繁に登場するようになった。偶然なのか加計問題が朝日にスクープされる前日の5月16日に自民党の財政規律派の有志60名(本人40名、代理20名)による「日本財政の現状と展望」という会合が開かれた。要するに反アベノミクス議員の決起集会である。会長は野田毅議員で、石破、村上両氏も参加している。特に村上誠一郎氏はこの集りの呼び掛け人であり事務局長である。筆者は、加計問題など安倍総理を攻撃する動きの裏に必ず何かがあると思っている。だからこの加計問題を毎週取上げているのである。


    石破、村上両氏の素性

    加計問題で石破、村上両氏は安倍総理を攻撃している。ところが両氏とも加計問題と微妙に関係している。しかし奇妙にも日本のマスコミは、この点にほとんど触れない。まず石破氏は、昨年8月まで国家戦略特区を担当する地方創生担当相であった。獣医学部新設に石破4条件という陰険で極めて高いハードルを設定した張本人である。

    加計学園の獣医学部新設を推進している民進党の高井崇志衆院議員は、石破氏が地方創生担当相を交代する3ヶ月前の16年4月26日の衆議院地方創生特別委員会で、石破大臣に獣医学部の新設を強く迫った。しかし石破大臣はあくまでも4条件を満たす必要があると、事実上の門前払いの回答をしている。しかし獣医師不足で切実に悩んでいる地方が求めているのは、「高度な技術」「国際標準」「新たなニーズに応える」といった4条件を満たす獣医師ではなく「普通の獣医師」である。

    石破氏は農水族の代表みたいな政治家である。農水族は農業関係者の味方であり応援団というイメージがある。ところがこの石破氏が、獣医師会と結託して獣医学部新設を邪魔して来たのである。このように獣医師不足で悩む地方の畜産農家を敵に回すことをやっていたことが、今回の加計問題の騒ぎでバレたのである。このことを気にしているのか石破氏の安倍批判はまるで迫力がない。こんな石破氏を下心のある日本のマスコミ界が持上げているのである。


    もう1人今回の加計問題で急にクローズアップされたのが村上誠一郎衆議院議員である。左翼雑誌に転向した月刊文芸春秋8月号の一番目立つ最初の特集の頭に「安倍(首相)が自民党を劣化させた」という文章を寄せている。このように村上氏は、安倍政権打倒を目指す日本のマスコミ界に持て囃されている。しかしこの村上氏が今治出身で今治を地盤として選出されている衆議院議員ということをマスコミは伝えない。

    17/7/3(第945号)「官邸への報復」で述べた通り、今治で加計学園の獣医学部誘致で奔走していたのは地元選出の民主党の白石洋一衆議院議員であった。むしろこれを快く思っていなかったのが、同じ小選挙区のライバルである自民党・村上誠一郎議員である。村上氏は文芸春秋の文章の中で「借金がある今治市が獣医学部誘致なんてとんでもない」と発言している。このように加計の獣医学部新設は自民党ではなく、元々は民主党・民進党の案件であった。この民主党・民進党がらみの話も朝日、文春、民放テレビは決して報道しない。


    まず石破、村上両氏の政治家としての遍歴は話が長くなるので省略する。筆者は、両氏が前段で話をした「日本財政の現状と展望」という会合の中心人物であることに注目している。彼等はここでまた「日本の財政が危機に陥っている」と安倍政権を攻撃している。要するに安倍政権が2度に渡り消費増税を先送りしたことへの抗議である。ちなみに村上誠一郎議員は大蔵副大臣や大蔵委員長を経験したバリバリの大蔵族(財務族)と見られる。

    14/11/24(第822号)「解散・総選挙の裏側」で述べたように、安倍政権の消費税再増税延期に対して自民党内で抵抗が大きかった。野田党税調会長を中心とした増税推進派の議員連盟の参加者が100名を越え、一方、45名ほどいた議員連盟「増税を慎重に考える会」は財務省官僚の切崩し工作で三分の一に減った。つまり増税推進派の議員連盟のメンバーが今回また集結したのである。ちなみに一方の議員連盟「増税を慎重に考える会」を率いたのが山本幸三地方創生担当相である。このような経緯があってか、山本大臣は色々なリークが次々と流され攻撃に会っている。


    そもそも野田毅議員や村上誠一郎議員が言っているような日本の財政破綻なんて絶対に考えられない。日本政府は膨大な金融資産を持ち、また日銀は400兆円以上の国債を保有している。日銀保有の国債を償却する(統合政府の連結会計)ことを考えると、日本の財政は実質的にほぼ無借金になる。このようなことが自民党内でも段々と理解されてきて、野田・村上両氏が呼び掛けた会合への参加人数は前回比で半減している。

    ちなみに過去に6回も財政破綻を起こしたアルゼンチンが、最近、償還期限が100年というとんでもない国債を30億ドル発行した。ところがこの国債の入札になんと3倍の応札があったのである。これが今日の世界の現実なのである。アルゼンチンのこの話を考えると、日本は財政破綻から一番遠い国の一つであることが分る。筆者は、むしろ日本の財政が健全過ぎる(消費増税の8割を財政再建に回している)ことが、デフレからの脱却を困難にしている大きな要因と考える。



来週は24,25日の参考人招致を取上げる。民放テレビがどれだけ本当のことを伝えるか注目している。



17/7/17(第947号)「消化不良の参考人招致の質議」
17/7/10(第946号)「前川前事務次官の参考人招致」
17/7/3(第945号)「官邸への報復」
17/6/26(第944号)「加計学園の獣医学部新設騒動」
17/6/19(第943号)「小池都知事の不安煽り政治」
17/6/12(第942号)「米国のパリ協定離脱」
17/6/5(第941号)「テロ等準備罪(共謀罪)の話」
17/5/29(第940号)「安倍総理の憲法改正の提案」
17/5/22(第939号)「半島有事への日本の備え」
17/5/15(第938号)「朝鮮半島の非核化」
17/5/1(第937号)「予備自衛官の大幅増員を」
17/4/24(第936号)「理解されないシムズ理論の本質」
17/4/17(第935号)「シムズ理論と「バカの壁」」
17/4/10(第934号)「経済再生政策提言フォーラムとシムズ理論」
17/4/3(第933号)「シムズ理論の裏」
17/3/27(第932号)「シムズ理論とシムズ教授」
17/3/20(第931号)「シムズ理論とアベノミクス」
17/3/13(第930号)「アメリカの分断を考える」
17/3/6(第929号)「移民と経済成長」
17/2/27(第928号)「トランプ大統領のパリ協定離脱宣言」
17/2/20(第927号)「トランプ現象の研究」
17/2/13(第926号)「為替管理ルールの話」
17/2/6(第925号)「日米主脳会議への対策はアラスカ原油輸入」
17/1/30(第924号)「そんなに変ではないトランプ大統領」
17/1/16(第923号)「今年の展望と昨年暮れの出来事」
16/12/26(第922号)「ヘリコプターマネーに関するQ&A集(まとめ)」
16/12/19(第921号)「ヘリコプターマネーに関するQ&A集(モラルハザード他」
16/12/12(第920号)「ヘリコプターマネーに関するQ&A集(日銀の独立性他」
16/12/5(第919号)「ヘリコプターマネーに関するQ&A集(物価上昇編(2))」
16/11/28(第918号)「ヘリコプターマネーに関するQ&A集(物価上昇編(1))」
16/11/21(第917号)「ヘリコプターマネーに関するQ&A集(基本編)」
16/11/14(第916号)「トランプ大統領誕生は良かった?」
16/11/7(第915号)「Q&A集作成のための準備」
16/10/31(第914号)「中央銀行に対する観念論者の誤解」
16/10/24(第913号)「落日の構造改革派」
16/10/17(第912号)「ヘリコプター・マネー政策への障害や雑音」
16/10/10(第911号)「事実上のヘリコプター・マネー政策」
16/10/3(第910号)「財政均衡主義の呪縛からの覚醒」
16/9/26(第909号)「日本経済こそが「ニューノーマル」」
16/9/19(第908号)「プライマリーバランスの回復は危険」
16/9/12(第907号)「労働分配率と内部留保」
16/9/5(第906号)「経済学者の討論の仕方」
16/8/29(第905号)「吉川教授と竹中教授の討論」
16/8/22(第904号)「芥川賞受賞作「コンビニ人間」」
16/8/8(第903号)「新経済対策への評価」
16/8/1(第902号)「大きな車はゆっくり回る」
16/7/25(第901号)「アベノミクス下における注入と漏出」
16/7/18(第900号)「経済循環における注入と漏出」
16/7/13(第899号)「16年参議員選の結果」
16/7/4(第898号)「奇異な話二題」
16/6/27(第897号)「ヘリコプター・マネーと国民所得」
16/6/20(第896号)「ヘリコプター・マネーと物価上昇」
16/6/13(第895号)「ヘリコプター・マネーと消費増税の比較」
16/6/6(第894号)「消費増税問題の決着」
16/5/30(第893号)「安倍政権の次のハードル」
16/5/23(第892号)「アベノミクス停滞の理由」
16/5/16(第891号)「ヘリコプターマネーは日本の救世主か」
16/5/2(第890号)「毎年1,000件もの新製品」
16/4/25(第889号)「日本は消費税の重税国家」
16/4/18(第888号)「財政問題に対する考えが大きく変る前夜」
16/4/11(第887号)「民進党が消費税増税を推進する背景」
16/4/4(第886号)「財政問題が解決済みということの理解」
16/3/28(第885号)「終わっている日本の経済学者」
16/3/21(第884号)「国際金融経済分析会合の影響」
16/3/14(第883号)「信用を完全に失った財務省」
16/3/7(第882号)「「政界」がおかしい」
16/2/29(第881号)「一向に醸成されない「空気」」
16/2/22(第880号)「緊縮財政からの脱却」
16/2/15(第879号)「超低金利の今こそ国債発行を」
16/2/8(第878号)「日銀の「マイナス金利」政策の実態」
16/2/1(第877号)「CTAヘッジファンドの話」
16/1/25(第876号)「今後の原油価格の動きは「売り投機筋」に聞いてくれ」
16/1/18(第875号)「日本の経済論壇は新興宗教の世界」
16/1/11(第874号)「日本のデフレギャップは資産(財産)」


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